067★緑川君の異世界バイトは?4
「なんで? 緑ちゃんが大蛇を叩き切って、危険は去ったのに?」
浅黄の疑問に、その時のコトを思い出して、苦笑いを浮かべながら答える。
「フルトランスでいた方が、匂いをより感じられるから便利だと言っていたのだよ……それに……獣人族でも…最弱に近いから……フルトランスをとくと…能力的に、人間族よりは、まぁー強いけどねって程度になってしまうらしい…………」
不思議そうに、浅黄は首を傾げる。
「…そんなに…弱いの? ……」
「……そう…らしいのだよ……特に…ハーフトランスは…絶対にとらないと言っていたのだよ…」
緑川の説明に、和也も首を傾げる。
「……人間よりは…間違いなく強いと思いますが?」
「その状態が…1番…人間族に…狙われるらしいのだよ…」
「えぇー…どーして?」
浅黄の疑問に、和也がたぶん的な推理を考えて、口にする。
「もしかしたら…エーリースって…可愛い容姿をしているんじゃないですか? ……その上で……なにが毒かわかるんだったら……貴族や王族が…こぞって…欲しがるんじゃないでしょうか? ……そういうモノなら、種族的に…人間族に…狙われやすいですよね……」
和也の推理に頷きつつも、まだ納得がいかないという口調で、浅黄は言う。
「でも…フルトランスでも…エーリースって…わかるんじゃ? …」
そんな浅黄に、緑川は肩を竦めて答える。
「確かに……わかるけど………そのままの姿なら……確実に人間族よりも強いのだよ……」
「緑川君……何か……見たんですか?」
和也の問いに、ちょっと遠い瞳で、あの時の驚きを口にする。
「道に結構な大きさの岩がゴロゴロとあったのだよ……小さい岩でも…軽く100キロ…を超えてるって…わかる大きさだったのだよ……僕じゃ無理って感じだったのだよ」
「もしかして?」
「そう……なのだよ……軽々と運んで、道の端によけたのだよ」
「……オス…だけで? …」
「メスも小さいのは……軽々と運んでいたのだよ……」
そのやりとりを聞いていた浅黄は、その実態に、呆然と呟く。
「…獣人族って……どんだけ…強いんだぁー………」
「さぁ……わからないのだよ……でも…刀さえあれば……どうというコトは無いのも…確かなのだよ……僕や和也や浅黄には……」
その緑川のセリフに、妙な対抗心を出した氷川が言う。
「ふーん……でも…俺達だって…銃があれば……どってこと無いけどな…ねっ…高雅」
その振りに、緋崎が頷く。
「うん……確かに……」
だが、和也はその対抗心を綺麗にスルーして、緑川に尋ねる。
気分が乗らないと、そういうことをする和也である。
「ところで……忠誠を誓われたんですか?……」
和也の問いに、緑川はやれやれという表情になって答える。
「うん……誓うかわりに…名前をっていう話しになってしまったのだよ……………」
ある意味、似たような体験をしたので、その話しの先が見えた和也は、うっすらと無意識に笑っていた。
そう、緑川君も、ボクと同じ体験をしたんですね…………
このRPGの設定の1つに、話しを聞かないっていうワードでもあるんでしょうか?