066★緑川君の異世界バイトは?3
ここから、カラオケボックスに戻ります。
「緑川君……干した果物や干し豆とか…ドングリや栗…山菜とか…アケビや干し芋とかですか?」
「いや……和也…それじゃなくて…忠誠を誓うとか……一族の女をあげるとかじゃねーの…なっ…」
「俺も、そっちだと思う……緑川に従って…旅に出る戦士を、1人か2人くれるとかってやつじゃねぇーの?」
「僕と同じ考えの和也は間違いで、青木と緋崎が当たりなのだよ」
そういう話しをしながら、緑川は和也の名前をさりげなく呼んでいた。
和也は、緑川に名前で呼ばれたことを気にせず、再度聞く。
「…じゃ……戦士が…何人かと、馬と食料やテントの装備をもらったんですか?」
和也が興味を持ってくれたことが嬉しくて、緑川はさらに詳しく話す。
「そうなのだよ……戦士が3名と…身の回りの世話…馬の世話とか…料理とか…買出しなどの生活一般用に2名の…計5名が…僕について来ることになったのだよ」
説明をする緑川は、和也の名前を呼んでも拒否されなかったので、けっこう嬉しかったりする。
そんな心情に気付く余裕の無い和也は、ねぎらいの言葉とともに、更に重ねて聞く。
「大変でしたね……だって…獣人と言っても…戦闘能力が……低いような種族ですよね……ところで……何が…得意なわざを持った種族だったのですか?…」
「和也ぁー……それより…フルトランスをといたら……どんな姿なのか…興味ねぇーか?」
「あっ…俺もぉ…オスだけだったのか……オスとメスがついてきたのかさぁー…聞きたい…」
「そうそう……美人がいたかさぁ……」
それぞれが好き勝手に聞いて来るので、緑川は順番ということで、和也の質問に答える。
「まず…和也の質問だけど……彼らは…森の管理者と言うだけあって……薬草とか毒草とか…この植物は…食べられるか? …が…匂いをかぐだけで…わかったのだよ…それに……薬を作ることが…彼らの仕事だったのだよ…」
緑川の答えに、和也はなるほどと言う表情をしながら、更に聞く。
「食事というか…保存食とか……携帯食は? …作っていたんですか?」
和也の素朴な質問に、緑川は無意識に大きく頷きながら答える。
「それらは……エーリースのマークをつけて…けっこうな高値で…取引していると言っていたのだよ……薬師の一族といわれていると…エゾリンは言っていた…」
薬師の一族と聞いて、浅黄はちょっとうらやましそうに言う。
「ふーん…緑ちゃんってば…便利な一族を手に入れたんだぁー……」
そのうらやましそうな響きに、リスと言っても姿がネズミに見えるような一族と付き合うはめになった緑川は、自分の方がうらやましいというニュアンスで言う。
「僕は…浅黄……お前の幻獣もイイと思うのだよ………」
そんなやりとりを無視して、青木は好奇心まんさいで緑川に聞く。
「なぁなあー……美人は…いたのかよぉぉ?」
「青木、ちょっと煩いのだよ」
気分を害したという風に答える緑川に、緋崎が首を振って言う。
「んにゃ…フルトラスをといたら…どうなるかは…普通に…気になるんじゃね? ……なっ…清雅…青木…紫島。和也だって、興味あると思うぞ」
さりげなく、和也も気になると思うけどという緋崎の言葉に、紫島がうんうんと頷きながら言う。
「うん…気にぃーなるぅー…あとぉー…ハーフトランスだったらぁ……ケモミミともふもふしっぽになるぅーかもぉー……知りたいぃー……可愛いぃー?」
紫島の言葉に反応し、氷川もちょっとエーリース一族の姿を想像しながら問い掛ける。
「けもみみ……イイねぇー……ボンキュボンにけもみみ……モコモコシッポ……くぅー…ファンタジーの醍醐味だよねぇー…ねっ…高雅……」
氷川は、親友の緋崎に話しを振る。
「うんうん………ボンキュボンだよな………」
その様子に、和也はちょっと嘆息して、話しを振る。
「盛り上がっているねぇー……ねっ…緑川君…浅黄君」
ちょっと?かなり、ハイテンションになっている4人を見て、緑川は呆れたように言う。
「ああー……まるで…酒が入って…酔っているかのようなのだよ」
その4人の波に乗れなかった浅黄は、ふかぁ~い溜め息を零しながら言う。
「うん……そこまで……盛り上がれるって……元気だねぇー……ボンキュボンも、綺麗な顔も……性格が悪かったら…見られたモンじゃないのにねぇー………」
その様子から、和也はピンッと来て聞く。
「また…エグイ性格のひとに…当たったんですか?」
和也の指摘に、ケモミミがあったら、確実に項垂れさせている風情で、残念そうに言う。
「……ふふふ…仕事だから………ショウガナイさぁー…って…諦めている」
浅黄の仕事を知っているので、緑川も同情的に頷いて言う。
緑川の姉や妹も、モデルと女優業をしているので、人前と身内での落差が激しいのを思い出していたので…………。
そして、美人なのに、自分と同じように和也が好きなサクラを思い出していた。
「…相変わらずなのだな……でも…美人は……裏表がキツイのが…普通だから………サクラみたいな……おもしろい…性格の美女は…少ないのだよ」
和也が好きという共通点で、会話が弾むサクラを思い出して浅黄も笑う。
「だよなぁー……サクラって…おもしろいからぁ…」
が、サクラの話しが出ると、色々と言われるのが嫌なので、和也は、話しの流れを還るために、緑川に話し掛ける。
「………で…フルトランスをほどいてくれたんですか?」
唐突に、話を振られても、和也の気持ちがわかる緑川は、余計なコトを突っ込んだりしないでさらりと答える。
「いや……そのままだったのだよ……」
危険が迫っていたから、素早く動けるフルトランスをしていたと思っていた浅黄は、ちょっと驚いて言う。