065★緑川君の異世界バイトは?1
浅黄のゲーム内での装備や環境を聞き終えた後、緑川が手を上げる。
「それじゃ、2番手は、僕が…………」
緑川が、少し苦笑しながら話しだす。
「僕が、目覚めたのは、岩山だったのだよ……」
まずは、ログインして目覚めた場所を言う。
「岩山? そりゃーまた妙な場所だな」
青木が率直な意見を言うと、緑川は微妙な表情で苦笑するが、コメントを控えて続きを口にする。
「周りを見渡すと…周辺は、ゴツゴツした岩だったのだよ………」
浅黄は、首を傾げつつ突っ込む。
「じぁーずぅーっと、一面岩場ってやつ?」
和也は、首を傾げて砂漠の種類を口にする。
「と、いうと、礫砂漠だったんですか?」
緋崎が疑問を素直に日にする。
「なぁー礫砂漠って?」
「礫砂漠とは、岩石でできた砂漠のことを言うんです。砂漠の大半はこれです」
和也の説明に、氷川も不思議そうな顔で質問する。
「砂漠のイメージって……鳥取砂丘の……砂の砂漠なんだけど?」
ふかぁーく溜め息を吐き出した緑川が説明をする。
「砂の砂漠とは、大半が礫砂漠の岩石などが、長い年月で風化したものなのだよ」
それにも、和也が補足するように言う。
「川が、運んだ岩や石や小石や砂が、形成した砂漠は、ほとんどありません。ちなみに、世界最古に近いと言われているのが、サハラ砂漠にある赤い砂で出来た砂漠なんですよ」
和也の説明に、浅黄が首を傾げて言う。
「黒ちゃん……ウチの姉さんが好きなマンガで…『天は赤い河のほと○』って…あってさぁー……あれと同じ理由で赤いのかな?……」
「たぶん……同じだと思いますよ……含まれる成分のセイでしょうから」
「なぁーなんで……赤いんだよぉー……説明たんねぇーって……なっ…清雅…」
「うん…どうして?…赤いのか?…コロラド川の川岸も赤かったよね……ねっ………高雅……」
緋崎と氷川の会話に、青木が呆れたように頭をガシカジとかいて言う。
「お前らって……成績そこまで…ダメじねぇーのに……なんで……そう…バカなんだよ……なんで……赤いかなんて……ちょっと考えればわかるだろ」
青木の言葉にかぶせるように、今まで黙っていた紫島が言う。
「あのねぇー…みんなぁー…水と赤い色をー…結んで言ってるよぉー…」
紫島の言葉に、緋崎と氷川は、顔にどーして? なんで? ボク……ワカンナァーイ…という表情で…首を傾げる。
「俺よりぃー…氷川ってぇー…成績イイのにぃー…以外ぃー…」
「説明……プリーズ……」
なんで? どおーして? という表情で2人は、声をはもらせて言う。
「鉄分のセイで赤くなるんです…正確には…酸化鉄のセイですね……鉄はさびると赤錆が浮くっていうのは…2人ともわかっているでしょう?」
和也のスバッと言う説明に、氷川と緋崎はこくこく頷く。
本当は、もっと丁寧に説明して欲しかったが…………。
相手が、イライラしている状態の和也だったので諦めたのだった。
そんな2人にちらっと視線を投げてから、緑川がまた話し始める。
「赤い河はなかったが、岩山から……ちょっと離れた場所には、うっそうとした森が広がって見えたのだよ………行ってみたいと思った僕は、自分の身の回りを見てみたのだよ」
「装備や服装は?」
和也の質問に、緑川は淡々と答える。
「手には日本刀モドキを握っていたのだよ……服装は、ドラク○の旅人の服に近いと思ったのだよ」
「へぇー……日本刀を持っていたんだぁー……俺は…ライフル銃とピストルとナイフだったけど……清雅は? なに持っていた? ………」
「クロスボウのセットとナイフだったけど?」
緋崎と氷川の武器を聞いて、和也はふぅーんと言う顔で言う。
「これでいくと、普段、自分が触っている武器をゲーム内でも使用してしまう傾向があるようですね」
「そうか……僕は…剣道をやっているから……たまに…居合いもするのだよ…和也とも…やったけど……僕の負けが多いのだよ……」
ちょっと残念そうに言う緑川に、浅黄がむっとした表情で言う。
「緑ちゃん……さっさと……説明して……」
先を促す言葉に、緑川は苦笑しながら話し始める。
「わかったのだよ……和也が、僕の説明に食い付いたのが気に入らなかったようだね……では……森に向かって歩いたら、僕ぐらいの洋服を着たリス達? が逃げて来たのだよ…その後ろから……巨大なヘビが…現れたのだよ……身の危険を感じたので……気合を込めて斬ったら……運よく殺せたのだよ……」
淡々と、端的な、ソレって説明?というような内容を、何の感情もなくズラズラと並べ立てるように言う。
「そぉーれぇー……説明ってぇー…言わないよぉー…つまぁーんない」
ちょっと口を尖らせて言う紫島の突っ込み?に、緑川を除く全員が頷く。
そして、ダメ押しに和也が言う。
「もう少し、状況説明が欲しいです」
和也に弱い緑川は、軽く肩を竦めてから説明を始める。
「ヘビから、逃げていたのは、リスの獣人だったのだよ…それも…フルトランスに近い状態だったのだよ……僕に……話しかけてくるまで…完全にリスに見えたのだよ…僕は……ネズミーランドは苦手なので………困ってしまったのだよ………」
その時のことを思い出し、緑川はかなり嫌そうな表情になっていた。