062★和也の日常3
2人は、その驚愕の叫びをあげたことを、意識が戻ったら、ものすごぉーく後悔するのは確実だったりする。
が、この時は、そんなことに気がまわる余裕は残念なことに無かった。
だから、無謀者の緋崎は、ついつい言ってはいけないセリフを口にする。
これを、墓穴堀りのバカ者という。
「……なんでぇー……黒沢…の…彼女? …青木や赤沢じゃないの? ………」
首を傾げ、心底疑問というていで言った緋崎に、青木は呆れを含ませた口調で言う。
「俺は、サクラの幼馴染みだし……赤沢ツインは…キャプテンと部長だったから…サクラと会話が多かっただけだぞ」
再度の青木の指摘に、緋崎と氷川は、お互いの顔を見合って、言い返す言葉も無く黙っていた
『…………』
やっと大人しくなった2人に、青木はまだ足りないととどめを刺す。
サクラの好みは、予想の付かない行動を取る男なんだよなぁ…………
アイツは、人間の成長も推理と予測と女の勘でわかっちまうから…………
和也みたいなミステリアスな男が、理想なんだよなぁ…………
コイツラみたいに、判りやすい男は問題外だよ
チラッと手を取り合う2人に、思わず無言で嘆息する。
毎回、告白してくる男と同じで、つまんないって…………
だって、和也は、ちょっとでも、気を抜いたら、姿を見失うって…………
そして、サクラの和也を思う告白が、自動的に青木の脳裏に流れる。
行動は……和也が…その気になったら…追いつけない…………
性格は………いっそ見事に…優しいんだけど……冷たくて……
でも、サクラが欲しい言葉や態度をサラッとくれるし…………
デートの時もドキドキが止まんないって…………
頷ける部分が多いので、青木も黙ってサクラの告白に、何時も頷いていた。
まっ……俺から…見ても…予想不能な和也は、おもしろいんだよなぁー
神経質な野生の獣って感じがして…………
でも、和也には、嘘は無い……
和也は……いつでも……信じられる……
その上で、ちょっと、いじめっこなところが…………
ミスッて……イジメられたらって………思うと………
スリリングなんだよなぁー…………
そのくせ……こっちが……落ち込んだりすると……
さりげなく……慰めてくれるから…………
はぁー……たまんねぇーんだよなぁ……
やさしい時と、イジメっ子の時の落差が…………
和也と一緒なら、いつでも、楽しいだろうなぁーって思っちまう…………
困ったもんだ……和也といる楽しさを考えると……
性別なんて……どうでもイイって……思えるんだよなぁ
だから、俺も、どうしようもなく……惹かれるんだよなぁ……
サクラと一緒で、一方通行だけど…………
側にいられれば……それで……イイんだけどな
色々な思いを口にすることなく、青木は、苦笑する。
「まっ…もっとも……サクラの一方通行だけどな…」
その青木のセリフが途切れるのと、2人はハモりながら無意識に言う。
『くろさわ……ころす……』
そのセリフに、和也はおもしろそうな表情で、クスッと嗤って言う。
「ほぉー…ボクに……そんなにも、遊んで……欲しい……と……」
副音声は…………。
2人とも……ボクに……もてあそんで……欲しいと…………
どうやって……いたぶって……あげようかなぁ………くすくす…
なんていう、幻聴が、緋崎と氷川には聞こえたそうな…………。
顔色を悪くした2人に、和也はそれ以上何も言わなかった。
が、おもむろに、カラオケのリモコンを掴み、素早くナンバーを打ち込んでいく。
すべてを打ち込むと、にっこり笑って言う。
「全曲、2人で、歌い終わるまで……食事は…禁止です…」
緋崎と氷川は、和也の微笑みに思いっきりヒビッてしまい、コクコクと頷くだけだった。
2人がカラオケで、キューティーハ○ー(罰の定番)を振り付きで歌い始めた頃、頼んでいたピザやバスタなどが届いた。
それを、和也達が、楽しそうに笑いながらパクついているのを、歌っている2人は、
すきっぱらをかかえながら涙目で、ガマンしていた。
だから、すべてを歌い終わった2人は、改めてピザやパスタを注文したのだった。
食べ盛りの高校生……まして……大柄なスポーツマンたちだったので、注文したものは、綺麗さっぱり食べ終わっていたからだった。
緋崎や氷川が食事をしている間、和也たちは、腹ごなし?にカラオケを楽しんでいたりする。
そして、食後のお茶やジュースなどを飲みながら、本来の本題である、ゲームについて話しだす。
最初に話しだしたのは、珍しいことに和也だった。
「ボクは、目が覚めたら砂漠で、制服のまま砂漠をひたすら歩いて、オアシスにたどり着き…そこで……イベントを…幾つかこなして…お仕舞いでした………」
氷川は、そのセリフに首を傾げる。
「制服? 装備は?」
にっこり笑って、和也はボソッと一言。
「ボクは運の無いことに《バグ》りました」
瞬間、辺りの空気が数度下がった。