060★和也の日常1
和也が部屋を出ると、そこには、緋崎と浅黄と緑川が待っていた。
どうやら、和也のバイト終了後の報酬説明?が1番長かったらしい。
和也が、ちょっと驚いた口調で言う。
「皆さん、お揃いで…………」
それにかぶせるように緋崎が、和也に質問する。
「お前を待ってたの……なぁーどうだった?」
緋崎の言葉に、浅黄は頷きながら、和也に尋ねる。
「そうそう……黒ちゃん…ゲームの中の記憶はある? 俺たちあるけど………」
眼鏡を中指で持ち上げながら、ちょっと疲れた表情で緑川が和也に言う。
「僕もあるのだよ。とにかく、けっこう……疲れるゲームだったのだよ……和也は?」
あははぁ~……なんだぁ……ボク……だけじゃなかったんだぁ~……
なんか……このゲームって……やたら…疲れるって……思ったの………
内心を珍しく隠さずに、和也は答えた。
「ボクもありますよ………そうですか、緑川君も疲れましたか……ボクも……メチャクチャ…疲れました………」
すると3人は、いっせいに頷いた。
代表して、緑川が疲労感たっぷりの表情で言う。
「流石に、赤沢ツイン紹介のアルバイトだけあって……金額はイイけど……どうしようもなく疲れるのだよ」
浅黄は、和也と一緒のアルバイトというだけで、来ていたのでちょっと驚いたという顔で言う。
「えっ……このバイトって……赤クンの紹介だったの? ……俺は……黒ちゃんや緑ちゃんもやるバイトだって、黒ちゃんとこの相沢センパイに誘われたからのったのに…………」
和也は、中学生時代に、赤沢ツインの会社で作るゲームを、何度もモニターしていたので、ちょっとイヤそうな表情になる。
はぁ~……相沢センパイからの紹介だったから…………
まさか、そっち系列だとは思いませんでしたねぇ………
ボクとしたことが、うかつでした………
中坊時代の苦い?思い出に、和也は無意識に舌打ちする。
ふぅ…思えば……赤沢クン達とのカケに負けたときとか…………
試合で、失敗したときの罰ゲームとして…………
オンラインゲーム……に、強制参加させられて…………
ゲームの中でもパーティー組んで、色々とさせられたっけ…………
バスケで、試合というゲーム? をして…………
ネットでもゲームを組んでするって…………
変化が無いような? って……思いながらしましたねぇー…………
ネットゲームで、失敗しても…………
現実のバスケで……余分に……シュート練習させられたっけ…………
特に、どぉぉぉぉして………ボクに…乙女ゲーム? って思ったっけ…………
ボクは、兄達にもらった閉じたゲームの方が、独りでできるから好きです
オンラインよりも、閉じたゲームの方がずっと気分が楽だって、赤沢クン達のセイで、そう思うようになったっけ…………
じゃなくて、こんなところで赤沢くん達の話が出るって…………
でも、バイト代は良かったからなぁー…………
はぁ~……仕方ない、今回のことは諦めましょう…………
今は、お金が必要です
ちょっと苦笑しながら、和也が改めて緑川に尋ねる。
「……そうすると…赤沢君達関連の……ゲームですか? ……」
それに、緑川が、答える前に、突然現れた青木が、和也の肩に手を掛けて言う。
「いよぉー……和也ぁー…なぁーに…暗い顔してんだぁー」
何かと自分にちょっかいを掛けてくる青木の登場に、和也は思いっきり苦笑して答える。
「青木君も……バイトに来ていたんですか?……」
「おう……紫島も氷川もいるぜ……」
ふふふふ………もしかして、全員集合ですか? ………
和也の問い掛けに、青木はいつものように上機嫌で答える。
その視線の先には、確かに大柄な紫島と氷川がいた。
氷川とチームメイトだった緋崎は、ちよっと口を尖らせて氷川に話しかける。
「たけるぅー……一緒のバイトだったら…俺に声をかけろよぉ………」
緋崎の隣りに来た氷川は、和也をチラッと見てから、こそこそ言う。
「いや…黒沢くんと一緒だったから……ちょっと…声を掛けるのを……わかるだろ……君の失敗に……巻き込まれて……」
その氷川の微妙な言葉に含まれるモノで、緋崎は当時を思い出だす。
「ごめん…巻き込んで……」
だから、緋崎は、素直にシュンと項垂れて謝った。
和也達は、中学生時代に、U15才のメンバーとして召集され合宿を行った経験があったのだ。
もちろん、国際試合に参加した経験も…………。
その時、緋崎と氷川のコンビは、クセのある赤沢ツインの逆鱗を触り、むごいめにあわされたことがあった。
その他に、赤沢ツインとタメを張る?和也の地雷を思い切り踏んで…………。
とんでもなくエグイめに、何度かあわされた経験があったりする。
イジメ? ……それって……イヤガラセ……だよね?……という、比較的わかりやすい赤沢ツインと違って…………。
和也のイケズは、一味も二味も、違っていたのだった。
それ以来、緋崎と氷川は、和也にちょっと腰が引けている部分があったりする。
もちろん、赤沢ツインもきっぱり苦手になっていた。
だから、イラッとしている雰囲気の和也に見詰められ話しかけられると………。
「緋崎クン……なんの話しですか? ……今は…ゲームの話しをしています……横道に逸らさないでくださいね…」
「はい…申し訳ございません……俺が悪うございました……」
緋崎の謝罪に、軽く和也は頷く。
そんな和也の肩に平気で腕をかけ、笑って青木は質問する。
「なぁー……そんなことよりぃ……このゲームで…どんな…モノを手に入れた?」
ここにいた全員が気になっていたことだった。
そこで、和也が珍しく提案する。
「ここで、話すよりどこかで話しませんか?」
浅黄が、嬉しそうに手を上げて言う。
「さんせーい」