059★アルバイトの報酬は?
藤田主任達と、どこの検査室?という機材の中で、和也はしみじみ帰還したという事実をかみしめる。
「黒沢君、今回だけで、色々なイベントや登場人物設定、新モンスター、オリジナルの魔法、オリジナルのアイテムと頑張って造ってくれたわね」
ご機嫌な藤田主任の言葉に、和也はぬるぅ~く笑って、曖昧に頷く。
「はぁ~まぁ…………」
和也の様子を気にすることもなく、藤田主任は、次々と創作した内容を嬉しそうに言う。
「精霊達の設定も良かったわぁー……あれは『名隠し』の設定を付けたのね……」
「ええ……ファンタジーですから…………」
「ところで、冥府の女神や大地の女神、それに水の女神、冥王神の名前はどうなっているの?」
既に設定があると思っていた和也は、藤田主任の問いに首を傾げる。
「えっ……? ……ゲームの設定に、始めから入っているんじゃ……」
和也の言葉に、藤田主任は首を振る。
「いいえ、神々の名前の設定は、特に無いのよねぇー…………」
「でも……世界観のためには……必要なんじゃ………」
「今回のゲームは、一神教にするか、多神教にするかって……まだ…決まってないのよねぇー…」
「それって……いい加減なような? ……」
「う~ん……おおまかな設定でいうと……一神教が数種類と、多神教も数種類って感じになってるのよねぇ……あと、大陸別で…神々の領域があるって………」
「…………」
「まっ……例えて言うなら、キリスト教とか……イスラム教とか……ヒンズー教とか……仏教とか……あとは…マイナーな道教とかだったかしら? …を、モデルにしようかなぁー……って、程度のかなぁーり、ゆぅーるぅーい設定なのよ」
「もしかして……一神教徒VS多神教徒…とか…一神教徒VS一神教徒…とか……多神教徒VS多神教徒…みたいに争う世界なんですか?」
「だって……それぞれの正義があるって……イイじゃない? だから、設定は大まかに、枠ていどなのよ」
いや、それって………って、いうか、そこまでいい加減だったんてすか?
言わないけど…すっごい、ご都合主義もありってことですよね
一応の確認を…………
「……ということは……プレイヤーによって、信仰する神が違うとか?」
「そうなのよぉー……だから……女神達の名前を考えてね……登録するから……なんなら、神々にも真名とか入れちゃう?」
藤田主任の無責任な発言に、困った和也は黙り込む。
「…………」
「ああそれと、今回の特殊アイテム良かったわぁ……出来れば……〔黒の剣〕なんかにも、特別な呼び名が欲しいわね」
「えぇぇぇー」
「だって……〔黒の剣〕って……昔…流行ったゲームにあったから………」
「……はぁ~………」
「まっ……次の…バイトの時に…設定してくれれば充分よ」
反論する気力が無かったので、和也は藤田主任が望むように、ただ頷いて答える。
「考えておきます」
頷いた和也に、藤田主任は本題に入る。
「それで…今回の報酬なんだけどぉー……色々と設定してくれたから…時給+○○万円ってことになります……」
「…えっ……そんなに……」
「もちろんよ…黒沢君の設定は…おもしろかったから……でも……金額が…けっこういくから………所得税が発生するのよ……それを引いた額を、振り込みます」
「あっ…はい………」
「ただし…ゲームがどんなに売れても…印税みたいなモノは発生しません…イイですね…」
「はい」
「振込みされるのは……月末に、一括で振込みされます……」
「はい」
「これから…黒沢君が…バイトに来る予定は…………」
藤田主任は、アルバイトの予定表を確認する。
「……提出されている……予定日は……今月は…あと1回だけね…」
「その予定表を見せて頂けますか?」
「ええ……いいわよ……」
「来週の……ですか……」
「黒沢君は、部活とかテストとかもあるでしょうけど…………この予定通りで大丈夫かしら?」
「大丈夫です……アルバイトの日付を決めたのは……バスケ部の監督なんで……テストとかも…大丈夫なときしか…バイトさせてくれませんから…………」
「そう……だったら…次回のバイト代も合算して支払いますね…」
「はい…わかりました」
「じゃ…今日のアルバイトは、これで終了です…………お疲れ様でした……次回の黒沢君の設定を楽しみにしています……」
「はい…失礼します」
和也は、やっとウチに帰れると、ほっとしてドアを開けた。