055★後始末かな?
なんか含みのある笑顔だなぁー………でも……
今は、命の焔石を造るほうを優先しよう
和也は、軽く頭を下げて笑った。
ソレを見たヴァルキューレは、控えていたヴァルキューレに箱を手渡すと、真っ白なユニコーンペガサスに騎乗した。
そして、後ろ(和也)を振り返りもせずに、高らかに蹄の音を響かせて、ヴァルキューレ達は天空へと駆け上がって行った。
が、彼女達は、天空の門の前に整然と整列しただけだった。
どうやら、和也が、命の焔石を造るのを見物する予定らしい。
それがわかった和也は、苦笑する。
敬意を込めて、天を仰ぎ一礼して、和也は左手を差し出して言う。
「 我が左手に宿りしは すべての魂を抱きとめる
心優しき冥府の女神のかいなの力
その力によりて 【すなわに】の命の焔を
我が手に 集めん 」
その言葉と同時に【すなわに】の命の焔は、斬られた首より揺らめき現れた。
和也の左手の中に、幾つもの命の焔が吸い込まれるように消えていた。
そして、和也の手ひらの上で燃え盛る。
命の焔の色は、暗い赤、橙色、黄色、紅色、黄金、白色などと色々な色合いに輝き揺らめいていた。
流石に、これだけ巨大だと命の焔も大きくて色鮮やかですねぇー
これだと、さっきのさんど・わーむより大きな命の焔石になりますね
冥府の女神様やその眷属、それとは別に、ヴァルキューレ様達、今回も大地の女神様と…………
「 命の焔よ……結晶化せよ…… 」
和也の左手の中から、結晶化した命の焔石は、ぽろぽろと溢れていく。
が、風の精霊達が、その場に留まるように空気の珠でその手をおおったので落ちずにすんだのだった。
風の精霊達かな?
助かりますねぇ……命の焔石を勝手に持っていかれる困りますから…………
ここで、冥府の女神様に、1番大きな命の焔石を奉げたら……
1度…戻って……ガラム達も…天空に還してあげましょう……
そうしたら、やっと、眠れますね…………
なんか、異様に長い1日でしたね…………
いや、まだ完全には終わってないですけどねぇ………
とにかくお礼はしましょう…………はぁー…………帰りたい
帰って……自分のベットで…ゆっくりと眠りたい…
かなり疲れていますねぇー…………オーバーワークは身体に負担です
さっさと寝ましょう…………起きたら、きっと3時間経っているはず…………
たぶん……きっと……ファーイトォー…………
かなりの疲労感を味わいながらも、無表情で和也は、風の精霊に声を掛ける。
「ハナ…オト…カオ……すみませんが、命の焔石を空中に見やすいように、広げてください」
『はぁ~い……ますたー……こんな感じでイイですかぁ~?』
フウカは、応えとともに、命の焔石を和也の目の前に、等間隔に広げていく。
和也は、改めて命の焔石を確認するように見る。
う~ん…この暗めの紅色? が…1番大きいですね……
これを、冥府の女神様に…………
同じような色彩のモノを眷属の方々に…………
こっちの明るい紅色を、ヴァルキューレ様達に…………
黄金色の命の焔石を、大地の女神様に…………
この小さい焔石の集団は【すなわに】の毒を、たぶん効かないようにしてくれた、八百万の神々に奉げましょう
この辺りは、銀嶺と精霊達用にとっておきましょう
和也は、空中に浮いているなかで、1番大きな命の焔石を左手でとる。
天に、一礼して左手のひらに命の焔石をのせて言う。
「 すべての魂の還る場所 冥府の支配者たる
黒き輝きをまといし 麗しき冥府の女神様に
貴女の助力の証の〔黒の剣〕によりて
倒せし【すなわに】の1番大きな命の焔石を
約定に従いて ここに 奉げん 」
お礼の言葉とともに和也は、命の焔石を空中に投げた。
次に、冥府の女神に奉げた色合いに近い命の焔石と明るい紅色の命の焔石を、空中から左手にとる。
そして、お礼の言葉とともに空中に投げた。
「 黒き槍を振るう 冥府の女神の御子
猛く美しい戦乙女・ヴァリキューレ様方よ
助力に感謝し ここに命の焔石を奉げん
また…助力してくださった
冥府の女神様の眷属に…奉げん 」
和也は、さっさと終わらせたいという欲望に従い、次々にお礼の言葉とともに命の焔石を空中に投げたのだった。
「 あまたの命を育む 母なる大地の女神様
大地を水晶でおおい【すなわに】を封じる
助力をいただき ありがとうござます
ここに 感謝の証に 命の焔石を奉げん 」
「 この世界を維持する為に 心を砕き
力を注ぎし 八百万の神々よ
【すなわに】の毒を 無力化してくださったことに
感謝し ここに命の焔石を奉げん 」
神々に対するお礼を、一息にすませた和也は、かなぁーり疲れていた。
そんな和也に、冥府の女神は応える。
『 神獣である翼竜を 身の内に宿し
我の与えし〔黒の剣〕を 使いこなし
約定を護り 命の焔石を 我に捧げたそなたに
我が加護の証とし すべての人間の魂を
天の扉を通り 冥府へといざなう
〔黒の鈴〕を そなたに与えん 』
『 我が身である大地に仇なす
さんど・わーむと【すなわに】を
〔黒の剣〕を使いて 屠り
我が愛しき眷属の主たるそなたに
我が加護の証として
照らした部分を 水晶化できる
〔水晶の鏡〕を そなたに与えん 』
『 人に忘れられし 我らに命の焔石を
何度も奉げし そなたに
改めて 加護を
すべての毒と穢れを
浄化するチカラを 与えん
ただし そのチカラの及ぶ範囲は
そなたの霊力によりて変わるモノなり
媒介として 水の女神の眷属の創る水を
使うがイイ 』
次々と神々は、加護の言葉と神器を和也に与えるのだった。
和也は気が付いていないが、好意には好意を、無視(忘れ去られる)には無視(忘れ去り、かかわらない)をという、鏡のような存在でもあった。
神々のチカラの源とは、自分を奉る(たてまつる)信仰心や敬意なのだ。