052★RPGの定番? 新たなる戦闘3
和也の疑問をよそに、精霊達はどんどん楽しそうに話し続ける。
『妖魔族や魔族達なんかにも…滋養強壮って使えるの』
えっ……えぇぇぇ………妖魔ぁ? 魔族ぅ?
そんなモンまで…いるんですかぁ…………
って、いってもファンタジーだから、アリですか…………
いや、そんなモノに、滋養強壮に使える【すなわに】って…………
困惑する和也をよそに、更に話しは転がる。
『味も、すっごぉぉぉく…美味しいんだって…………』
えっ……あの顔がブサイクな【すなわに】って、美味しいんですか?
でも…それって、人間の味覚での話しですか?
それとも……妖魔族や魔族の味覚での話しですか?
一応、見た目はワニですから、やっぱり、鶏肉みたいな味なんでしょうかねぇ~
困惑する和也は、ガチガチと鋭い牙?を口惜しげに噛み鳴らす【すなわに】をチラリッと、その姿を確認するように見る。
そんな和也をよそに、精霊達は自分達の持つ【すなわに】の情報を言い合う。
『ついでに、100年ぐらいは、味に変化がないんだってぇー…………』
『ウワサじゃ……もっと、もつらしいんだよねぇ…………』
ふむ……人間でも美味しく食べられるなら、長期保存食に向いてますね
もしも、本当に人間でも美味しく食べられるモノなら、旅の携帯食で売り出すというのも手ですね…………
さんど・わーむの油と【すなわに】の保存肉で一儲け…………
いやいや…………人間に食べれるならの話しですけどねぇ…………
ちょっと現実逃避ぎみの和也の耳に、更に【すなわに】の情報が流れる。
『人間だったら、万病に効くって言われてるんだよぉ』
『『『へぇ~…………』』』
【すなわに】の肉って、食料じゃなくて、薬ですか?
ふむ、そうすると、このRPGの設定の中では、万能薬っていうところですか
確かに、それなら入手難易度が高くて当たり前ですね
『いやいや…毒も、妖魔族や魔族は、薬にしているって、聞いたことがあるよ』
『『『【すなわに】の毒って、薬になるんだぁ………』』』
どんな薬になるのでしょうか?
いや、あの毒で有名なトリカブトだって、適切な処置さえすれば、立派な心臓の薬になるんですから、ソレもありですね
かなり凝った設定ですねぇ…………
『毛皮は、千年どころじゃなく変化しないって』
『いつまでも、キラキラしていて色あせなくて、触り心地も獲ったときから、変化しないって…………』
確かに、あの毛皮は燃やしてしまうのは惜しいモノです
触り心地が変わらないなんて最高ですね
『極まれにだけど……妖魔族や魔族が…愛の証に…【すなわに】毛皮を相手に送るっていうの聞いたことあるよぉ…………』
「ちょっと……聞きたいんだけど?」
『なんですか?…………ますたー』
「妖魔族や魔族は…どうやって……倒すんですか?…」
『ますたー……あたし達は…精霊だから…』
「……ぅん? ……」
『血と性と悲鳴なんかを好む……妖魔族や魔族……と、付き合いは無いんです』
『だから……どうやって…倒しているかなんて…わかんない』
だぁぁぁぁ…………そして、振り出しに戻るですか?
戦い方とかの参考になるかなぁ……って、思ったんですけどねぇ……はぁ~
やっぱり、ここは神頼みしかありませんか…………ガックリ…………
ふふふふ…………万能薬になる肉っていうとぉ…………
ブレス・オブ・ファイ○の狩りで獲る肉を思い出します
色々な食材の組み合わせで…………というと、ティル○ですかねぇ~
流行ったRPGの内容を、組み込んでいるんでしょうか?
どうせなら、もっと、単純で、簡単で、お手頃にして欲しいものです
はぁ~……冥府の女神様に、また、お願いしますかぁ~
でも、なんて名前をお持ちなんでしょうか?
後で、藤田主任に聞いてみましょう…………
色々と考えてもしょうがないと諦めた和也は、深い溜め息をひとつ吐き出して空を仰ぐ。
満天の星々を仰ぎ見て一礼してから和也は、冥府の女神に呼び掛ける。
「 天よりなお高みにおわす、麗しき冥府の女神よ
この地とこの地に住むものすべてに
仇なす【すなわに】の猛き命の焔を
奪い取り 結晶化し 命の焔石となすために
その強大なお力の1部を 我に助力とし
ひとときお貸し下さい 【すなわに】の命の焔を
完全に 結晶化し 命の焔石となす為に
なお 結晶化せし 【すなわに】の命の焔石の
1番大きなものは 約定に従いて 奉げん 」
あれ? えっとぉぉぉ………いままでのと……なんか違う言葉が…………
どうして? ……もしかして……より……強力な助力が必要? ……とか
……それって……人間の手に……かなぁーり……余るんじゃ?
自分の口から意識しない言葉が、勝手にあふれ出たことに和也は首を傾げる。
そんな和也に、冥府の女神よりの応えがあった。
『 その身に 翼竜を宿す少年よ
貴方に 加護と我が力の1部を
我が娘の振るいし 黒き剣と共に
貴方に 与えましょう 』
冥府の女神の言葉と共に、満天の星々を背景に、光輝く黒き門が強大な扉と共に表れる。
ギギーッという音と共に、その扉は開く。
その向こうには…………。
何かが……来る気配が……なんでしょう?
瞳を凝らして、天空の門を見ていた和也の耳に、あのいやーんな音が…………。
バリバリッッ ガリガリッッ ガッシャシャーン
ギィィン ガシャーンッ バァリッボォリッ ガチッガッチッ
しぎぎゃぁぁぁ………… ぎがぁー………がぁぁぁぁぁっっ…
異音に振り向いた和也の目の前には【すなわに】が、何体も水晶化した大地を食い破り現れる姿が映った。
ふふふ……かんべんして欲しいですぅ……
さんど・わーむの群れを倒したら…………
今度は【すなわに】の群れですか? ………はぁ~…
和也は目の前が暗くなるのを感じた。