051★RPGの定番? 新たなる戦闘2
ガギィィン ガチッ ガチッ ガギーン
しぎぎゃぁぁぁ…………
ズドドォォン ズズゥーン
巨体のソレは、大音響と共に、地面に激突した。
が、直ぐにムクリッと立ち上がる。
その姿は、キラキラと輝く黄金の毛皮を纏った、巨大なワニにしか見えなかった。
見るからに柔らかそうな毛皮なので、カオの部分を見なければ、モフモフ好きにはたまらない姿でもあった。
アウゥゥゥゥ…………キモッ……グロッ……
変にデフォルメされた……あの顔、カンベンして欲しいですね
まんまのワニの顔なら、まだカッコイイで通るのに…………
このRPGを作った人の中に……ぜぇーったいに……
日本人以外の人達がいますね
ボクの感性が、拒否しています
なんといっても、半身にしても、触手でくっついて再生するしねぇ~
さんど・わーむと違って、油を大量に含んでいないようですし…………
エンに言って燃やしてもらうのもイイかな?
でも、キラキラと輝く黄金の毛並みは、キレイですし…………
見るからに柔らかそうで、さわり心地が良さそうです
ラグとかの敷物にしてもイイかも…………
ううう……燃やすのは……止めましょう…………
なんか……すごぉーく…………もったいない気がします
しょうがありませんね…………縦と横に斬ってみましょうか?
ふむ、十文字斬りって感じですね…………
再生するとしても、これなら時間がかかるはず
くっつく場所を増やせばイイんです…………
痛みは、アッチ持ちなんですから…………
再生している間に、また、冥府の女神様に助力を頼みましょう
命の焔を奪う以外、死んでくれそうにありませんからね
でも、他に倒す方法があるか、地の精霊に聞いてみましょう
黙って思考の海を漂っていた和也は、その深みから浮上してチバナに質問する。
「チカ、アレの名称と弱点を教えて下さい」
和也に聞かれて嬉しいのぉという表情で、チバナは衝撃的な内容を、にこにこ笑って言う。
『はぁ~い………名前はぁ~……【すなわに】でぇ~す……弱点はぁ…無いですぅ…炎も効かないしぃ…水に浸けてもぉ……仮死状態になるだけだしぃ………水晶の中に入れてもダメェ…ザックザクに斬っても、今みたいにぃ…すぐに、くっついちゃうのぉ…聖なる光でもぉ仮死状態になるだけぇなのぉ…………』
はぁぁ~……それって……アンデットモンスターと変わらないというより、それ以上じゃないですかぁ~…………
でも、生きていない存在なら効果がある聖なる光が効かないなんて…………
どうして……そこまで……強力なモンスターを、レベルの低い状態のボクに?
正攻法じゃ……絶対に……無理ですね
でも……ボクには……チートに近い……冥府の女神様の加護と助力があるから……
倒してみせます……だって……ボクにとって……
グロイ…キモイ…キライの三拍子そろったモンスターなんですから…………
「やっかいな存在ですね」
ぽつりとそういう和也に、チケイが訴えるように言う。
『ますたーみたいに、冥府の女神様の加護と助力を持っている存在が、命の焔を無理矢理むしって、奪い取る以外にぃ…不死の【すなわに】を、滅ぼすことなんて出来ないのぉぉ…………』
増え続ける【すなわに】の存在に困っている精霊達が口々に、井戸端会議を始める。
『それにぃ~…ますたーみたいにぃ~…精霊を、使役できるっ者って、付くと思うのぉ………だってぇ…冥府の女神様に、祈りを奉げている間にぃ~……逃げられちゃうしねぇ………』
そのセリフに、エンキが首を振って言う。
『あのな……お前等……肝心の部分が抜けているぞ』
『えっ……どこが? …………あたし間違ってる?』
根本的な基準が間違ってるというコトを、エンキは嘆息しながら言う。
『さんど・わーむの巨体にも怯まず【すなわに】すら、無造作に斬り捨てる度胸? というか……精神力のある人間なんて、今までに存在したか?』
そのセリフに、全員がハッとする。
『そっ…そうだよねぇー………』
『……はぁ~……ますたーみたいに、翼竜をその身の内に宿し…自身も…かなりの腕がある者って……確かに、イナイよねぇ…………』
『そっかーますたーってば…さんど・わーむも【すなわに】も……ざっくざっくって…軽々と縦斬りしているもんねぇ~…………』
『1番大事なのは、あの巨体で、特に【すなわに】だと、毒を吐いたりするしな』
『牙にも爪にも毒があるもんねぇー…………』
精霊達の会話に、和也はかなりの頭痛を覚えた。
はぁ~……だぁぁぁぁぁ……なんで……そんな……
倒すのに、色々な条件のあるレアで面倒くさいモンスターを作るんですか?
しかも、ぜんぜんイベントやクエストをクリアしていない…………
レベルも経験値も低い、その上ろくなスキルも無い状態のボクに…………
ほんとぉーに《バグ》っているって…………わかりますね
とっとと終わらせて、お風呂に入って寝ましょう
じゃない……ガラム達を……天に還してから……寝るようにしなきゃ……
あー面倒くさい……何時になったら……このゲームから…………
アルバイトって……選ぶことも……必要って思いますね
でも…身請けするのに……お金は…必要だし…………
あっ……そういえば…コレの時給聞いてないです…………
……でも……相沢センパイの紹介する仕事って
かならず、軽く1500円は超えますからぁ…………
……やめられませんね…………ファイトォ……ボク……
内心で自分を鼓舞し、和也は何時もの冷静沈着な表情で頷く。
「そうですか……では……冥府の女神様にお願いするしかないですね」
ちょっと、どことなく嫌そうにしている和也に、精霊達は【すなわに】の特殊な価値について説明してくれた。
冥府の女神に和也が祈る必要があることを、既に忘れている精霊達だった。
『あのね……すなわにって……すっごぉぉぉーく、滋養強壮になるの』
へぇ~……滋養強壮ねぇ……って、今、ちょっと前に【すなわに】を倒せる者は、イナイって言ってませんでしたか?