050★RPGの定番? 新たなる戦闘1
和也は切れかけた頭で、取り分けていた命の焔石を手に神々に呼び掛ける。
「 八百万の神々よ 遥か遠き神々よ
ここに在りし さんど・わーむの命の焔石を 奉げん 」
和也の言葉にかぶさるように、地の精霊チケイの叫び声が聞こえた。
『ますたー……さんど・わーむ…を…狙って…やっかいな……アイツが…来ちゃいましたぁ~…………』
その言葉に、和也は少し双眸を細める。
はぁ~……なんですか? それ?
この、さんど・わーむを狙ってって…………
もしかして、天敵なんてモノが、コレにいたんですか?
それに、やっかいな相手って………どんなモノ?
まぁ……みみずの敵って言ったら、もぐらですけどぉ~…………
はぁ~………ここの設定は? いったいどうなっているんでしょうねぇ?
無理矢理、たたみ込むようなプレーヤー支援システムって…………
ふぅ~…………ボクでも、かなり疲れてしまいますねぇ
和也が、かなり精神的に疲れて、大きく溜め息を吐いた、その時に…………。
遥か遠きところにおわす、八百万の神々が、和也の呼びかけに応え、その加護を贈るお言葉を返してきた。
『 既に 人間に 忘れ去られた 我らにすら
命の焔石を奉げし 少年よ
我らすべての加護を 貴方に与えん
貴方に この世にあるすべての毒を
自らの血によりて …………
また その血を…………しても ………… 』
だが、八百万の神々の言葉は、次の叫びよって、1番肝心な部分が、和也の耳には聞こえなかった。
が、そんな和也の事情なぞ知る故もない八百万の神々は、言うだけ言うと、あっさりと去って行った。
そして、その叫びとは…………。
『ますたー……アイツが……さんど・わーむを…………』
と、いうモノだった。
その切羽詰った呼びかけに、和也が、声の方を振り向いた。
和也が振り向いたとほぼ同時に、結晶化した地面が突き破られた。
バリバリッッ ガッシャーン
轟音と共に、大きな歯?牙?の生えた口が、地面からズイッと突然あらわた。
そのまま、大きな口はガバァーッと開かれ、破壊した水晶ごと、和也が命の焔をむしりとっり、半分にされたサンド・ワームを無造作に食べようとしていた。
あまりのことに、ほんの一瞬だが呆然としてしまう。
えっとぉぉぉ………マジでぇぇぇ…………
モス○級の大きさの、さんど・わーむを食べる大きな口って…………
どんだけ大きな生き物なんでしょうか?
アレだと、ボクの好きな、ブリー○に出て来た、アランカ○のヤミ○・リヤルゴが変身した姿並みの大きさになりますねぇー…………キモイです
ボクは、不細工な敵キャラはキライなんですよね
イマのブリー○の敵キャラ……特に…ラスボス…ムゴイ姿ですからねぇ………
それ並みに……惨くて……むかつきます…………
敵キャラでも、もう少しマシな姿が希望ですね
むっかぁー…………ボクのさんど・わーむ……
有用だって言うから、油を絞ってみたいと思って獲ったのに………
あんなキモイ…バケモノに、食べられるなんて、許せませんっっっ
なんぴとたりとも、ボクの邪魔をするモノは許さない…………
あっ……そうですね……アレは……ひとじゃないんですから………
………がっつりと……いたぶって……あげます
和也は、基本的に温厚な性格気だったが、敵と決めた相手には、情け容赦無しになる男でもあった。
ただし、それは、バスケットボールの試合で、卑怯な手を使われた場合のみに、発揮される性格だったのだが…………。
今回、そこまで、和也が怒ったのは…………。
さんど・わーむの油を作り、本当に体温を維持する効果があるかを、確かめたいと思っていたからだった。
せっかく、ボクが体温維持に、その油が本当に使えるか、確認しようと思っていたのに…………
幸いボクのもとには、あの姉弟が居るんだから、確認を自分でしなくてすむから…………やってみたいとおもっていたのに…………
食べられたら、確認もできないじゃないですか
本当に、体温維持に使えるなら、必要としている人々に、商品として安価に売り歩くのもイイかな? なんて思っていたのに…………
ドラク○では、装備や武器や防具を揃えるときに、けっこうお金が掛かりますから大変でしたしねぇ…………
ファンタジー系のRPGって、色々とお金が必要です
食べられてしまっては、ボクの予定が狂います
それに、さんど・わーむを食べる天敵と言っても…………
どうせ、大地にろくなコトをしない存在でしょう
地の精霊であるメグ達が、何も言っていなかったんだから…………
…………って、ゴメンねぇ…………みんな…………
ボクが、さんど・わーむの油を搾りたいって言ったから…………
アレに食べられないように、頑張っていてくれていたんですね
とりあえず、あの巨大な口と牙? 歯? を持つバケモノを、銀嶺の剣で斬ってみましょう
和也は、冷静に怒り、そして、正確無比に剣を振るった。
結果、大口の持ち主は、ざっくりと縦半分に切られた。
ただ、その結果、大地もざっくりと斬られていた…………。
が、怒っている和也は、そんなことには気が回らなかったのも事実だったりする。
生命力に溢れたさんど・わーむを捕食するモノだけあって、縦に斬られても簡単に死んだりしなかった。
斬られた傷口から、触手のようなモノが、幾本も雨後のタケノコのように、ニョキニョキと出てきて、斬られた場所を繋ぎ合わせようとする。
その想像を絶する気持ち悪い現象に、怒り心頭の和也もあっけにとられてしまう。
あまりの気持ち悪さに、呆然とした和也の視線の先では、絡み合った触手?はお互いに、半身を引っ張り合う。
しゅぅー しゅぅー にゅるにゅる
ひとっ ピトッ びとっ
グンッッ びったぁぁん
という、異音とともに、すっぱりと切られた切り口は、元通りくっ付いてしまった。 生き返ったソレは、むくっと起き上がりった。
しぎゃゃゃゃ~ ぐぉぉぉぉぉぉ…… しぎぎゃぁぁぁぁ……
ソレは、猛り狂って轟音のような雄叫びをあげ、破壊した水晶の大地から飛び上がる。
もちろん、飛び上がったソレの目的は、自分を傷付けた和也を食べるためだった。
が、その程度のジャンプで、捕まるようなとろくさい和也ではなかった。
空歩で、ヒョイっと避ける。
その結果、空振りしたソレは、ガチガチッと虚しく牙をかみ合わせて、地面に落ちて行った。