046★RPGの定番? さんど・わーむとの戦闘1
和也は、あしでまといになる奴隷の姉弟を、精霊に護らせることを決める。
この世界の住人だけあって、さんど・わーむの出現に、抱き合っておびえているだけですか…………
でも、泣き叫んで走り回らないないだけ……マシ? ……ですね
今、彼らを護る立場にあるのは………ボク…ですから……
持ち主として…………義務をはたしましょう…………
それに、生きているなら、姉弟から情報が得られるかもしれないし………
これも、プレーヤー支援システムなんでしょうから………
たぶん、さんど・わーむは、イベントクリアの条件なんでしょうねぇ~
もしかしたら、追加もあるかもしれないですしねぇ…………
とにかく、みんなに姉弟の守護をしてくれないかという話しを振ってみよう。
「誰か、あの姉弟を護ってくれませんか?」
和也の問い掛けに、精霊達は嬉しそうに答える。
『ツキが、眠らせるねぇ………目が覚めたら、幸せになれるように………甘い記憶の淵に沈めるように………眠れ…幼子よ…そして、安らかな闇に包みましょう……』
そのツクヨのセリフと同時に、姉弟はその場に崩れ落ち、それまでの恐怖にいろどられた表情を、穏やなものへと変え、無防備な眠りの園の住人と化す。
それを見たヒムカは、和也が好む、優しい口調でツクヨの言葉の後を続ける。
『眠っている人間は、無防備になるから……ヒナは守護の光を与えます……』
闇と光の精霊、ツクヨとヒムカの行動に、負けてられないモンと、風の精霊のカオンが続けて言い放つ。
『……はいっ……オトが、音も、振動も、毒も、遮断するねぇ~……』
カオンは風の守護・流動的な風球を作りだし、姉弟を包む。
『チエが、遮断した空気を護りまぁ~す……』
と、水の精霊のチエナミが、カオンの風の守護の外側に、水球を作り出しておおった。
それを見ていたチケイが、大地に両手をついて、言い放つ。
『だったら、メグが、その水球を水晶でおおってあげるぅ~………』
姉弟を次々と精霊の加護が包み込む。
水晶球という物理的な守護を確認し、1番の外側の守護として、炎の精霊のホノカが高らかに宣言する。
『生き物も死霊も嫌がる……炎の壁で……カカが護ってあげます……』
ツクヨの与える眠りにより、姉弟は、パニックから解放されて安らかな眠りについていたので、その過剰なほどの守護をみることは無かった。
また、ツクヨの闇に包まれたのでその姿は、その場に居る精霊達と和也以外には見えなくなった。
ヒムカの作り出す暖かで穏やかな光に、眠っている姉弟は包まれ、ほのかに輝く。
和也の目には、姉弟は闇夜に浮かぶ星の瞬きのようにうっすらとした輝き包まれているように見えた。
そんな2人は、目に見えない風の膜に包まれ、次に角度によってはまったく見えない水晶におおわれていた。
最後に、紅と黄金と白金の揺らめく浄化の炎におおわれて、姉弟の姿はほとんど見えなくなったのだった。
こうして、姉弟は、光と闇と風と水と地と火の精霊の守護に包まれ、最強の結界の中に隠された。
そう、和也が大事なモノは、自分達も大事にするという性格を、大いに発揮した結果だった。
これで、和也が、姉弟を起こすことを命じない限り、誰も彼らを起こすことは無い。
それは、力ある魔物や人間でも無理だった。
すべての精霊によって守護された姉弟は、ガラム達からも見えなくなり、その場から存在を消された状態になった。
もちろん、さんど・わーむに感知されることは無い。
これで、安心ですね
あとで、あの姉弟から、もっと色々な話しを聞きましょう
って、ことで、さっさとアレを処分してしまいましょう
「ありがとう……これで、安心して……アレを処分できます」
姉弟を包む、強固な守護を確認した和也は、安心して空中浮遊、空歩を使う。
そして、一気に、さんど・わーむの前に和也は着いた。
その大きさというより、太さと長さに和也は驚いた。
和也の身体は、さんど・わーむから見たら確かに小さい否小さすぎるのだ。
が……その身の内に、強大な存在感を持つ翼竜の銀嶺がいたので…………。
さんど・わーむは、いっせいに和也の居る方向を見る。
そして、何故か、牙? というか、尖った歯? と言ったらいいのかというモノが生えている口を大きく開けてる。
…………ギャルゥー……ジャルルゥ………
……ジャルゥー……シュー…………
フッシュー……シュシュー……
さも嬉しそうに、耳障りな異音の歓喜に満ちた、鳴き声を口々から出す。
その声無き声を訳すならば…………。
美味しそうな食べ物だぁ……欲しいぃ……
…獲物………食べたい…早く………
食べるぅぅ………うまそぉ~…………
と、言っているだろうと思われる。
そんな、さんど・わーむを……ミミズと似て非なる姿とサイズと、不快な音にを立てるびっしりと牙? または、歯?の生えた口を和也は、心底嫌そうに見る。
う~ん……なんか……生理的に…受け付けない……存在です…
まして、大地のチカラをすする害虫? 害蟲? なら………
全滅させましょう…………
アレが………この辺りが、砂漠になった原因のひとつですね……きっと…
ナミ達の話しだと、水分補給に何度も現れているようですから…………
その度に、大地のチカラを奪っているはずです
………だぁぁ………なんか眠いしぃ……え~とぉ……何か……忘れて……
あはは……ボクってば……かなり、慌てていますねぇ…………
……ふふふふ……ガラム達を、安らかな天に還す予定だったのに…………
ここは、さっさと終わらせましょう…………
………これは…害蟲駆除です…………
小さいサイズと違って、アレぐらいになると、使い道が無いようですから…………
これが、終わったら、ツキに頼んで、ボクも暗闇で安眠したいです
ファイトォー……ボク……これが終われば…………
自分を鼓舞してから、和也はツイッと左手首を撫でる。
まるで、鞘から抜き出すように…………。
腕輪のカタチにしていた銀嶺の魔力の結晶の剣が、和也の右手に出現する。
出現した剣を軽く振った和也は、無意識に独り言を言う。
「みみずは、輪切りにすると再生するからぁ……でも、縦切りにすると再生不能だから……きっと…………さんど・わーむも同じはず」
本人に自覚はないが、まだ、酔いが残っていたようだった。
が、そんな和也は、嫌悪を覚えるさんど・わーむを処分する為に、言い放つ。
「ハナ、オト、カオ…空中浮遊[空歩]…空中の足場[空礎]…体重の増減[空量]…それと、たまに猛毒を吐くモノもいるというので、空気の遮断[空断]をお願いします」
和也に呼ばれたことで、嬉々として答える。
『『『はい、ますたー』』』
その声に大きく頷き、戦闘開始の宣言をする。
「では、行きます」