045★RPGの定番?
和也が、ガラム達と飲んでいる時に、妙な音が微かに聞こえてきた。
ぅん? ……なんか…今………妙な音が…………
それに……地面を伝って…微かにですが……不快な振動が?
でも、ガラム達は、感じていない? のかな? 反応が無いですし
う~ん、地下鉄? …よりは……大型のトレーラー? トラック? みたいな
考えても……わからなかったら……精霊達に……きいてみますか……
なんか…………ファンタジーの定番? のモンスターかも知れませんからね
思考がまとまった和也は、チケイに質問する。
「チカ……地面から……妙な振動が感じられるし、微かな音が聞こえるんだけどぉ……これって…どんな…危ない生き物なの?」
冷静に、音と振動を出している生き物について質問してくる和也に、精霊達は感心していた。
『うわぁぁぁ…………ますたー……って…すごいねぇ~…………
『この音と振動で、ここの人間なら、もう、アイツらが近付いているって、すぐにわかって……恐怖で泣き叫ぶのにぃ……』
『ますたーは、アイツらが、どんな生き物かを知らないのに、ちっとも驚いていないしぃー…………』
『……それに……ぜんぜん……怖がっていないもんねぇー……』
『だって……ますたーは……人間が、とぉーっても怖がる怪魚やお魚を、簡単に取れるんだもん……アイツらだって……ヒョイッととっちゃうよぉ…………』
精霊達は、自分達の会話に盛り上がり、和也の質問に答えてくれなかった。
あははは…………ダメか…………
精霊達の反応に対して、和也は軽い目眩を感じた。
和也は、精霊達に尋ねることを、あっさり諦めて、自分の記憶の中にある銀嶺の記憶を探ることにした。
ふふ……エンの言う通りですねぇ………
本当に………精霊達は、自分のやりたいコトをする生き物ですね
ここは、楽しようとしないで…………
銀嶺の記憶を確認してみましょう………
該当する情報がきっと有るはずです
…えぇーとぉ…うん? ……さんど・わーむ………これかな?
地力? 地の栄養? 地の含む水分? 地に宿るミネラル? を、すする?
いや、奪う蟲……ですか
ふむ、形状は…………
地を豊かにするというか、耕したりする……アレに……そっくりですね
でも、大きさが…………下手すると……モス○並み……
いや……それより……長いですね……
……ん……でも……それは……最大級の……モノのサイズですね
へぇ~……小さいモノは……極寒の地では……最上級の油として使われる?
油? ふむ……身体全体に塗りこみ……体温を維持するモノとして
けっこうな、お値段で取引される…ねぇ…………
……でも……この振動だと……最大級の…………
和也が、精霊達に質問したり、記憶を探ったりしている間に…………。
ガラム達も、その不気味な音と振動に気が付いた。
すると、もう、パニックを起こして騒ぎ出す。
それは、まさに狂乱といっていいようなパニック状態だった。
もちろん、それより敏感な馬?達も、騒ぎ始めていた。
そして、ガラム達は、口々に言う。
「あの恐ろしい……さんど・わーむがぁぁぁ…………」
「ヤツラが、ここに、来たら、全員、食べられてしまうぅぅ」
「音が聞こえたら……おしまいだぁぁ……」
「地面を伝う……振動と音を…察知するから…どこにも…逃げられない………」
「いや、ここには、精霊達を使役する、オアシスの主様が居る………なんとか…………なるはず……この前みたいに……襲われることは……」
「……襲われる? ……」
「我らは……襲われたのか? ……」
「……なぜ? ……生きている? ……」
「……いいや……死んでなどいない」
ガラム達は口々に勝手なことを言い、かなり混乱していた。
それに対して、和也は、冷静に、どうやって戦うかを考えていた。
ミスリル銀の武器を使うのは…………
5㍍~6㍍ぐらい……だったら、有効かな?
いや……突き刺しても……別の部分から再生するから………
ここは、銀嶺の剣を使った方がイイですねぇ~
記憶では、正確にわかりませんが…………
20㍍~30㍍は、楽に切れるようですし…………
銀嶺の力を魔力で凝縮しているから…………
普通の剣と違って、刃こぼれも油スベリも無いですし………
ガラム達が居るこの場所は、戦いに向きませんね
ここは、フウカに言って、空中浮遊の空歩〔クウホ〕を使いましょう
さっさと、さんど・わーむを討ちにいきましょか
……やれやれ……美味しい……お酒を飲んでいたのに……
ったく……無粋な……蟲ですねぇ……
せっかく、このファンタジーRPGの情報を集めていたのにぃ~……
ガラム達が、自分達が幽霊だって思い出してしまったら…………
これ以上、情報を得ることが出来ないじゃないですか……
いっそ、ツキに頼んで、ガラム達を眠らせてもらいましょか?
よし……やりますか…………
何をするかという考えがまとまった和也は、精霊達に声を掛ける。
「ツキ、会話中に、悪いんだけど…ちょっと…イイかな? ……」
『ますたー……ツキに…お仕事ぉ? …………』
「ガラム達を眠らせてくれないかな?」
ツクヨは、和也のお願いをやり遂げたいと思った。
そこで、改めて、キャラバンの人間達と奴隷の姉弟を見詰める。
ますたーのお願いでもぉ……キャラバンの人間は……
死霊だから……無理…………はぁ~残念…………
ぅん? ……あれ? ……あの姉弟は……うっそ……
うれしい……生きてる……眠らせるコトが出来る
ツキもお仕事出来るぅ……良かったぁ…………
お仕事の数は、ヒナとと一緒だぁ……
負けないもん……ヒナには…………
ツクヨは、穢れを嫌う精霊なので、生きているものにしか眠りを与えることが出来なかったので、生きている姉弟の存在を喜んだ。
『ますたー…キャラバンの人間達は…死霊だから…無理…………でも、ますたーのものになった奴隷の姉弟は、生きてるから、今、眠らせるねぇ~…………』
えっ……全部……幽霊さんじゃ………なかったんですね………
あの……姉弟……どうしたら……イイんでしょうか?
いや……生きているなら……護る必要がありますね……
とりあえず、姉弟は、誰かに、護って欲しいと言えばイイでしょう
それより、これ以上、情報をとれないガラム達を、どうしましょうか?
あのままじゃ…可哀想ですよねぇ………
…………ああ、そうだ……ヒナに言って……協力してもらい…………
出来るなら、天に還すことにしましょうか?
冥府の女神様に、お願いしてもイイし……
でも、先に、生きている姉弟を護ることにしますか………