042★水の対価
置いて行かれても、幽霊だから困るんだけど……
でも、お水を汲まないと、何時までも、居座りそうだから…………
もう、これはしかたありませんね…………
こんな感じのドラク○でもあったような?
いや、でも、このままじゃ物語が進みませんから…………
和也は、内心で色々と考えながらも、顔は無表情で、ガラムに言う。
「では、その2人の子供と引き換えに、水を汲むことを許可します」
欲しかった和也からの許可に、ガラムは全開の笑顔で答える。
やっぱり、貴族の姉弟は、貴族にききますね
でも、貸した金額を取れなかった…………
水と引き換えだったと諦めましょう
あっ……お酒を…ぜひと言って買ってもらいましょう…
いやいや……姉弟の衣類は……どうでしょう
試してみましょう……少しでも……商売をしなければ…………
「ありがとうございます。この姫君達の衣服はいかがでしょうか?」
ガラムの視線を受けた姉弟は、お互いに顔を見合わせて頷く。
「ご主人様、私、このお衣装が欲しいのですが…………」
「ご主人様、僕は、このあたりの着心地のよさそうなモノが…………」
和也には、奴隷の姉弟のおねだり?が、ガラムに強要されたものだとすぐにわかった。
ふぅ~……何か……適当に買ってやるしかないですね
商売人は、幽霊になっても商売したいんでしょうねぇ…………
幽霊の売るお酒は、たぶん飲めない…………
いや、でも、モノですから…………
もしかしてもありですし………ダメもとです
ダメかもと、わかっていても…………
この世界のお酒ですから………買ってみましょう……全部……
ふふ……お・と・な・買いです
問題は、お金の価値が、わからないコトです
とりあえず、メグ達に聞いてみますか
和也は、買い物?の為に必要なお金について、地の精霊達に尋ねることにした。
「メグ、あのへんにある商品を買うのに、お金はどのぐらい必要かな?」
チケイは、ちょっと首を傾げてから、袋を幾つか和也に差出しながら言う。
『ますたー……メグもお金って…よく…わからないの……だから…砂金の入った袋をあげるね…』
和也は、チケイの差し出した袋を受け取る。
砂金が入っている袋は、見かけよりかなり重かった。
へぇ~砂金ねぇ~確かに、お金の換わりになりますね
これで、支払いにするんですか………
なんか、ファンタジーというより古代っぽいですね……
いや、ここの設定ってば、もしかして、貨幣制度が確立していないのか?
まさかね……メグにお礼を言って…………
そうだ…ボクのモノになった…あの姉弟に支払いをさせればイイか
ついでに、欲しいものというか、必要なものを買いなさいって言えばいいかな?
でも、お酒は買います……絶対に……飲みたいもん
飲めるとイイな
思考がまとまった?和也は、自分のモノになった姉弟に、それぞれ1袋づつ砂金の入った袋を手渡して言う。
「必要なモノがあるなら、それで買いなさい」
和也に、砂金袋を渡された2人は目を丸くする。
その様子に和也は、不思議そうな表情で首を傾げる。
どうして、あんなにびっくりした顔をするんでしょか?
貴族の姉弟だったら、この程度の金額は、気にならないと思うんですけど
チケイにヒョイッと出してもらったので、和也は砂金をそこまで重要視していなかった。
それに、ここは、砂漠のオアシスなので、持ち逃げされる心配も無いので、かなりいい加減になっていたりする。
一方の貴族の姉弟は、家族から引き離され奴隷に落とされて、すべてに諦めていただけに、和也の破格の申し出に心底驚いていた。
そんな姉弟の心情に、和也は思いいたることは無い。
それは、奴隷制度の無い世界で育っているので…………。
ついでに、酔いが、まだ、残っているから…………。
和也は、姉弟に、どうしてそんな顔をしているのかを尋ねてみた。
「どうかしましたか?……それとも……欲しいモノは無いのですか?」
和也の優しい言葉に、2人は涙ぐむ。
「姉上、僕達は、幸運ですね……良いご主人様に…出会えました…」
「そうね。父上達が、罪に落とされた後に、初めて良いことに会えましたね」
「姉上、僕は、以前、着ていた服などを買いたいと思います」
「私も、そうします。ご主人様の服装を考えると、ここにある良いモノを買う必要がありますね。ご主人様に恥をかかせないように…………」
「はい。姉上」
「これと、これ、それと…………」
2人は、それぞれ必要なものを買い始めた。
それを確認した和也は、砂金の袋を手にしながら、ガラムを見る。
う~ん……2人は、買い物に夢中になっている……
自分でお酒を買いましょう…………
あっ……水を汲む場所を指定し忘れていました……
ボクも慌てていますねぇ……
和也は、苦笑しながら、ガラムに話し掛ける。
「水場は、あの布で囲まれた場所です。それとここに並べているお酒を全部買いましょう。対価は砂金で…………」
やっと和也から、欲しかった言葉をもらえたガラムはにっこりと音がする程の笑顔を見せる。
この世界の湖や川、泉などには、和也が倒した怪魚が良く出てきます。
和也のように、精霊達の力を借りれるとか、ミスリル銀などの特殊な武器を持っているなどの力が無ければ、怪魚に食べられて終わります。
だから、ガラム達は、勝手に水を汲もうとしなかったんです。
彼らキャラバンにとって、砂漠の水場、オアシスも込みで、かなり危険な場所なんです。
落ちたら、命を落とす場合もあるので…………。
なぜなら、砂漠の人間は、基本的に泳げないから…………。
水場を管理している者は、怪魚がほとんど出ない場所を、ちゃーんと知っているから、安全に水を汲めます。
その場所を教えてもらう為の情報料金も兼ねているので、奴隷を2人差し出したんです。
水が豊富に無い場所では、基本、人間は泳げません。
砂漠の国では、足首より上の水で溺れるという話を聞いたことがあります。
また、砂漠には、雨が降ったときにだけ現れる川があります。
これを歩いていて、雨に降られて溺れるという事故もあるんですねぇ。
また、海に囲まれた半島でも、水泳を教えてもらうことがなければ泳げません。
この辺は、某SOUTH KOREAの海難事件が、皆さんの記憶に新しいと思います。
日本みたいに、幼稚園から水泳を教える国は、そう多くありません。
自然の中に、泳げる湖や川が少ないし、水泳が出来る時期が、数ヶ月しかないのにていう意味では……珍しいほうです。
閑話休題。
ガラムは、和也にお酒を紹介する為に残るので、サウルに指示を出す。
「サウル、水袋を全部出して、すべてに水を入れなさい。他に空いているモノがあったら水を入れるように」
「はい。馬達の水入れにも入れます」
サウルは、ガラムに答えると頭を下げて、他の者に指示する為に動き出した。