041★水を汲む権利?
和也が精霊達との、価値観の違いによる会話に疲れた頃に、ガラムとサウルは商品を取り出し始めていた。
馬車から下ろす商品を置く台を設置したり、奴隷を立たせる絨毯を広げたりとバタバタしていた。
見栄えがするように、順序良く品物を並べていく。
和也は、その様子を、サクラに付き合わされたフリーマーケットの設営のようだと思いながら見ていた。
そして、和也が興味しんしんで見ているとこに、気が付いたガラムはにっこり笑って手もみする。
「オアシスの主殿、いかがですか? この辺りでは珍しいものばかりです」
ふ~ん……死んでも商人なんだねぇ……
もしかして……死んだって……自覚が無いのかな?
………珍しいものって言われても………
どうリアクションしてイイか?
ぜんぜんわからないんです
だって……このRPGの設定を知らないんです……
良いモノ? …お値段がイイもの? ……って…
わからないんですけどぉ……
ドラク○のように、商品の高い安いとか、使う用途がわかれば
何の苦労もいらないんですが…………
いっそチートで、どんなモノの価値や値段や用途がわかるってあったら…………
なんていけないことを考えてしますます
ここは……黙って様子を見ましょう
「…………」
和也は、見たことの無い商品(使う用途すら不明なもの)に困って、ただ無表情で黙っていた。
なお、和也は、日が落ちて寒くなったので、この際誰も居ないんだからと、適当に洋服を着てマントを羽織っています。
が、それは、地の精霊達が用意したものなので、とぉっ~ても豪奢なものです。
でも、和也は、それが、ものすごい値段がするものだという自覚はありません。
きらびやかな宝飾品が縫いこまれていようと、和也は気にしていません。
だって、ゲームの中の洋服だからと思っていますので…………。
そのセイで、ガラムは、和也を貴族(領主)と思ったのですけどね。
そんな和也の表情と態度に、ガラムは困ってしまう。
ああ……やっぱり……裕福な貴族なんだなぁ……
ウチの商品なんて……二流品って……見ているんでしょうねぇ~
軽く羽織っているマントの色柄も凄いものですし…………
着ている服の刺繍も豪奢で、縫いこまれている宝石なんて…………
指輪にしたら……耳飾にしたら……なんて思うモノばかりですねぇ……
はぁ~……ウチの……商品では……
でも、ここに、あるお酒は、絶品ですから…………
私自身が飲んで美味しいと思った極上品ですから…………
それに、奴隷は、貴族の姫君と若君がいますから…………
なんとかなるでしょう…………
押し付けられて困っていた人達だから、これをイイことに
水と引き換えに、置いて行きましょう…………
さっさと、奴隷を出しましょう………
もったいぶる意味も有りませんからね…………
思考がまとまったガラムは、サウルに目配せする。
するとサウルは、馬車の中から、貴族の姫君と若君を引き出す。
もちろん、奴隷の鎖が手足に付いていたし、頭には奴隷の環が付いていた。
「オアシスの主殿、ここに主家に仇なした貴族の子にあたる姫君と若君がおります。この2人と引き換えに、水を…………」
ガラムの発言の内容に、和也は、一瞬だが思考停止状態になった。
はぁ~……なんですとぉ~……
主家に仇なしたって……王家に反逆したってこと?
国家に、著しい被害を与えたってこと?
でも……だからって……子供を……奴隷に落とすなんて…………
なんか……すっごい……設定なんですけどぉ~…………
……あっ…でも…ドラク○で…主人公と王子様が奴隷なったっけ……
それも……ありですね…………
もうこうなったら………水と交換してあげましょう…………
それと食べきれない料理を、一緒に食べるように言ってみますか?
ドラマチックになれなんて思ったボクが、悪かったんでしょうか?
いやぁ………恐るべし支援システムって感じですねぇ…………
ちょっと考えただけで、そういう風な展開になるんですから…………
……っと……その前に、水を汲む許可を幽霊に与えてイイか……ナミ達に……聞いてみましょう…………
和也は、とりあえず、精霊達に、幽霊のキャラバンたちに、水を汲ませてもイイを聞くことにした。
「ナミ、ここの水を汲む許可を与えてもイイ?」
『ますたー……死霊に水汲みされるのはいやぁぁ~……穢れるぅ~…………』
水の精霊の答えに、和也は首を傾げて言う。
「う~ん……水を与えないと……ここに居座ると思うんですけど……」
『……うっ……』
困ったをする和也と、穢れが水に触れるのはイヤなナミ達はどうしようという顔になる。
そこに、地の精霊が助けを出す。
『だったら……チカ達が……ちょいちょいって……水場を作るよ……』
『えぇぇ~でもぉ…………』
『湖と繋がって無い水場にして……井戸みたいに作るから……』
『そこに、水を入れておけばイイでしょ』
『そっか汲んだ水を入れて置くんだぁ~』
『あの規模のキャラバンが、必要な量を入れればイイよ』
『うん……わかった…入れるぅ…』
折り合いが付いたところで、地の精霊3人は頷く。
『じゃ…ここに作るね』
『ますたー……布で周りを囲った場所…あるでしょ…』
「あるね」
『そこに、作るから……』
『ますたー…は…あそこの水場を使ってイイって……指示すればいいんです……』
地の精霊3人組がどうやらパパッと井戸モドキを作り、水の精霊がどことも繋がらない水汲み場用の水を入れるということで決着が完全についたのを確認し、和也はお礼を言う。
「はぁー助かるよ…ありがとう…ナミ…アヤ…チエ…チカ…メグ…チホ……」
和也は、精霊達と折り合いをつけたので、黙って自分の許可の言葉を待っていたガラムに話し掛ける。