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040★昔は人間、今は幽霊、との対話

 


 その、一応無理はないいけどぉー…な設定に、和也は思わずはふっと嘆息する。


 うっわぁー……うさんくさぁー……

 いや、ファンタジー系のRPGだったら…確かに、ありですけどね

 でも、つまらないから、ボクはちょっとひねた感じに答えましょう……

 どんな答えを言うんでしょうか?

 楽しみです…………これが、緑川くんだったら…………

 いや、緋崎くんでもおもしろい答えが聞けたでしょうねぇ…………

 これが、浅黄くんでも………はぁ~……………

 どうして、今、彼らが側に居ないんてしょう?

 同じ時に、同じアルバイトで、このRPGにいる筈なのに…………

 えぇ~い……ちょっとぐらいイイですよね……


 「ほほぅ~占いねぇ…………」 

 

 ガラムの答えに、和也は眉をひそめて言う。

 和也のボクはとぉーっても疑ってますという答えに、ガラムは、ちょっと哀しそうな表情で答える。


 「信じて頂けないのは、重々承知しております。が、我がキャラバンには、幼子や女、年老いた者もおります。どうか、水を分けて頂きたいのです」


 また、頭を下げながらガラムは、水が欲しくて必死なんですという感じを濃厚なまでに醸し出していた。

 

 う~ん……パターン通りで……なんか……つまんないなぁ~…………

 もっとこう……映画みたいに………おもしろい…答えが……欲しいなぁ~

 

 「…………」


 それに対して、和也はあえて無言で答える。

 りっぱに、かなぁ~り酔っている和也は、普段の人を思いやるという感情が、ほとんど眠り、何でもおもしろがるし、我がままという性格に、支配されている。

 普段、人を思いやるとか、人の考えを尊重するという、自重がかなぁーり入った状態を維持していたので、その分、反動が大きく出ているようだった。


 だから、和也の表情は、支配者?の傲岸で冷たい性格が滲んでいるように見える。

 無言で圧力をかけてくる?和也に、ガラムは心底困ったという顔をする。

 そんなガラムに、側近らしい男が、何か耳打ちする。


 「長、水が無ければ旅は出来ません。ここは、思い切って、商品の奴隷を見せて気に入った者を、差し上げるというのは…………」

 

 男の提案に、ガラムはあっさりと頷く。

 

 「サウル、その手があったな……そうだな……ロ・シェールの都に着く期限も迫っている…この際、奴隷の一人で、水が手に入るのなら……」

  

 自分の持つ常識(平和な日本の学生の一般的な常識)を、遥か彼方に捨て去るような非道な提案に、和也は驚いてしまう。


 …………えっ……えっとぉ~…………

 いや…確かに、映画みたいに、劇的なことが起きて欲しいと思いましたが…………

 水を手に入れるために、奴隷をボクに差し出すって…………

 黙っていたセイでしょうか?

 そんなにボクは、強欲に見えたんでしょうか?


 こんな時は、物知りなエンにちょっと聞いてみよう…………

 ありえない………水と人間の命いや人生の交換って…………

 でも、ちょっとズレた空間に居るようだから…………

 風の精霊のハナに、声だけのやり取りになるようにしてもらいましょうか………

 だって、エンの存在が、バレたら、即、逃げられてしまいますからね


 あまりの非道な発言に酔いがばっちりと冷めた和也は、対処に困って風の精霊のフウカに声をかける。


 「ハナ、ボクとの会話を彼らに聞こえないように出来ますか?」


 『ますたー……ハナ……出来ますよぉ…今から…ますたーの周りの…空気を…こっちの空気と繋ぎますぅ………』


 「大丈夫?」


 『出来ましたぁ~ますたーが、誰と喋ってもアレらには聞こえませんよぉ』


 「ありがとう……エン…ガラムとサウルの会話を聞いていたよね?」


 『はい』


 「ここの水が欲しいからって、奴隷をボクに差し出すって……おかしくない?」


 『ますたー……砂漠で…1番大切なのは…命の水です……当然でしょう……』


 「エン…だって……人間をボクに差し出すって…」


 『人間にとって、奴隷はモノです……単なる…物々交換ですよ…』


 「でもね……あーもう…なんて……言ってイイか…」


 『ますたー……奴隷と言っても……ピンキリです…あの程度のキャラバンが…扱っている奴隷は、二流品ですから…そこまで…高く無いですよ』


 所詮は、この世界の精霊なので、やはり常識が違う。

 だから、和也が何に困っているかわからないのは当然のことだった。

 人の命の価値が、かなりどころではなく違うことを理解出来ていない和也は、更に困惑を深くする。


 「いや……だからね……」


 和也が盛大に困惑しているのに、エンキは自分の考え(この世界の常識を基にした)をヘロッと言う。


 『ますたー……奴隷も人間ですから……人間と喋りたいときに…役にたちますよ………とりあえず…人間ですから………』


 その言葉を隣りで聞いていたホノカが、注意する。


 『エン…アイツらは……幽霊だってば…』


 ホノカの注意にハッとしたエンキが、短絡的に言う。 


 『……ああ……そうだった…では……焼くか?…』


 不浄なモノが嫌いなホノカは、和也に同意を求める。 


 『そうしましょう……ねっ…ますたー…』


 和也はそんなホノカとエンキに肩を竦めて首を振る。

  

 「もう少し様子を見ます」


 和也が精霊達と不毛な会話をしている間に、ガラムはサウルと会話していた。


 「サウル、奴隷は全員出しなさい」


 「………?…」


 「あの豪華な天幕を見ましたね?」


 「はい……でも……お付きの者の姿がみえませんが…………」


 「たぶんに、精霊を使役しているのでしょう」


 「精霊ですか」


 「見てごらん、サウル………テーブルには、出来立ての見たことも無い料理の山が、黄金の食器に盛られています」


 その言葉にハッとしたサウルは、改めてテーブルの上を見て頷き答える。


 「確かに………それに、かなり高価そうな…クリスタルの器もありますね」


 「だから、奴隷は全員だしなさい。それとロ・シェールで、売る予定の商品も出しなさい」


 「……?……」


 「もしかしたら、気にいって、お買い上げしてくれるかもしれません」


 どこまでいっても、商人なので、商売になりそうだと判断すると直ぐに商談したくなる彼らだった。

 サウルはすぐに準備(商品陳列)にかかるために頷く。


 「はい、用意致します」


 和也が精霊と会話している間に、サウルは、奴隷や商品を入れていた馬車?を馬?に引かせて、和也の前に移動させていた。








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