038★やっと、ごはん?6 食後のデザートは?
和也が、水球から出て来ると、すかさず銀嶺が肩に飛んできた。
ただし、素早い動きではなく、ヨテヨテと表現したほうがイイような動きだった。
眠くて眠くてたまらないという表情で、銀嶺は和也に話し掛ける。
『ますたーなかに入って眠ってもイイですか?』
瞳を小さな手で眠そうにこすり、ちいさなあくびをしながら、話しかけてくる銀嶺に和也は、ふんわりと笑う。
かっ……可愛い…小さな身体で……小さなお手てで、瞳をこすってるぅう……
ボクでさえ……きゅんきゅんきてるんだから………
ここに……相沢センパイがいたら……銀嶺を抱き上げて…………
きゃーかわいいぃーもうたまんなぁーいって言いながら……
くるくる廻ってしまいそうな愛らしさだなぁ~……
う~ん……このゲーム……女の子や可愛いモノ好きな人間に受けそう……
ボクも好きだなこのゲーム……色々と嫌な部分もあるところが……
設定としては、リアルっぽくてイイのかな? とも思うなぁ……
じゃなくって……ボクのなかに入って休みなさいって言わなきゃ………
銀嶺の愛らしさに、動物好きな和也は、クラクラしながら答える。
「いいよ……はやく……なかで……やすみなさい……おやすみ、銀嶺」
『はい、ますたー……おにゃすみなさい……』
既に、頭が眠っている銀嶺の答えに和也はくすくす笑った。
が、そんな和也に気付く余裕のない銀嶺は、肩から一瞬で消えた。
そして、和也は、銀嶺の寝息を身の内で感じるのだった。
完全に夢の国に行ったみたいですね
銀嶺は、やっと本当の意味で眠れたんでしょうね……
でも、後で、銀嶺に呪?をかけたモノの話しを、聞きだす必要がありますね
このRPGの敵キャラの1人に、違いないんですから…………
それと、精霊達を捕まえて、使役する為の呪についても、聞く必要がありますね
ゲームをプレイする人間達の最終目標を叶える為の冒険は、いったい何なのか?
ラスボスは、どんな生き物なのか?
敵キャラはどんなモノなのか?
敵モンスターは?
ぜんぜん出会って無いから、まるっきりわからないんですよねぇー……
まっ……ごはんを……食べてから考えてみましょう……
料理は、火加減が大事です
火加減には、火の精霊と風の精霊を使えばなんとでもなる……たぶん……
とりあえず、マグロ? を解体しましょうか………
考えがまとまった和也は、天幕の中を見回して、1番大きなまな板?もどきと細身の包丁?もどきを取り出す。
うふふふ…………大理石のまな板ですか?
まっ……使えるなら……よしとしましょう……
この包丁? だったら、マグロ? を三枚に下ろせるかな?
とにかく試してみましょう…………
200㌔超えるマグロ? を、普通の腕力しかないボクが、ひょいひょいと動かせる風の精霊の魔法?は便利ですねぇ……
内心で色々と考えながら、和也は黙々とマグロ?を解体する。
内臓とウロコなどを取り除いた可食部分を、柵になるように再度切り分ける。
今回、食べる分以外は、氷室に入れればイイと思うと便利でイイですね
血合いの部分は、油で揚げて、油に漬け込んで、ツナにしましょう
あとで、色々なものに使えますから………
粉を付けて、マグロ? のから揚げもイイですね
軽く焼いたマグロ? のステーキ
食べやすい大きさに切って、マグロ? の刺身の盛り合わせもイイなぁ
さっき、取り分けたエビなんかも盛り合わせに…………
にこにこ笑って和也は、料理をしたのだった。
それを手伝ったのは、火の精霊と風の精霊と何故か水の精霊だった。
火の精霊と風の精霊を使って、焼き物を…………。
火の精霊と水の精霊を使って、蒸し物を…………。
と言うように、和也は、精霊達を使い分けて料理をしたのだった。
電子レンジのヘルシ○とか、コンベクションオーブンとか、電気フライヤーとか色々な調理器具と同じような使い方をしたのだった。
地の精霊達は、何でも用意したくなる性質があったので、色々な粉や色々な種類の油や野菜や果物などをたぁーっぷりと天幕に入れてあった。
こんなに食べれませんというような量だったのは言うまでもない。
が、身の内に、翼竜の銀嶺を入れていた和也には、助かったなぁ~と感じられる量だったりする。
身の内に、大きな力を持つものを入れると、人間はその分よけいに食べる必要が出るので…………。
和也も必要にせがまれて、沢山食べれる体質にかわっていた。
が、本人は無自覚だったりします。
もちろん、沢山食べても大丈夫なのは、和也の胃が銀嶺の胃と重なっているので、桁違いの許容量と消化力、吸収力を使えるからです。
大量に作った料理を並べながら、和也は孤独感を感じていた。
和也の周りには、精霊がたぁ~くさん居ても、人間は1人もいない。
大家族で育ち、大人数のバスケットボールのクラブに所属していた和也は、人の気配が無いことに、かなぁーり辛くなっていた。
はぁ~………人間と会話したいですぅ…………
なのに、このオアシスには、1人もいないんですよねぇ…………
精霊との契約の後、このオアシスに来た人間はますたー(和也)が始めてだと聞いたときは、かなりショックだった。
このオアシスは、人間達のキャラバンの通り道から外れているんですね
確かに、ここに来る途中、そういう道らしいモノはありませんでした
さらに、ここは、人間に見付からないように、結界が張られているようですし
もし、このオアシスに人間が来るならば………
それは、死霊、悪霊、幽霊のたぐいでしょうねぇ……
光と闇の精霊が居るから、人間の幽霊程度は簡単に追い払うことは出来ます
だから、ボクは、このオアシスを明るくしてもらいました
遠くから見えるように…………
えぇ~え……このさい、幽霊でもイイんです
ボクは人間と喋りたいんです
こんなに沢山の料理を1人で食べるのは、寂し過ぎます
はぁ~…………一緒にアルバイトに来たのにぃ…………
緋崎くんや浅黄くん、緑川くんにも会えないなんて…………
今、みんなは何処にいるんでしょうねぇ…………
あぁ~あ、緋崎くんがここに居たら、いっぱい作った料理を無駄にする心配なんていらないのに…………
言ってもどうしようもないですね…………
せっかく、作ったんです…………とにかく、食べなきゃ…………
和也は、内心の嘆きをポイッして、まず刺身を食べ始めた。
そんな和也の耳に、馬?のいななきや人の声?ざわめきや物音が聞こえてきた。
あっ…今の音………キャラバンですね
このオアシス全体を明るくしてもらって良かったなぁ…………
和也が、嬉しそうに笑って立ち上がると、光の精霊のヒナが慌てて話し掛ける。
『ますたー……あれは……悪霊です…』