035★やっと、ごはん?3
お腹の空いていた和也は、とにかく飢えを満たすために、何も付けずにかぶりついて咀嚼する。
口の中に広がるうまみに、和也はうっとりする。
うわぁぁ~……本物の伊勢えびより、美味しいかも…………
そういえば、千葉の…………で、食べた時も感動したっけ…………
アレよりも、更に新鮮だからかな? なお、身がプリプリしてて最高ぉ~
まして、とぉ~っても大きいから、食べがいがあります
もぐもぐと、伊勢えびもどきの身を味わう。
和也は、素材そのものの味を堪能していた。
が、流石に、飢えがおさまってくると、周りを観察する余裕がでる。
そして、視線を感じて、和也ははっとする。
銀嶺達が自分の食べ方を呆然と見ているコトに気がついた。
ははは……どん引きしているなぁ~……
翼竜の銀嶺もかぁ~……
銀嶺なんかは、自分で獲物を狩って食べているのにぃ……
どうして……ボクが、エビやカニを生で食べているのを……
そんな目で見るのかなぁ~………
…あっ……このゲームの設定に、日本人以外が入っているってコトかぁ~
はぁ~生きているエビやカニ、貝や魚をそのまま食べるのって…………
民族的に少ないんですよねぇ~………
でも、食べた命に感謝して、エビ供養とかしてるしぃ……
くじら塚とかの慰霊碑を建てて、供養しているんですけど……
まっ……考え方は人それぞれですしね……
知らないふりしておきましょう……
本当に気になるんだったら、質問するでしょうから……
じぃーっと、自分を見詰めている銀嶺や精霊達を、あえて無視して、和也はひとしきり生のエビなどを堪能した。
ふぅー…生のエビやカニは、ほんとぉーに美味しいですねぇー
次は、怪魚を焼いて食べてみたいですね
エビやカニも焼いてみようかな?
蒸してみるのも、油でカラっと揚げるとか、鉄板焼きとか、あと、網焼きもイイですねぇ~…………
でも、料理するんだったら、調味料が、欲しいですね
ここでも、お塩や砂糖、お酒は存在しているでしょうし……
お酢は、すっぱい果物で代用が利きますし………
問題は、お醤油ですね
ふむ、魚醤ぐらいは………って、ここは、水の少ない場所……
魚が取れなければ、魚醤は無理……ですよね…………
大量の塩とお魚が必要ですもんねぇ…………
う~ん……残念だけど……お醤油は諦めるしかないかな?
さて、どんな調理器具があるんでしょうか?
ちよっと聞いてみようかな?
和也は、ツイッと唇を指先で拭き、自分を見詰める、チケイに声を掛ける。
「ちょっとイイかな? メグ」
呆然としていたが、和也に声を掛けられたので、嬉しそうに答える。
『はい…ますたー……何か? メグに、お仕事?』
「いや、お仕事になるかは………で、さっき、持って来た調理器具の中に、料理の調味料は入っているかな?」
その問い掛けに、全開の笑顔で答える。
がんばったんだよぉ~……という表情で、集めて来たモノを言う。
『入ってますぅ…お塩も、ユンガ山の光塩、ギランガ湖の赤塩、アリシナ地方の雪塩とか、色々な種類を持ってきました。それと、甘味として、蜜虫のユリアの蜜、サラナの蜜に、ケナンの蜜でしょ。天名花の甘味、甘蜜の甘味、紅華樹の蜜も、甘味としては、美味しいと思います。お酒は、ミューム酒、イエール酒、アワール酒とか香りと強さと味など色々揃えてみました。辛味は、サンガ、キュア、ワッサ、コンシェとかたいていのモノは持ってきました。酸味は、カポ、レモ、スッスとか、後は、人間達が、好んで食べる甘い果物とかを持ってきました』
えっとぉぉぉ………何がどれで、どういうモノかわかりません
かろうじて、お塩とお砂糖系とお酒、辛味に酸味が何となくわかるだけです
やっぱり、お醤油みたいなモノはなさそうですね…………残念
ぅん? あれ、油は? らしきモノが…無かったような気が………
いや、もしかして、油って調味料に入らないのかも………
あとで、どれが何かを詳しく聞いてみよう
それに、自分の舌で味わって、確認してみなきゃ…………
それにしても、このRPGって凄く凝ってますよねぇ…………
変なところで、マニアクラスの設定が点在してますね
やっぱり、ボクたちみたいに、アルバイトに来た人達の寄せ集めの知識が、色々と詰め込まれているセイでしょうかねぇ?
じゃなくて、とりあえずお礼は言っておきましょう。
「へぇ~色々と持ってきてくれたんだぁ………ありがとう、メグ」
褒められるチケイを見て、チホウが和也に呼び掛ける。
『ますたー…チホの天幕の中も見て欲しいのぉ…………』
とりあえずの飢餓感がさった和也は、にっこりと笑って答える。
「うん、中の確認をしようか……ありがとう、チホ…」
そう言った和也は、立ち上がり、用意された天幕の中を確認する。
あぅぅぅ……やっぱり……すごい…………
そこには、和也の予想通り、豪華な絨毯や壁の色鮮やかな布、天蓋付きベット、凝った彫刻が施されたテーブルセットやタンス?の類いや棚?の類いまであった。
もちろん、食器棚もどきには、ギンギラギンに輝きを放つ黄金の食器が………。
他に、どうみてもクリスタルガラスで作られたグラスではなく、水晶を削って作ったと思われるクリスタルグラスなどが、がっつりと収まっていた。
天幕の中に入った和也は、とりあえず長持ちもどきを開ける。
その中には、色鮮やかな羽根布団?が入っていた。
うふふふふ………想定以上に…ギラギラですね…………
じゃ、こっちは?
洋服タンス?の扉を開くと、色々な色柄の洋服が入っていた。
どれも、丁寧に色々な柄と色で染められているか、刺繍で埋め尽くされているかというもの凄いモノだったりする。
そう、和也の感性では、誰が着るの?…コスプレ用の服?…百歩譲っても仮装パーティー用の服としか思えないような城モノ(=明治時代以前の豪華で派手でごてごてしたもの)ばかりだった。
ボクが、中身を指定しないと、地の精霊達の好みの品々が入れられるんだぁ
確かに、エン達が言った通り、作りてぇーモノばかり…………
作って楽しいモノって……手が込んだモノですよねぇ………はぁ~…
きっと、簡単なモノは、やっつけ仕事って感じるんでしょうねぇ
はぁー……旅人の服には、不似合いなモノばかりです
あとで、もっと簡素な服を頼みましょう
食器とか内装関係は諦めます
少しは、譲歩しないと……いうコトを聞いてくれなくなりそうだしね