034★やっと、ごはん?2
和也の前に、突然、大きな天幕がポポンと現れた。
『ますたー……天幕と……』
『ますたー……エビー…カニー…色々な種類を獲ったよぉーだから……大きさも色々だしぃ……味わいも色々なんだって…………』
『ちょっと、アタシがますたーに話しかけているんだからぁ…………』
『ますたー……ミスリル銀の投げ網……』
『ますたー……お料理用のぉー』
『ますたー……色々な種類の貝なのぉ……大きい貝と小さい貝とぉ……とぉーっても美味しいって……』
突然出現した地の精霊と水の精霊は、競うようにして、口々に言いたいことを言う。
あのぉ~もぉ~しぃもぉ~しぃ……そんなに、いっせいに言われても…
ボクは、聖徳太子じゃないので…………
いっぺんに……答えることはできません
って言っても……たぶん……聞こえないですね
ここは、落ち着くのを待ちましょう……
はぁ~……美味しそうなエビやカニ、貝もたぁ~んとあるのにぃ…………
見てるだけって…………
切ない……お腹…空いた…なぁ~…………
和也は、何をどう答えていいのやらと言う表情で苦悩する。
そんな和也のもとに、怪魚を食べ終えた銀嶺が戻ってきた。
そして、銀嶺は、和也の肩にひょいっと飛び乗り、口元を満足そうにこすっていた。
まだまだ、お腹に余裕のある銀嶺は、水の精霊達が持ってきたものを食い入るように見詰める。
『ますたー……あれ…食べてみたいんですが? ……ダメですか? ……』
銀嶺の控えめな?お願いに、和也は意識を現実にもどした。
はっ…そうです……銀嶺は…改めて成長するために………
大量に効率の良い食品を、食べることを必要としていました
そして、食べ盛りの高校生のボクも、食べなくてはいけません
あぁ……藤田主任の言う3時間が…………
もしかしたら、ブリー○の主人公? が、修行した現世の1000倍の時間が流れている断がいと同じような設定だったら…………
がっつりと食べておく必要があります
ドラク○でも、時間の流れが速い設定でしたから…………
食べるためにも、あの集団に声をかけましょうか……
和也が、地の精霊と水の精霊の言い争い?に、苦悩しているのを見て、風の精霊と火の精霊がこっそりと話し合う。
『ますたー……困ってるよね……』
『絶対に困っている』
『水の精霊って…飾り耳しかついてないから………』
『うん…しょせん……ヒレだからねぇ…』
『それに、作り手って言うか……作りてぇーって…いっつも……ごそごそしている地ネズミさんと一緒だからねぇー』
『地ネズミねぇー…巣穴と食料庫と通路を…せっせと……作ってる…アレね』
『エン……あなたが…ヒレつきと…地ネズミに……声を掛ければイイのよ』
『そうだねぇ…唯一の…男なんだから……』
『わかった……おれが…言う…』
自分の為に相談している、風と火の精霊達の会話を、和也はなまぬるぅ~いなんとも表現できない顔で聞いていた。
ふふふふ…………これが、相克ですか……
火と風は、相性がイイのは、確かなようです
水と地も、それなりに相性はイイと思います
……たぶん…きっと
まぁ…四大元素の相克って考えれば穏やかですね。
あれ? ……四大元素をすべて従えるって…………
ファンタジーの設定では、タブーでしたよねぇ~?
風と火と大地はOKだけど……確か、水はNGでした。
だから、三つが限界だったはず…………
へぇーこのRPGでは、四大元素すべて使役できる設定なんですね
楽しいかも………。
さて、エンは、どう言って、あの言い争いを止めるんでしょう?
好奇心いっぱいの和也の視線の先で、エンキが水の精霊と地の精霊に、火の精霊のイメージとは、違って穏やかに話しかけていた。
『おまえたち、ますたーが困っているぞ』
『えっえぇー……なんで?……』
『アタシ悪くないもん』
『わしたしだって…………』
『順番に、ますたーに報告しろ……そうすれば……ますたーも応えてくれる』
『だったら……あたしが……1番目ね』
『違うもん…メグだもん』
『静かにしろ…ますたーに…命令された順番で…報告すればイイ…』
『『『あっー……そっかぁ……』』』
その反応に、流石のエンキも頭を抑える。
『まず、地の精霊から、ますたーに報告しろ。次に水の精霊だ』
困っているエンキに、ホノカも応援に入る。
『あなた達が、騒いでいるから……ますたー…が…困っていたわ』
『『『うっ………』』』
『ますたーが、食事できるように……早く……準備しなければ……』
『それに、ますたーの翼竜も食べたいって言ってたわよ』
エンキやホノカに注意?された地の精霊と水の精霊は、ちよっと項垂れる。
その為、一瞬だが、静かになった。
その瞬間を捉えて、和也は、にっこり笑って言う。
「ボクの頼んだモノを、それぞれ持って来てくれたんだね……ありがとう…チカ、チホ、メグ、おかげで、料理を作れるし、休める場所も確保できたしね。それと、アヤ、ナミ、チエ…ありがとう……翼竜の銀嶺に怪魚を食べさせられたし、美味しそうなエビやカニや貝をありがとう」
和也のお礼の言葉に、地の精霊も水の精霊も嬉しそうに跳ね回る。
その光景を見て苦笑している風と火の精霊にも、和也は声をかける。
「エン、カカ、ありがとう。それに、ハナ、オト、カオ、怪魚を倒すときとぉーっても助かったよ。ありがとう」
和也は、使役した?精霊達に、お礼を言った。
その間に、心の中で、銀嶺と会話していた。
銀嶺、水の精霊達が持って来た、エビやカニや貝は、生でボクが食べても大丈夫かな?
大丈夫です
ますたーは、私と同化しているので、あらゆる毒に耐性があります
へぇーそうなんだぁー……毒の他に……寄生虫は?
ここに持ってこられたモノ達には、他の命の気配はありません
ですから、ますたーの言う寄生虫はいないと思います
大丈夫かなぁ……卵のままだったら……
卵でも、命の気配はありますので……大丈夫です
そう、良かったぁー……
銀嶺とのやりとりで安心した和也は、エビやカニや貝の前に立ち手を合わせて言う。
「いただきます」
そして、和也は、空腹のあまり大好きな伊勢えびモドキを手に取り、ぶちっと引き裂いて、再度言う。
「う~ん、美味しそう……いただきます」
その言葉とほぼ同時に、和也は伊勢えびもどきをバクッと食べ始めた。
銀嶺や精霊達は、和也の野生的なたべっぷりに、かなりの衝撃を受けた。