32★女神達の加護?
和也は、出来上がった命の焔石を確認する。
開いてみた手のひらには、小さなルビー?というより、ガーネットのような紅い石が、幾つも転がっていた。
ふぅ~ん、大きさのバラツキは、多少ありますね。
色合いも、同じ紅といっても、微妙に違いはあるんですね。
でも、身体の大きさを考えたら、かなぁ~り小さいような?
まっ、ボクの創った血石とくらべても、なんの意味もないですが………。
流石に、命の焔を封じ込めた石は、小さいなぁ…………。
うぅ~ん…………こんな小さいモノを、奉げても…………。
いや、一応……約束したんだから…………。
そういう判断は、女神様にお任せしましょう。
とりあえず、お礼の言葉を言いながら、空中に投げてみようかな?
あっそうだ、命の焔をむしった怪魚は…………。
その存在を、忘れていた和也は、改めて地面に倒れている怪魚を確認した。
銛でトドメを刺しても、元気にうごめいていた怪魚達は、すべて静かに大地に横たわっていた。
そこには、命の気配はまったくなかった。
静かに、そこに存在するだけの怪魚を和也は見た。
その光景は、築地市場に、並ぶ冷凍マグロの群れのようだった。
うっわぁー調子にのって獲りすぎちゃった…………。
それが、魚の群れを見た時の和也の率直な感想だった。
そして、累々と転がる怪魚をどうしようかと悩む。
うぅ~ん、処理(塩漬け、日干しなど)をするのも、面倒な感じの量だなぁ~。
だからって、横着して、地の精霊達になんて頼んだら、絶対に、ろくなことしないに決まってるし…………。
あうぅぅ…どうしようかなぁ~…………後悔って確かに、先に立たずですね。
はふっと嘆息し、和也は軽く頭を振る。
風の精霊の、空中浮遊(空歩=クウホ)と空中の足場(空礎=クウソ)と体重の増減(空量=カリョウ)が、すっごく使いやすかったから…………。
まるで、ブリー○の死神みたいな動きが出来たから…………。
怪魚を〈虚〉に見立ててついやっちゃった……。
でも、ボク…シューティング系はあまり好きじゃありません。
緋崎くんとか、浅黄くんは好きみたいですけどね…………。
じゃなくて…………どんな方法で〆ても、死は平等って感じですね。
その結果は、何時もボクが見ている光景になります。
そう、鮮魚店やスーパーなどで、売っている丸魚となんら変わらないですね。
綺麗さっぱりと、生命が消え去っている感じです。
あっ…そうだ……ボクに、命を奪われた怨みつらみがあるか、光の精霊と闇の精霊に聞いてみよう。
……いやいや…お礼を言うのが……先でした。
この場合、大地に下りてから、奉げた方が良いですね。
やっぱり、失礼にならないようにしないとね。
何事も、形式というモノは大事です。
和也は、右手にミスリル銀の銛を持ち、左手に命の焔石を握ったまま、空中の足場から飛び降りた。
ストッとほとんど音も立てずにオアシスの縁に降りた和也は、右手の銛を大地に突き刺す。
そして、心を落ち着ける為に、和也は1つ深呼吸をした。
それから、1度左手を心臓の前に置き、天を仰ぎ見て深々と一礼する。
「 すべての魂を抱きとめる 麗しの冥府の女神様よ
貴女の助力によりて 現われ 怪魚の命の焔石を
貴女と貴女の眷属に…… ご助力のお礼として奉げん
残りは 命の源の水を支配する水の女神と その眷属
及び 八百万の神々に 奉げん 」
お礼の言葉と共に、左手を天に向けて、和也はフリースローの要領で、命の焔石を投げた。
すると、和也の耳に、女神達の笑いさざめく声が聞こえた。
『 神獣である翼竜を身の内におさめ
強大な霊力を持ち 清く正しい心を持ちし少年よ
約定を護り 命の焔石を我に奉げたそなたに
我の加護を与えん 』
『 我が愛しの眷属に 真名を与えしそなたに
我が加護を与えん 』
『 かかわりを持たぬ我等に 命の焔石を奉げしそなたに
我が加護を与えん 』
『 …………我が加護を………… 』
神々より幾つもの加護を与えられた和也は、その重さに一瞬ヒザをついた。
それほどに、神々の加護は重たかったのである。
物理的な重さを持つほどに…………。
なお、和也の耳(意識)に、ちゃんと声が届いたのは、冥府の女神と水の女神の声だけだったのは言うまでもない。
かかわりの無い神々の声は、人間のいる現世?に対して、高次元の神界?よりの声なので、意識にほとんど届かない……だから、認識できないのである。
雑音としか認識できない声を、あっさりと無視して、和也は2人の女神にお礼の言葉を考える。
うぅ~ん……女神様の加護?
いったい何がお徳になるんでしょうか?
ボクには、想像できません。
でも、お礼は言っておきましょう。
特に、冥府の女神様と水の女神様の御声はしっかり聞こえちゃったし…………。
他にも、言葉としては認識できなかったけど気配はありました…………たぶん。
勿論、八百万の神々も一応入れておいたほうが懸命ですよね。
祟られるのはゴメンです。
逆恨みっていうモノもありますし…………。
なかには、たたりが凄すぎて、神格化したお方も居るはずですから…………。
学問の神様、太宰府天満宮の菅原道真って存在もいますしねぇ…………。
藤田主任のチームだったら、加護って言いながら、邪魔にしかならないって、設定もありだと思いますし…………。
ここは、無難に、形式的なお礼を言うのが1番です。
触らぬ神に祟り無しって言葉もありますから………。
冷静な表情の中で、和也はかなぁ~り辛らつなことを考えていた。
せっかく、ヒザをついているんだから…………。
このままお礼の言葉を言いましょう。
しっかし、神様の力って、凄いモノがありますねぇ~。
ボクに対する好意の現われの加護でも、重も過ぎるんですからねぇ……。
気に入られなかったら…………。
……でも、精霊達が、人間達に捕まって使役されるのを防ぐ力は無かったような?
いったい、どういう設定なんでしょう。
神々の黄昏って感じですか?
それって、終わりの近い世界のような………。
でも、RPGの定番って言えばそれまでです。
ここは、レベルアップを狙って、媚ておきましょう。