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029★精霊の常識と和也の常識の相違1



 和也は、ミスリル銀で出来ている網を、魚を獲る投網として使えるように出来るのか?とチバナに聞くか悩んでいた。


 これで、魚を獲る為のアイテムとして、銛と網が手にはいりました。

 でも、網には、おもりがついていないから、水中に投げることが出来ない。

 おもりが無いと、狙ったところに投げられないし、思うように広がらないですよねぇ………このままの網じゃ、ただ、水面に浮かぶだけだから…………。


 どういう風に、魚を獲るための投網の説明をしたら良いのでしょう…………。


 とりあえず、改めて、投網という言葉で、精霊達に聞いてみよう。

 戦闘で、身分の高い者を生け捕りにする時にも、投網を使うはずだから…………。

 そのシーンを見ていた可能性もあるし…………。

 たぶん……きっと……そうだったら…いいなぁ………。


 心の中で色々と葛藤していた和也だか、お魚が食べたい一心で精霊達に問い掛ける。


 「人間達が、戦争している時に、敵を網で捕まえるところを見たことあるかな?」


 和也の問い掛けに、楽しそうな答えが返る。


 『『『はぁ~いありますぅ』』』


 『それって…ますたー……にとって…意味があるの?』


 ミスリルの網を握ったまま、和也は頷く。


 「あるよ」


 『どんな?』


 問い返しに、和也はミスリルの網を見下ろして考えていたことを問いかけのカタチで聞く。


 「その時、人間が使っていた網には、おもりがついていたはずです」


 和也の言葉に、チバナはコクコクと頷いて答える。


 『うん……おもりがいくつもついて…いたよ…』


 そのチバナとのやりとりで、和也が何を望んでいるか理解したエンキは、首を大きくかしげながら問い掛ける。


 『ますたーは、人間よりはるかに凶暴な魚を、網でとるんですか?』


 ぅん? 人間よりはるかに凶暴? 

 いや、美味しいマグロやカジキだってかなり危険なんですから…………。


 ちょっと疑問を持ちつつも、お魚が食べたい和也は頷く。


 「そう、魚を獲る為に、おもりのついた網が必要なんだ」


 その和也の言葉に、チバナはパァーっと瞳を輝かせで言う。

 

 『じゃ、チカが作って来るね』


 嬉しそうに言うチバナに、和也は慌てて声を掛ける。


 「いや、ここに有る網に、おもりを…………」


 すぐにでも、投網でお魚を獲って食べたい和也の気持ちをよそに、チバナは自分が作った網の獲物(標的)が、地上の鳥類や哺乳類だったことを告げる。


 『ますたー…ここに…ある…網は…樹と樹の間とか樹と岩の間に張る為の網だから……投げ網用に……作ってないのぉ…………』


 チバナの言葉に、和也は一瞬考えてしまう。


 「……えっ?……」


 和也が、次の言葉を口にする前に、チバナはキラキラした瞳で嬉しそうに宣言する。


 『じゃぁー作りに行くねぇ~…………』


 チバナの宣言に、慌てて和也は、新しいのはイイから、この手に持ったミスリル銀の網におもりをと言おう口を開いた。


 「いゃ…だから………」


 そう、口に出来た時には、既にチバナは地中へと消えていた。

 和也は、ミスリル銀の網に視線を落とし、ハフッと嘆息する。


 別に、新しいのじゃなくても………これに、おもりさえ付ければ、じゅうぶん使えると思ったのになぁ……………。


 そんな和也を不憫に思ったエンキは、地の精霊の特質を告げる。


 『ますたー……最初っから……正確に欲しいモノを言わないと…地の精霊は…モノを作るコトが楽しいから……いくらでも作る……まして、大好きなますたーの為に、何でも作りたいって思っているんだから…………』


 手の中のミスリル銀の網に視線を落として嘆息していた和也は、顔をあげてエンキを振り返る。


 「……エン…それって…………」


 うふふ……エンから……得がたい……突っ込みが………。

 もしかして、エンは、男?だから、ボクの気持ちがわかるかも?

 チカが帰って来るのを待つより、銛があるんだから…………。

 ごはんとして、お魚や貝、エビ、カニとかを獲ろう。

 うん……そうしよう……。


 はぁ~………なんだか、お腹がとても空きました…………。

 ここはもう……ちょっと…ズルしてみようかな?


 そうだ、ナミ達に頼んで、人間が食べても大丈夫な貝とかを採ってもらおう。

 お魚は、ボクの居る場所(湖の縁)に追い込んでもらおう。


 だって、なんか無性にお腹がすっごく空いてしょうがないんです。


 本当は、水の精霊に追い込み漁の片棒を担がせるのは…………。

 でも、主義主張でお腹がふくれないって…………ことにしよう。

 お魚とかが手に入ったら、火を使って料理しよう。

 そして、さっき、飲むのを諦めたデーツのお酒を…………。

 未成年だってことは、おいて………。


 よし、やることは決まった。

 ふぁいとぉーボク……。


 なお、和也の理性を食い破ったのは、銀嶺の食欲であったのは確かなことだった。

 銀嶺を身の内に宿した分、消費エネルギーが増えているのだ。


 何か(人は人の力のみで生きるべきであるという主義など)を捨てて、別の何か(背に腹はかえられない=生存本能に従う)を手にした和也は、すっきりとした表情?で言う。


 「ナミ、アヤ、チエ……来て…欲しい…」


 湖面で遊びながら、和也からの呼びかけを待っていた3人は嬉々として答える。


 『『『はぁ~い…ますたー』』』


 和也の呼びかけに応え、水の精霊達は、ポンッと音がしそうな勢いで現れる。


 そして、和也に、嬉しそうに問い掛ける。


 『『『ますたー…ナミ…アヤ…チエ…に、お仕事ぉ~………』』』


 にこにこという擬音がつきそうなナミ達に、和也はちょっと引き気味になりながらも、その問いに応える。


 「うん……さっきも聞いたけど、ボクが食べられるお魚とか、貝やエビやカニを教えて欲しいんだ」


 『ナミが、貝を色々と持ってくるねぇ』


 『じゃ、アヤは、エビとカニを持ってくるぅ』


 『えぇ~とぉ~チエは、人間達が、とぉっても美味しいし、滋養強壮にもなるしで、争って欲しがるお魚を持ってくるよぉ………』


 地の精霊3人が、嬉々としてお仕事(和也のお願い)を楽しそうにしていたのを内心でイジイジしながら見ていただけに…………。

 水の精霊3人は、嬉々として勝手な解釈をして、湖の水中に飛び込む。


 「うっ……いや……あの………」








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