028★地の精霊のアイテム
和也が聞いたら、はぁ~なんですとぉ~と言うのは確実なコトを言っていた。
が、とうの和也は、演武に夢中だったので…………。
精霊達の会話は耳に入らなかった。
1通りの型を終えて、ミスリルの銛を砂にサクッと刺した和也に、チバナがニコニコしながら、投網を出す。
チバナは、和也の無意識の独り言をしっかりと聞いていたのだ。
やはり、人間の生活に精通しているしっかり者のチバナであった。
『それと…ね……網も……ミスリル銀の網…金の網…銀の網…鉄の網…青銅の網…あとね……おとっときの…ハガネヅタ蜘蛛の糸で出来てる…網もあるのぉ~……』
ミスリル銀も金も銀も鉄や青銅もわかりますが、ハガネヅタ蜘蛛だけ、どんなモノなのかぜんぜんわかりませんね。
んぅ~………でも、とにかく軽くて丈夫なのを選びましょう。
「どれが1番軽くて丈夫なのかな?」
和也の質問に、チバナは得意げに1つの網玉を掲げる。
『ハガネヅタ蜘蛛の網』
チバナが掲げたメタリックカラーの網玉を見ながら、和也は首を傾げて聞く。
「それって、水の中でも使える?」
和也の質問の意図がわからず、今度はチバナが首を傾げる。
『ますたー………水の中で…何するの?』
チバナの質問に、和也は内心で苦笑いする。
あははは………やっぱり、根本的なところでは…意思疎通が通りきっていませんね。
投網っていう概念が無いのかな?
それとも、ボクの説明不足かな?
「チカちゃんが作ってくれた投網で、水中のお魚を獲るんです」
『水の中かぁー……お魚と戦うんだったら……ちょっと微妙かもぉ…………』
チバナは掲げたハガネヅタ蜘蛛の網玉を胸の前に降ろし、首を傾げる。
そんなチバナに、和也は問い掛ける。
「それじゃ、水に1番強いのは?」
和也の問い掛けに、別の網玉を掲げて、チバナが答える。
『これ………ミスリル銀の網』
チバナの答えに頷き、和也はにっこりと笑う。
「そう…だったら…ミスリルの網をもらおうかな……う~んとハガネヅタ蜘蛛の網ももらっておこう……水中以外だったら…ミスリル銀より丈夫なんでしょ?…」
和也は、チバナががっくりしないように、ミスリル銀の網玉の他に、推奨してくれたハガネヅタ蜘蛛の網玉もと言う。
チバナは嬉しそうに、和也にハガネヅタ蜘蛛の網玉を手渡す。
『うん…とぉ~っても……軽くて丈夫なの…丸めると手のひらにツルンって入っちゃうぐらい…持ち運びには便利だよぉ~……ポッケに入るもん…』
ハガネヅタ蜘蛛の網玉を受け取りながら、和也はミスリル銀の網玉は?と、聞く。
「ミスリル銀の網は?」
和也の質問に、チバナは袋に入ったミスリル銀の網玉を掲げる。
『この袋に入ってるのぉ~…………』
「小玉スイカぐらいかぁ~…持って歩きやすいですね」
チバナが掲げる袋を見て、和也は頷く。
『ミスリル銀は、軽くて柔らかくて丈夫なの……はい……持ってみて』
和也は、差し出された袋を受け取る。
「へぇー……これが…ミスリル銀の網…思っていたより…軽いですねぇ………」
受け取ったミスリル銀の網を袋から出して、和也はパラリと広げる。
へぇ~…………ピアノ糸と銀糸が合わさったような色合いですねぇ…………。
ちょっと引っ張って…………。
あっ……思っていたより……柔らかく伸びる感じがする。
ミスリル銀の特性プラス地の精霊の編み方による柔軟性かな?
広げるとかなり大きくなりますねぇ~……。
ふむ、縮めてみましょうか?
おおぉークシャクシャにするとさっきの大きさになる。
もう1度広げてぇ……すっごい……ぜんぜん…絡まらない……そのまま広がる…。
流石、地の精霊の作成した網……。
ここまでの出来栄えだと……魔法のよう……です。
これよりすごいハガネヅタ蜘蛛の網って?
『それでぇー…ミスリル銀の網より凄いのが、ハガネヅタ蜘蛛の網なの……ミスリルより丈夫で軽いしぃ~……すごぉーく伸びるのぉ…ミスリル銀の10倍くらいかな? マスター……広げてみて……』
チバナの言葉に頷き、和也はハガネヅタ蜘蛛の糸で出来た網玉を広げてみた。
見た目は、水滴が着いた蜘蛛の糸って感じですね?
水滴がキラキラと光って綺麗です。
糸も、透明なテグス糸をもっと細くして、淡い光を閉じ込めたような?
これが、ミスリル銀よりも丈夫なんですか?
ハガネヅタ蜘蛛の網の強度に、疑問をもった和也は、ミスリル銀の網の時よりもはるかに強く引っ張ってみた。
和也の力に反発するコトなく、ハガネヅタもの網は、つるつると伸びていく。
何の反発も無い…………。
いったい、どのくらい伸びるんだろう?
これで、ミスリル銀の網より強度があるんでしょうか?
う~ん……わからないなぁ?
和也は、首を傾げながら、ハガネヅタ蜘蛛の網を持ってデーツに近付く。
そして、デーツの樹の根元の方に、ハガネヅタ蜘蛛の網を巻きつける。
ボクが、引っ張っても、強度を測ることにならない様な?気がする。
ここは、エンに引っ張ってもらおう。
うん……そうしよう。
だって、ミスリル銀で出来たモノって、ゲームの定番なんだもん。
丈夫なのは当たり前ですしねぇ…………。
初めて聞いた、ハガネヅタ蜘蛛の糸で、出来た網の強度の方が、気になります。
でも、蜘蛛の糸って、現代の研究によると、自然物の中では1番強度があるんですよねぇ~…………。
確か、太さに対しての強度が1番だった筈ですし…………。
それを考えると、かなりの強度があってもおかしくないんですけどぉ?
見かけが、こんなに、綺麗だと…………。
やっぱり確かめよう。
それに、エンの力も見たいしね……くすくす。
精霊達が、自分に注目していることに、気が付かない和也は、クルリッと振り返り火の精霊のエンキを見詰めて言う。
「エン、この網を引っ張ってくれないか?」
その、なぁーんにも考えていないことがわかる和也の命令に、エンキは戸惑いつつも頷く。
『はい…ますたー』
かなり妙な表情で答えるエンキに、和也は首を傾げる。
あれ? ボク、なにか妙ことでも言ったかなぁ?
無意識に小首を傾げる和也に、チバナが話し掛ける。
『ますたー……エンが……引っ張ったら…網目が……伸びきっちゃうよぉ~…使い物にならなくなっちゃう』
「えっ……そうなの?……」
『え~と…ますたー…人間が飼っている……極上の馬が100頭で引っ張っても、伸びないくらい丈夫なのが………ハガネヅタ蜘蛛の糸なの…』
ふぅ~ん……馬が100頭……って、確か競馬用のサラブレッドって、1頭500キロ前後でしたよねぇ………と、いうと50トンぐらい? かな?
かなぁ~り丈夫ということですね。
そして、エンの力は、それ以上ってことですね…………なるほど。
「へぇ~そうなんですか………では…投網として使用しても大丈夫ですね」
コクコクと納得して頷く和也に、チバナは言葉を付け足す。
『水にはちょっと弱いからぁ~ミスリルのがイイですぅ~』
「ミスリルだとどのくらい丈夫なの?」
『使い方によるけどぉ~馬10頭で引っ張っても型崩れしないです』
ふむ、10頭ですか………5トンぐらいということですね………。
ここで、和也が考えているのは、現在の競馬用のサラブレットで計算していたが、実際の馬は、実はもっとかなり大きくて、凶暴だったりする。