026★精霊たちと契約8
和也が、内心でドキドキしながら、火柱を見ていると…………。
その中から、明らかに大きさの違う二対の腕が出て来た。
腕には、炎がゆらゆらと巻きついて、残り火の暗い赤から灼熱の赤を超えた、白色の炎が時々湧き上がっていたりする。
それを見ていると、和也はしみじみファンタジーの世界だなぁーと感心してしまうのだった。
腕にまとわりついている炎だけでも、火の精霊というより、イーフリートというイメージですね。
でも、こんなに近いのに、不思議と全然熱くないのは…………。
もしかして、水の精霊さんの加護? なんでしょうか?
とりあえず、どう対応するかを考える為にも、早く炎から出て欲しいです。
姿や表情が見れれば、相手の気持ちもなんとなく判るかもしれませんしね。
そんな、和也の無言の要求にまるで応えるかのように、火の精霊が2人が、炎から出て来た。
一見すると、男女の精霊に見えた。
ふむ、見た目てきには、男性型?は、精霊のわりに、ごっつい感じだから、イーフリートって、イメージにぴったりですねぇ…………。
でも、女性型?は、華やかな美人だから、サラマンディアってことにしようかな?
さて、どんなことを口にするのかな?
何か要求する為に来た?
でも、ボクは、彼ら?を召還していないから…………。
ここに居る精霊達に、何か用事があったのかなぁ?
和也の視線の先で、女性型の火の精霊が、にっこりと笑って話しだす。
『やっと……呼んでくれた……うれしい。わたしも真名と愛称が欲しい』
その声は、和也の耳に 心地よい女性らしい明朗な声だった。
女性型の言葉に続いて、男性型の火の精霊もコクコクしながら低い響く声で言う。
『おれも……真名と…愛称が…欲しい』
どちらも、姿に見合った声ですねえ…………って、えっ?
1対の火の精霊の要求に、驚いた和也の目は点になった。
はぁ~なんですとぉぉ~…………。
どぉーして…呼び出してもいない………火の精霊と契約するんですか?
血石も、与えていないはずなのに?
血石を創ったとき、火の精霊なんて…………居なかったはず?
それとも、ボクの目に映らなかっただけで、あの時、火の精霊も居たのかな?
とりあえず、聞いてみますか…………。
ちょっと……いや……かなり……怖いんですけどぉ……。
特に、イーフリートさんは…………。
内心は、ビクビクしていた和也だが、表情はいつもと同じ冷静沈着だった。
「ボクは、貴方たちを呼んでいましたか?」
『呼んでないわ』
『呼ばれていないぞ』
「じゃ…どうして…いま……現れたんですか?」
『あなたが、血石を創った時、わたしも居たの…………でも、焚き火とかの形代が無くて、出現できなかったの…………』
『おれも居たけど、火の気がないところには出現できなくてな…………あんなに…丁寧に……いにしえの作法に則って、われら精霊を呼ぶものは居ないから…………』
ふむ、火の精霊さんは、人前などに出現するのに、なにか制約がかかっているようですね…………力が強いセイでしょうか?
じゃなくて、いにしえの法則って?
和也は疑問を解消するために、今、疑問に思ったことを問い掛けてみる。
「えっ……あの…方法って…そんなに古いんですか?」
その問い掛けに、男性型のイーフリートが答える。
『古い……はっきり言えば……おれの一族でも、その契約をしたモノは、起きているモノは居ない』
ぅん? 起きているいるモノ? じゃあ、寝ているってコトでしょうか?
冬眠みたいな状態とか…………じゃなくて、なぜ今現れたんでしょう?
「はぁ?……だったら……忘れた契約なんでしょ?」
『そう……どうしても……どんな人間なのか見てみたかったの……そしたら……大量の血石を、盛大にバラ撒いていたから…………』
えっとぉ~………そんなに、盛大にバラ撒きましたか?
もしかして、血石創りの作法が間違っていたとか………。
でも、銀嶺の中の記憶を考えると…………はて?
『すべての精霊と契約する気があると思って、おれ達も来たんだ』
えっ? もしかして、血石をバラ撒いたから…………たら~り…………。
…………って、よく見たら、2人とも、しっかり血石握ってるし…………。
その事実に気付いた和也は、思わず内心で脂汗を流す。
うわぁぁぁぁ~…………盛大に、勘違い(期待)させちゃったのボク………。
内心で焦る和也をよそに、火の精霊は嬉しそうに陶酔気味に言う。
『全員、真名と愛称を与え終わったから、火の気の焚き火を焚いてくれたんでしょ…………あたし達を呼ぶ為に…………』
えっとぉ~…………そういうコトになってしまうんですか?
あぁ~もぉ~…しょうがないですね………彼らだけ、真名や愛称を与えてあげなかったら、不公平になってしまいますよね。
なにごとも、バランス…………調和というモノは大事です。
どうせ、名前を付けるだけだし…………。
まっポ○モンと違って、種類が解かっているから楽ですしね。
ここは、突っ込まれると答えに困りますから、にっこりと笑って、さりげなく真名とか愛称のほうに持って行ってしまいましょう。
「うん………そうだね…キミたちの炎の精霊の真名と愛称を考えるから、ちょっと待ってね」
さて、そうは言ったものの、どんな名前にしましょうか?
男性は、イーフリートのイメージ……炎の鬼で、エンキで愛称はエンでいっか。
女性は、サラマンディアって言うより……炎の香でホノカで愛称は、カカ。
うん、こんな感じでイイよね。
なんか雑になってきたなぁー………我ながら…………。
でも、これで、すべての精霊はゲットしたから…………。
名前を考えるのもおしまいです……たぶん、きっとね。
……あっ……でも…………あの時、木陰にいた精霊さんは?
いったい誰? ……なんの……精霊さんなのかな?
名前を付け終わったら、全部の精霊さんに聞いてみよう。
和也は、一つ深呼吸をして心を落ち着ける。
そして、炎の精霊に向き直り、にっこり笑って言う。
内心では、これで名付けは最後だ、ガンバレ、ボクと呟いていたのだが…………。
相変わらず、冷静な表情の和也であった。