025★精霊たちと契約7
そして、3人は声をハモらせながら言う。
『『『ここに、人間が来たのは…………ますたーが、初めてなんだからぁ~………無ぅ~理ぃ~…………』』』
いままで黙って和也達の周りをふわふわと飛びながら、興味津々で聞いていた風の精霊の1人、カオンが訊く。
『ねぇ~…………翼竜さんは? 知ってるのぉ?』
銀嶺の耳に、混乱? 困惑? している精霊達の声は、確かに届いていた。
が、銀嶺の血の記憶を探っても、和也の言葉は理解不能のモノが多かった。
不確かな知識を口にするコトを嫌った銀嶺は、何も言わずただ黙っていた。
〔…………〕
そんな中、自分の気持ちに手いっぱいだった和也は、ようやく精霊達が、泣きそうな表情で会話していることに気が付いて、首を傾げる。
さっきまで、あんなに楽しそうにしていたのに?
どうして、泣きそうな顔しているんでしょう?
じゃなくて、まず、火をおこす道具を作ってもらいましょうか?
この場合は、火打石のセットですよねぇ~…………。
片方に鉄片がついていて、もう片方は硬い石だったような…?
ふむ、ここは、ボクが、下手に火打石の説明して作らせるより、火をおこす道具を用意して…………って、頼んだほうが簡単でしょうねぇ…………たぶん。
こちらの人間達だって、火は日常的に使っているでしょうから…………。
思考がまとまったので、和也は地の精霊達に声を掛ける。
「ちょっと…頼みごとしても……イイかな?…」
『はい。マスター……何を……すればイイの?』
「火をおこしたいから……火打石が欲しいんだ……出来る?」
『……えぇ~……火打石だけぇ~』
「………料理?を作るのにも必要だから…………日が落ちてきたら暖をとる必要があるから、欲しいんだ…」
『だったら、料理用のナベとかナイフも必要だよね……メグ…が…作るね…それと金の食器セットも…じゃ……ちょっとお家に帰って来るね』
『砂漠で、寝るんだったら天幕や絨毯も必要だよねぇ……砂漠のキャラバンが…欲しがる装備一式を…お家で作って来るねぇ……うふふ…お仕事…』
そう言って、和也が慌てて答える前に、地の精霊2人はシュッと消えてしまったのだった。
「いや……ボクが…欲しいのは…火打石のセットなんだけどぉぉぉぉ…………」
うふふふ……やっぱり……ファンタジーの定説通り精霊って、話しを聞かない。
勝手な行動しかとらない…………。
人間は、人間以外と係わるのは…あまり良いコトではないって言うけど………。
確かに、イイコトじゃ無いなぁー…………。
使い慣れれば、たぶん便利だとは思うけど…………。
何時になったら、意思疎通が、きちんと会話で、成立するのかな?
地の精霊は、3人とも使った……いや……使役した状態だから…………。
待つしかないなぁ……帰ってくるのを…………。
和也が暗ぁ~い思考に入っていると…………。
神様が和也を哀れんだのか?
先刻、1番に消えたチバナが、デーツで出来たお酒を、たぁ~っぷり持って帰って来た。
『ますたー……お酒…出来ましたぁ…』
自分を見詰めて嬉しそうに言うチバナに、和也はちょっと引きつった笑顔で答える。
えっ………もう? どうやって?
いや、精霊属は嘘とか言えないはずだから…………。
きっと、人間が作る方法とは違う、特殊製法なのかも…………。
「ありがとう……早かったね……」
和也のねぎらいの入った言葉に、チバナは嬉しそうに言う。
『うん、あのね、ちょっと時の流れの速い場所で造ったの……ちゃ~ぁんと…味見もしたから…甘くて美味しいの』
うふふふふ…………そうだった、コレはファンタジー系のRPGのクリエイティブなアルバイトだったっけ…………。
ちょっと? 時の流れの速い場所なんて、お約束の1つかな?
このあと、いくつ隠れたお約束が出るやら…………。
じゃなくて、ここはきちんとお礼を言っておかないとね。
「ほんと……嬉しいな…ありがとう…」
『ますたー……飲んで……』
えっとぉー………どんな味が、好奇心はありますが………すきっ腹の状態で飲んだりしたら……たら………まずいですよね、やっぱり。
ここは、話しをお酒からズラそう。
「うん……でも……火をおこしてないし……火打石もね……」
和也の言葉に、チバナはにっこり笑って答える。
『火打ち石とぉ火種を入れたりする火壺もあるよぉ……はい……ますたー』
ポポンと出現したそれらを見て、和也はチバナの気配りに心底関心する。
ふむ、どうやらチバナは要領の良い、気が利くタイプらしいですね。
とても、たすかります。
「ありがとう……助かるよ……」
『他に必要なモノは……なぁ~に?……』
チバナに問われ、和也は欲しいと思ったモノを口にしてみる。
「銛と網かな…」
人間の生活をちょくちょく覗いていたチバナは、和也の欲しいモノが理解できたので、コクッと頷いて可愛らしく手を上げて言う。
『はい、作りにいくねぇー…………』
和也は、ここで、地の精霊達が、理解出来るモノを頼めば良いと理解したのだった。
うふふふふ…………ドラ○エだったら、チャッチララァ~という音と共に、和也の精霊使いとしてのレベルが1上がったと表示される……という感じですね。
じゃなくて、現実逃避しても始まりませんよね。
このあたりに、落ちているデーツの枯れた葉っぱをちょっと集めて…………。
これなんかかなり大きいですねぇー。
ちょっと、折らないと焚き火用にはなりませんね。
以外と硬いです………でも……ちゃっちゃっと折って……火を着ける。
じゃないと、チホとメグが帰って来て…………。
ろくでもないコトになりそうだから…………。
ファイトォー……ガンバレ……ボク。
内心でブツブツと言いながら、和也はデーツの枯れた葉っぱやデーツの樹皮をセッセと集めた。
そう、焚き火用にする為に…………。
火をおこす為に、風除けの石をちょっと組み、その中央に集めた枯れ葉や乾いた樹皮、枝などを重ねて小山を作り上げた。
そして、和也は、たった今、手に入れた火打ち石を軽く打ち合わせてみた。
カッチカチという音とともに、火花が散り枯葉に燃え移る。
すると、本来ならポゥーと燃えているの?となるはずだった。
が、ゴォーという音ともに、何故か火柱が立った。
はぁ~…なんでぇ~………火柱が…………。
この勢いでは、水の精霊達に消してもらう必要が…………。
和也が、炎の勢いに困惑していると…………。
炎の中から、ニョイッと腕が出て来た。
えっとぉ~…もしかして……火の…精霊……?
でも、ボクは、呼びかけていない。
どうしたら良いんでしょう。
とりあえず……見て……ましょうか?
いざとなったら、ボクの契約した水の精霊が、なんとかしてくれるでしょう。