023★精霊たちと契約5
『でも、ますたーだからぁ…………』
『だねぇ………』
『だって、契約は済んでるしぃ………』
3人の地の精霊のセリフに、他の精霊達もにこにこと極上の笑顔で頷いていた。
そして、和也の中にちゃっかりと巣食った、銀嶺も笑っていたことは言うまでも無い。
和也は地の精霊達のセリフにズズゥーンと落ち込み、黄昏ていた。
あははは………ボクって……バカ……かも…………。
そうだよねぇ…………。
翼竜に乗って、空を飛ぶって選択肢もあったよ……。
ファイファ○も、ドラ○エも空を飛んで旅するって……確かにあったよ…………。
落ち込む和也を知らぬげに、精霊達は真名と愛称をもらい、血石をもらって契約出来たことに喜び踊り狂っていた。
いや……でも、そういうのって、ある程度、イベントをクリアしてからだよね……………。
こんな初日に、それをしたら…………。
どんなしっぺ返しが来るか…………。
ふっ………ボクって、小心者だなぁ………。
われながら…。
でも、ボクは、自分の能力以上のことはしないって心に決めているんだ。
デビルサ○ナーで、悪魔合体して、メチャ強いの出現しちゃって…………えらい、扱いに苦労したっけ…………。
最近じゃ、まだ、学生だってぇーのに、すっごい綺麗な日本刀に魅せられて、前金入れちゃったし…………。
あぁ~……借金が重い………。
でも、どうしても、あの波紋が水面に浮かぶ三日月って感じの、国宝三日月に似ているあの剣が欲しかった。
やっぱ、流石に値段高かった…………。
でも、握った時、手にしっくり来て…………。
後先考えずに『買います』って、叫んじゃったんだよなぁ…………。
勢いで、持っていたお金を予約金として入れちゃって………。
そしたら、店主のおじさんも、ノリが良くって…………。
『ヨシ、売ったぁー』って、答えてくれたんですよねぇ。
ケースに剣を戻して、ガラスに売約済みって貼ってくれたんですよねぇー。
おかげで、進むっきゃないっ(支払う)て思いました。
商売上手なおじさんでした。
後で、おじさんに聞いたら、ボクのお祖父ちゃんが贔屓していた店だったから…………。
高校生のボクでも、大丈夫って思ったって…………。
完債したらすぐに『携帯できるように、手続きしとくよ』って言ってくれたし…………。
このさい、プライドをポイっして、お祖父ちゃんに残金払ってもらおう。
で、後から、バイト代をお祖父ちゃんに払おう。
そうしよう。
なんか、すっごい疲れちゃったし…………。
じゃなくて、人は、自分の能力以上のことをしちゃいけない。
買い物でも、ゲームでも、バスケの試合でも…………。
無理すると、後で、ものすごぉーい負荷があるんだよ。
あの試合の後、ヒザが笑って…………。
歩けなくなって…………筋肉痛で悶絶したっけ。
そんなボクを可愛いって、緑川君にお姫様抱っこされて運ばれたんだよなぁ…………。
和也は中学生の時の苦い思い出に、遠い瞳になる。
そして、目の前の精霊達の存在をひととき忘れる。
ひとは、これを逃避という。
はぁ~……あの時、お姫様抱っこしたのが、浅黄君だけなら、また、ボクで遊んでるって思えたのに…………。
他のメンバーに、スマホでその時の写真撮られて…………。
写メールで送られて…………。
マネージャーのサクラちゃんに『撮り貯めていたのぉーっ』て、ボクのお姫様抱っこ写真を見せられて…………。
あの時、妙なノリになって…………。
全国優勝したからって………なんで、ボクがお姫様抱っこをレギュラー全員にされなきゃならなかったんだ…………。
そりゃ………思うように動けなくなっていたけど…………。
女の子のサクラちゃんだっていたのに………。
じゃなくて、確かに、ボク、あの時かなり無理したセイで、軽くなっていたけど…………。
なんで、女の子のサクラちゃんにまで、ボクが、お姫様抱っこされなきゃならなかったんだぁ…………。
普通、逆でしょ…………。
じゃない…………くらい…………過去は無し。
和也は、頭をプルプルと振るって、現実逃避から戻る。
今は、なんとしても、レベルアップして、次のステージへ進まないとね…………。
気持ちに区切りをつけ、嘆息して、和也は精霊達へと視線を戻す。
嬉しそうに自分の周りで踊り狂っている精霊達を見ながら、さっきまで木陰にいた、幼女のような新緑色の精霊?の姿が見えないことに和也は首を傾げた。
あれ? あの子が居ない………。
どの種族か訊こうと思ったのに…………。
じゃなくて、精霊さん達を手に入れても、全然、ゲームの内容は進んでないから…………。
もしかして、ほとんど時間経過してない? とか?
あの説明の時、藤田主任は3時間って言っていたけど………。
いったい、外の時間はどれくらい経っているんでしょう?
人間って、体感が無いと時間感覚が、めちゃくちゃ早く感じるようになるって…………。
このゲームって、所詮は脳のシナプスに直接働きかけているんだから…………。
時間感覚が、おかしくなっても…………。
全然、おかしくないってコトですよねぇー…………。
確か、RPGで有名なドラ○エなんかも、主人公をグルグルさせて、昼と夜を交互に体感して、ゲームの新しいステージが出て来たってけ…………。
ちょっと、待って、もしかして…………。
ボクの新ステージって…………。
《バグ》ったセイで、精霊を全部集めるだったりして。
じゃなかったら、昼を越えて夜のステージとか…………。
これは………火の精霊が必要なのは、間違いないですねぇー。
この砂漠のオアシスで、必ずクリアしないといけないミッションってコトですねぇ…………。
なんと言っても、砂漠の夜は寒い。
火を焚く必要があります。
というか、か弱い現代人のボクには、体を温める必要があります。
それに、ケモノの類いを排除する為にも必要です。
今、ボクが持ってる食料は、デーツだけだから、調理する必要は無いけど…………。
何か獲物を獲ったら、調理する必要が出てきます。
火は絶対にひつようですね。
とは言っても、手に入れてませんから、火の精霊さんは、おいといて…………。
地の精霊さんに、火打石と調理器具でも作ってと頼んでおこうかな?
デーツというより、ナツメヤシの枯葉とか、樹皮とか………。
燃える材料を手に入れて、焚き火をしましょう。
RPGっていうより、サバイバルゲームになってしまいそうですねぇー…………。
コレって、ボクは、クリエイターって立場だったったけ。
じゃない、マジで、今、どれくらい時間経過してるのかな?
意識を現実?に戻した和也は、そこで、ゲーム内の日がかなり傾いているのを実感する。
おお……日が……落ちてきている。
砂漠で見る……夕日は……鮮やかで……綺麗ですね……。
あれ?……砂漠って……日が落ちると急激に温度が…下がって……下手すると……10℃を割ったりするって。
まずいです。
ボクのこの軽装では、完璧に風邪を引きますね。
体温維持するには、がっつり食べるしかない。
って、何を食べる?