022★精霊たちと契約4
歓涙するヒナタに、にっこりと笑って言う。
「それじゃ、ヒナちゃんは、さがっててくれるかな?」
『はぁ~い』
ヒナタは和也の言葉に従って、次に真名と愛称をもらう精霊のために場所を譲る。
少しさがったヒナタは、とても嬉しそうに、自分の名前を何度も確かめるように呟くのだった。
良かった………気に入ってくれたようですね。
それじゃ…次はやっぱり闇の精霊さんかな?
あっ……影作ってあげた方が良いかな?
なんとなく、直接の太陽光の下は苦手そうだもんね。
和也は太陽に背中を向け、自分の影に呼べるようにしてから、闇の精霊を呼ぶ。
「闇の精霊さん………ボクの影に入ってくれる?…………」
和也の気遣いに、闇の精霊は黒曜石のような双眸をうるうるさせながら、出現する。
『はい、マスター』
嬉々とした風情で、自分の影から出現し、見上げる闇の精霊に、和也は優しい口調で光の精霊の時と同様に告げる。
「キミの真名の字は月夜、真名はツクヨで、愛称はツキちゃん………どうかな?」
和也に告げられた瞬間、水や光の精霊同様、ツクヨもぽろぽろと涙を零れ落とす。
『嬉しいぃ~…わたしの名は…ツクヨ………マスター……』
そのツクヨの呟きとともに、足元の大地に、黒曜石よりもなお闇色に澄んだ涙石が盛大に転がる。
が、水や光の精霊の時同様に、和也は無視した。
そして、ツクヨに向かってにっこりと笑って言う。
「ツキちゃん………太陽光のしたは苦手でしょ………日が暮れるまで、木陰で休んでいてくれるかな?」
和也の言葉にコクコクして、ツクヨはふっとデーツ木の木陰へと戻った。
よし、これで光の精霊さんに闇の精霊さんの名付けは終わったな。
次は………風の精霊さんたち…………。
やっぱり、3人一緒の方がイイんだろうなぁ…………。
「それじゃ、次は風の精霊さんたち………ボクの前に来てくれるかな?」
『『『はぁぁ~い』』』
嬉しそうに、ふわりと来た3人に、和也は指差しながら言う。
「キミは、風花で真名をフウカ、愛称はハナちゃん。そして、キミは、風音で真名をカオン、愛称はオトちゃん。キミは、風香で、真名をフウキで、愛称は、カオちゃん………で、良いかな?」
和也の問い掛けに、やはり、はらはらと涙を流しながら、3人はコクコクする。
転がり落ちる涙は、まるでオパールのようであった…………が、和也は目もくれなかった。
よし、これで、あとは、地の精霊さんたちだけだ。
ファイト、ボク…そしたら、レベルアップ………の前に、何かごはんかな?
とりあえず、地の精霊さんたちも終わらせよう。
内心を綺麗に隠し、和也は地の精霊に笑いかける。
「待たせちゃってゴメンね」
和也に視線を向けられた、地の精霊3人は、まるで女子高生のようにきゃっきゃする。
『『『ますたぁ~……あたしたちの真名はぁ~?……』』』
3人は仲良しさんですねぇ~………。
はぁ~……これで、ここのイベントは終わりですよねぇ…………たぶん。
和也は、風の精霊の時と同じように、1人1人を指差しながら告げる。
「キミは、地華、真名はチバナ、愛称はチカちゃん。キミは地宝で、真名はチホウ、愛称はチホちゃん。キミは、地恵で、真名はチケイ、愛称はメグちゃん………で、良いかな?」
自分の名前を3人はかみ締める。
『あたしは、チバナ~………』
『わたしは、チホウ…………』
『アタシは、チケイ………』
勿論、その瞳からはコロコロと、宝石が転がり落ちる。
が、それを見て、和也は嘆息するだけだった。
嬉々としている3人に、和也はマジメな顔になって言う。
「地の精霊のキミたちを最後にしたのは、ボクに、黄金の装備や宝石の類いは、必要ないってことを言いたかったからなんだ………」
その言葉に、地の精霊達は、驚いて叫ぶ。
『えっえぇぇぇぇー』
『黄金いらないのぉー』
『宝石も必要ないのぉぉ』
『なんでぇー』
『せっかく、あたし達と契約したのにぃー』
『ますたぁー……アタシと契約した意味は?……』
『ますたー……人間らしくないよぉ……』
口々に叫ぶ地の精霊達に、和也は苦笑する。
こっちの世界の人間達ってば…………。
ほんとぉーにグリードなんだぁ…………。
って……このRPGゲームの人間って…………。
どういう設定なの?
本当に、日本人向けのゲームなのかな?
地の精霊を使って、すぐにお宝(黄金や宝石の類い)を手にしたら、RPGじゃないでしょ…………。
それとも、ボクが《バグ》っている存在だから?
なんか、イレギュラーだらけだなぁ…………。
和也が、微妙な表情で考え込んでいると精霊達は、口々に自分の言いたいコトを言い出す。
『なんかさぁ~………ますたーって……ぜんぜん人間らしくないよね?』
『うん……』
そんな中、チホウが小首を傾げてから、2人に向かって言う。
『あのねぇ~…あのねぇ~………そういえば、チホは見たんだよぉ~………』
ちょっと舌っ足らずに喋るチホウに、チバナが問い返す。
『何を?』
他の2人より先に、このオアシスに来ていたチホウは、胸を張るようにして言う。
『ますたーは、翼竜と契約したのぉ…………』
飛竜の中でも特殊の部類にはいる翼竜との契約を知らされ、チバナとチケイはびっくりする。
『えっえぇぇぇ…………』
『翼竜と契約してるならぁー…………』
『アタシ達は、必要ないよね』
『うん、翼竜は、全ての精霊の加護があるからね』
『だよねぇー』
『どうして?』
『あのね……砂漠を旅する為に……水が欲しかったって…………言ってたのぉ…………』
『翼竜に乗って飛べば、どこのオアシスでも、水が飲めるよね?……ふ…し…ぎ』
自分の思考にはまっていた和也は、地の精霊達の発言を聞いてガックリした。