020★精霊たちと契約2
『人間が……大好きな……黄金で何でも作れるよ』
『そう…そう……それに、地にあるモノならどんな宝石も、ますたーに……掘り出して……あげるからぁ………』
『だから、あたし達に真名をちょうだい』
地の精霊のセールストークを訊いた和也は、なるほど頷く。
うーん……この世界の……人間達って、かなり欲望が強いってことかな?
どうやら、このゲーム世界では、地の精霊は、1番人間と交信が多いという設定らしいですねぇ………お陰で、会話がとてもスムーズで助かります。
……しかし、ここの人間達は、かなりなグリードな設定ですか…………。
ボクとしては、金って重いから、装備に欲しいとは思いませんけどねぇー……。
生活の為のお金は必要ですけど………。
身の丈にあった生活をするなら、そこまで必要なモノではありませんね。
そこで、和也は、もし、地の精霊が見境なしに出したモノを仮に身に着けることになったらをちょっと想像してみた。
ふむ、独り旅の旅人が、もし、ゴテゴテと金のモノを装備していたら…………。
重いし盗賊に襲われるでしょうし…………。
もろに、詐欺師なんかに狙われそうだから…………。
ここは、気持ちだけ受け取りましょう。
きっと、地の精霊さん達も必死なんでしょうし………。
もともと欲望の薄い和也にとって、そういうモノにはなぁ~んの価値も無かった。
どう考えたって、金の塊を持って歩くの大変そうですしね。
宝石はねぇ……ボクは男ですから……なんの意味もない……って、後で言っておきましょうかねぇ…………。
労力の無駄だから…………。
はい、これが[ネコに小判]という典型的な和也だった。
地の精霊に視線を落とし、下を向いてしまった和也に、光の精霊がせーいっぱい自分を輝かせながら、呼びかける。
『えーとね……どんな……闇のなかでも……あたし……ひかりをますたーにあげる』
その眩しいほどの自己主張に、和也は双眸を細めながらも、今の光の精霊のセールストークを考える。
ほぉ~……光の魔法ですか?
確かに、ダンジョンに入るときには、すごぉーく便利ですね。
日常でも、夜に明かりが何時でも灯せるって………。
夜も明るい世界で育った、現代人のボクには、助かります。
光の精霊に、視線を向けて、内心を現すように、和也はにっこりとわらった。
その笑顔に、もっと自分を見て欲しいと思った光の精霊は、せぇーいっぱいの力?を誇示する?
『ヤミのモノや穢れのモノやマガモノやカクリョのモノとか、人間達の世界に紛れたモノを、いつでも照らし出して、マスターに教えてあげるよ』
へぇー……人に害意のあるモノを、見つけ出す魔法ですか。
ファンタジーのなかで、よく人に化けた魔物が出るのは、定番ですから……これも助かりますね。
んぅ~…真実の鏡の変形版という扱いでしょうか?
なんにしても、無料で魔法?が手に入るのは嬉しいですね。
和也の視線に気を良くした光の精霊は、その属性と力を更にアピールする。
『そんなに強いモノじゃなければ、あたしのひかりで追い払えるよぉ………ってことで……真名を……あたしに……欲しいの……』
聖なる光の力で、魔物を排除する魔法って…………。
確か、何かのゲームに有りましたねぇ~………。
光魔法で、魔物系のモノを追い払ったり消滅させたりするやつが……あれは、なんていう魔法名だったかなぁ?
うぅ~ん………ダメだぁ…魔法名………覚えていない………。
でも、便利な魔法なのは確かですねぇー…………。
そこまで考えてから、和也はハッとしてプルプルと頭を振る。
《バグ》ったお陰で、色々な魔法が、タダで簡単に手に入るのは、嬉しいですけどねぇー…………。
でも、ここで、楽した分のツケを後で清算させられると困るので、出来るだけ使わないようにしましょう。
人は人の力及び能力の範囲で生きるべきモノなんですから。
人以外の力を安易に使うコトは、慎むべきですからねぇ。
これで、楽が出来ると嬉しそうにわらった後に、和也は己を戒める。
そんな和也の内心に、血石を握っている精霊達は、気が付かなかった。
光の精霊の言葉に対抗するように、木陰からセイイッパイの声を張り上げて、闇の精霊が和也に話しかける。
『あたしはね……ますたーを……いつでも……心穏やかになれる闇の中に……隠してあげるよ』
砂漠の強烈な光に辟易していた和也は、闇の精霊の言葉に嬉しそうに微笑んだ。
嬉しいなぁー……遮るモノの無い砂漠を歩いて渡るときに、日陰が欲しいって切実に思いましたから…………。
流石に、この強烈な光……カンベン……して、欲しいですね。
和也の反応に気を良くした闇の精霊は、再度、自分の有効性をアピールする。
『あたしの創る闇に居るますたーは、だぁーれも見つけられないんだよ』
ほほぅー…すべてから隠される…………。
旅の途中とかに、盗賊や魔物に襲われたら、逃げ込むことが出来るって…………。
シェルターでしたっけ?
確か、魔法でそういうの有ったような?
いや、アイテム?だったような気も…………。
うーん、これはこれで、すばらしい魔法ですねぇ…………。
『だから、あたしに真名を……欲しいの……』
真名と愛称ですね…………。
付けましょう。
きちんと…………。
それで、色々な魔法が手に入るなら…………。
和也は、ゆっくりと全員にわかるように、キミ達の思いはわかったからと、頷いて微笑む。
さて、そうすると…………。
血石は、もう精霊さん達の手の中に有るから、契約の儀式は略式のモノでイイですよね。
あとは、順番ですよねぇ………。
流石に、神聖な契約の儀式を、全員いっしょくたには出来はませんからねぇ………。
うぅ~ん、まず、光の精霊さんかな?
次は、妥当のところで闇の精霊さんが良いかな?
やっぱり、バランスが大事ですからねぇ~………。
そしたら、風の精霊さんかな?
で、最後に地の精霊さんですね。
地の精霊さんには、金塊や宝石は必要ないって言わないといけませんからねぇ………。
心の中で順番を決めた和也は、もう一度にっこりと微笑んで言う。
「それじゃ、真名と愛称と契約の儀式の順番を言うから、みんな良い子にしててね」
『『『はぁ~い……ますたぁ~……』』』
嬉しそうにしている精霊達に微笑みを向けながら、つまらなそうに見ている水の精霊3人に声をかける。
「契約の儀式が終わったら、また、恋の歌を歌ってあげますから………せっかくの綺麗なウコロが乾いたら、傷付いてしまうから、湖の中でちょっとだけまっててくださいね」
和也の言葉に、3人は嬉しそうに頷く。
『『『はぁ~い……まってるぅぅ~……』』』
そう言って、3人は湖へと戻っていった。