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019★精霊たちと契約1 さぁもう一度〈聖誓約〉




 和也からの問い掛けに、そこに集った精霊達はとても嬉しそうに笑う。


 その手は、全員が全員、胸の前で両手を大事そうに合わせているという、ある種、異様な姿だった。


 えっとぉ………もしかして、あの姿って………。

 みんな……ボクが創った血石を持っているってことかな?

 って………もしかして、ここに集まった全員の真名と愛称を考えなきゃいけないってことですか?


 その事実に思い至った和也は、困惑とともに、マジマジと自分の周りに集まった精霊達を見回す。


 どんな精霊さん達が集まっているのかな?


 ん~とぉ………昆虫のような透き通る羽根を持っているのは、もしかして風の精霊さんかな?

 ふわふわと浮いているし…………。


 だとしたら、瞳が緑色で、肌の色が褐色から黒系の耳が可愛らしく尖っているのは、もしかして地の精霊さんかな?


 じゃあ……こっちの…なんか、やたらとキラキラと輝いていて………空中に浮いているのって………。

 もしかして…光の精霊さんかな?


 つぅーとぉ………反対側のデーツの木の木陰に居る精霊さんは、対照的な黒系だから、闇の精霊とか………。

 あのカラスの濡れ羽色とか…ぬばたまとかいう言葉が似合うような綺麗な黒髪は素敵ですねぇ…………。


 じゃなくて、あれ?

 もしかしてぇ………火の精霊さんだけ居ない?


 そういえば、ここって、火の精霊さんが宿れるような、火の気らしいモノが一切無いですもんねぇ…………。


 ぅん?………なんだろう…ボクが最初に休んでいた木陰に、小さな緑色の子が独りだけでいる………。

 でも、あの子だけなんか毛色が違うような………。


 他の精霊達と行動が全然違うために、視線が惹きつけられてしまい、和也はついつい見てしまう。


 んぅ~…どう見ても……闇の精霊さんじゃなそうですし……だからって、地の精霊さんでもなさそうな気が…………。

 あっ………もしかして、樹の精霊さん? とか?

 えぇ~とぉ~……確かハリアドだっけ………なのかなぁ?


 他の精霊達は、和也の周辺で、それぞれが嬉しそうにしていたり、楽しそうにしているのに…………。

 つややかな新緑色の髪をした、小さな子は木陰から窺がう風情でジッと和也をみているだけだった。

 他の精霊達と違うところは、その小さな子だけ、両手で何かを隠し持つ仕草をしていないことだった。


 和也が、その子に気を取られていると、クイクイと袖を引く感触と共に問いかけの声がした。


 『ねぇ~…ねぇ~……あたしにもぉ…名前ちょうだい………真名欲しいぃ…愛称欲しいぃ~………』


 1人がそう言って和也におねだりすれば、他の精霊達も我先にと和也に詰め寄って叫ぶ。


 『『『真名欲しいぃぃぃぃぃ~………』』』


 『『『あたしたちもぉぉぉ~……聖契約ぅぅ~……』』』


 『『『愛称ぉぉぉ~………名前ぇぇぇ~………』』』


 それぞれの音程違いはあるが、綺麗に同じ言葉でハモるように、和也に訴える。


 あっ………やっぱり…………そうきますか…………。


 どの精霊達も必死であるのは、和也でなくても見ればわかるほどだった。


 うわぁぁぁ~ん………マジで…どうしましょう………。

 でも、このままじゃ…収拾がつきませんよねぇ………

 はぁ~………もう………こうなったら………。

 かたっぱしから、精霊さん達に真名と愛称を付けよう。

 この際、この場しのぎで良いや…………。

 呼び出す予定なんて無いんですから、適当に………。

 いや、一応………属性に合った、名前が良いですよねぇ………やっぱり……。


 勤勉で優しい和也は、そこに集まった精霊に、確認のために呼びかける。


 「精霊のみなさん、とりあえず、契約のための血石は全員、お持ちですよねぇ………」


 『『『はぁ~い』』』


 『『『持ってる~よぉ~………』』』


 『『『わぁ~い…マスタァー…真名欲しいぃ~………』』』


 それぞれが、和也の問い掛けに、嬉しそうに答える。


 『ますたぁ~は……あたしたちのなのにぃ~……』


 『あぁ~……契約の血石ぃ~……盗ったなぁぁ~………』


 『ワタシたちのぉ~……ますたぁーなのにぃぃぃ……』


 と、ナミ、アヤ、チエの3人が不平を口にする。


 だから、落とさないように頑張ったのにぃぃぃ~という思いを言外に滲ませて………。


 そんな3人に、和也はくすっと笑ってしまう。


 ほんとうに、見かけは立派なボンッキュッボンッの姿ですけど、可愛いですねぇ~………。


 3人に心慰められた和也は、1つ深呼吸をしてから、溜め息混じりに肩を竦めて言う。


 「ナミ アヤ チエ ボクが1番好きなのは、渇きを癒してくれる、水の精霊だよ」


 和也のセリフに、3人は嬉しそうな声で答える。


 『『『ますたぁぁぁ~………』』』


 水の精霊と和也の会話に、割り込むように他の精霊たちが、口々に良いたいコトを叫ぶ。


 その内容は、まるで営業のセールストークのようだった。


 透き通った羽根を持つ風の精霊達が、和也の周りを一生懸命に、その存在をアピールするために飛び回りながら言う。


 『ますたー……アタシ……は、風の精霊だから、色んなモノを軽くしたり、遠くまで運べるんだよぉぉ』


 その内容に、和也は顔を上げて風の精霊に視線を向ける。

 

 えっ……色々なモノの重さを軽減……出来る……。

 なんて……便利……ここにある……デーツ……をぜぇーんぶ運べるって………コトも出来ますねぇ……。

 ふむ、風の精霊って、けっこう使えるのかも…………。


 和也の心が、風の精霊に傾いたのが、わかったらしく、もう1人の風の精霊が、ダメ押しのように言う。


 『それに、マスターの敵を切り裂くコトも出来るのぉぉ…………だから、真名が欲しいのぉ………』


 うっそぉー…ここで…まさかの攻撃魔法ゲットですか?

 これは、本気で名前を考えましょう…………。

 なにかに襲われた時、攻撃できる風の精霊さんを召喚できるっていうのは助かりますね。


 和也が、風の精霊たちを見詰めて考え始めると…………。

 すかさず、地の精霊が、和也の気を引く為に、その足をツンツンしながら、一生懸命なのという表情で言う。


 『あのね……あのね…あたしは、地の精霊なの……マスターの欲しいモノ……必要なモノを言って……なんでも……作れるんだから…………』


 なるほど、ファンタジーの定説、地の精霊グノーム、グノーメって、なんでも作れるんですねぇー…………。

 うーん、旅人の服とか装備とか、作ってもらったら……。

 ものすごぉーく……楽に……なれそう。

 今のボクって丸腰に近いですからねぇ…………。

 《バグ》っちゃって、旅人設定したのに、装備がぜぇ~んぶ無くて、銀嶺の角の剣以外なにも無いですからねぇ…………。


 和也の興味を引けたと感じ取った地の精霊たちは、自分たちの知っている人間の好きなモノを色々と言い出した。








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