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018★水の精霊と契約? その5〈聖誓約〉



 水の精霊の問い掛けに、和也はちょっと肩を竦めて言う。


 「うん、君たちに真名と愛称を告げたら、1人づつ血石を創る予定だけど………もしかして、3人一緒の方が良いかな?」


 和也の問い掛けに、3人の水の精霊はお互いの顔を見て、可愛らしく小首を傾げる。


 『うん…3人一緒が良いぃ~…………』

 『いっしょぉぉ~…………』

 『契約ぅ~のぉ~血石ぃ…一緒に創るぅ………』


 3人の答えに、和也は内心で嘆息する。


 うぅ~ん…やっぱり3人一緒が良いのかぁ~………。

 血石なんてモン創ったことないからなぁ………。

 ……上手に出来るかなぁ~…はぁ~…。

 そうだ…彼女たちとの契約に必要な血石創る時、水の女神に助力を願ってみよう。

 神頼み………もう、それしか無いや…………。

 

 「それじゃ………とりあえず、真名と愛称を告げますね…」


 嬉しそうに3人はハモって返事をする。


 『『『はぁ~い』』』


 和也は、嬉しそうな3人に向けて、指差しながら告げる。


 「まず、真ん中の黄金がかった銀鱗に、薄い水色の髪に蒼銀の瞳のキミは、真名を【さざなみ】愛称はナミ、いいかな?」


 『はぁ~い、ナミでぇ~すぅ』


 嬉しそうに頷くナミに、和也はほっとした表情になる。

 その両脇では、ワクワクする2人が和也を熱い視線で見詰める。

 まるで、おやつを待つ子犬のような瞳で………。


 うっとりと与えられた愛称をかみ締める1人と、きらきらの瞳で自分を見詰める2人に、和也は続ける。


 「薄い緋色の銀鱗に、青い髪に薄青紫の瞳を持つ君は、真名を【あやなみ】愛称はアヤ、いいかな?」


 『わぁ~い……あたしは…アヤ……』


 嬉しそうにしているアヤに頷き、和也は最後の1人に視線を向けて告げる。


 「純白の銀鱗に翡翠色の瞳のキミには、真名を【ちえなみ】愛称はチエ、どうかな?」


 『アタシはチエ……嬉しいぃ…チエ…とても嬉しい………』


 和也に真名と愛称をもらった3人は、自分達に自由と庇護を与えてくれる、その名の重みをかみ締めて感涙する。

 勿論、その美しい双眸から零れ落ちる涙は、ファンタジーの定石である、輝く真珠だった。

 和也が、3人の足元に散らばる大量の真珠に小首を傾げる。


 えっとぉ~………ボクが付けた名前、そんなに嬉しいものなんですか?

って……あっ…もしかして…真名とか愛称にこだわるのって、ファンタジー系によくある、名盗りとかのセイ?


 ちょっと考え込む和也の耳に小さな声が聴こえる。


 …いいなぁ………名前……いいなぁ……あたしも……欲しい……


 その小さな声に、和也は首を傾げるが、再び思考の中へとはいる。


 ぅん?…声が聴こえる……湖の子たちかな?

 まっ…いっかあとで…じゃなくてぇ………。

 たしか、名盗りって……自由を奪われたり…隷属させられたり…って……ソレ?

 だったら、漢字で付けたらもっと喜ぶかな?


 和也は頭の中でついつい辞書を広げるイメージをしてから、慌ててプルプルと頭を軽く振る。


 じゃないでしょ……ボク……とにかく、今は血石。

 あとで、名盗りされない名前の付け方をしてあげよう。

 どうせ、今のだって、ボクにとっては、仮名ですし………。


 そう和也が意識を切り替えようとしたとき、さっきとは違う声がする。


 ほしいぃ……護りの…血石………聖なる…契約………あたしもぉ……。


 その声に眉を顰める和也だったが、自分の姿を改めて確認し、現実逃避にまた入ってしまう。


 とにかく、お水を何時でも自由に飲むための契約を最優先に済ませないとね。

 このままじゃ、どこへも旅が出来ませんから…………。

 はぁ~………《バグ》ったセイで…旅人設定の装備も知識もなぁ~んにも無いから…………。

 ぜぇ~んぶ、自前で装備から食料から用意しないと………。

 旅をしないとレベルアップもしないし…………。

 なにより、やっぱり人が恋しい…………。


 そこで、じっと見詰める子犬の視線を感じた和也は、ハッとして現実へとかえる。


 じゃなくて、さっさと、契約のための血石を創らないと………。

 まぁーここで、水の精霊の彼女たちが居なくなるっていうのはなさそうですけど…………。

 とにかく、こういうのはファンタジーの定石をなるべくふんでいれば、安全な筈…………。

 手首は………銀嶺の角で出来た剣で、ちょびっと切ればイイかな?

 どれぐらいの量が必要なんだろう?

 とにかく、剣…………。


 そう和也が思考した瞬間、その手の中に銀嶺の角が変化した細身の剣が出現する。


 「よしっ…一応、剣は用意できた……それじゃ…ナミ…アヤ…チエ…血石を創るから手伝ってくれる?」


 『『『はぁ~い』』』 


 3人の水の精霊は突然現れた剣にびっくりすることなく、いそいそと和也の前に3人はにじり寄る。


 「これから、この剣で血石を創るために、手首を切って血を流しますから、手伝って下さいね」


 『『『はぁ~い』』』 


 くどいくらい念を押しておかないと、失敗しそう……うぅ~やっぱり不安だ……ここは、女神様お願い。


 3人がキラキラとした瞳で和也の手首と剣を見詰める。

 和也は、深く深呼吸してから、祈り?の言葉を唱える。


 「 麗しきヒレと輝くウロコ持つ 水の女神よ

   生命の始めをつかさどる 心優しき水の女神よ

   水の眷属たる美しき3人の水の乙女と

   聖なる契約を結ぶため 約定の血石の創造の

   助力をこいねがいたてまつる

   慈愛をつかさどりし水の女神よ

   我が血を元に 誓約の血石をここに…………」


 そこまで詠唱した時に、和也は手首に当てた剣を軽く引く。

 次の瞬間、真紅の流れが手首から溢れ、重力の法則により、地面と零れた。


 「契約の血石よ 結晶化せよっ」


 和也が叫んだ瞬間、手首から溢れ、零れ落ちた鮮血は、全て血石化し、空中に留まった。

 それは、ナミ達が、自分の聖契約の血石を、地面に触れさせたくないと思ったからだった。


 なぜなら、いにしえと呼ばれるほど、とてつもなく古い契約が行われるのを知って、あまたの精霊達がそこに集まっていたからだ。


 そこここに集った、地の精霊や風の精霊や光の精霊や闇の精霊達に、聖契約の血石を盗られないようにと、がんばったのである。

 だが、和也は契約の血石を創るのに、本来、ちょびっと傷つけてで良いのに、意外と盛大に手首を切ったので………。

 手首から溢れた鮮血が変化した血石は、そこに集えなかった火の精霊以外は、こっそり?と盗んでいたのである。

 

 なお、手首の傷は、血石を創ったので、親切な水の女神が、治癒の魔法をかけて綺麗さっぱりと治していた。

 勿論、水の女神もちゃっかりと、和也が創った守護となる、聖契約の血石をもらっていたことは言うまでもない。


 和也は、自分の血石を握って嬉しそうに叫ぶ3人以外の姿が見えることに、首を傾げていた。


 湖で遊んでいた小さな?水の精霊達も居るのは、別に不思議とは思わないんですけどぉー…………。

 なんか、姿がまったく違う…………。

 明らかに、水の精霊ではない姿のモノ達が、かなりの人数で居るんですけどぉぉぉ?

 銀嶺の知識の聖契約だと、違うような…………。

 でも、銀嶺は翼竜だから…………。

 人間と違うから…………。

 もしかして、これも《バグ》ですか?

 はぁ~………悩んでいても、先に進めないですよねぇー…………。

 ここは、姿の違うモノ達に、訊いてみることにしますか?

 

 予定していた状況とは、違う事態にかなぁ~り困惑していた和也だか…………。

 見た目の表情は、あいかわらず冷静なままだったりする。

 その顔で、淡々とした声で、集まっているモノ達に質問する和也だった。


 「きみたちは、だれ?…ボクに……なにか……用事があるのかな?」







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