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017★水の精霊と契約? その4



 和也には、眼前で楽しそうにしている水の精霊3人との正式な契約の為に必要な血石の作り方にちょっと嘆息する。


 ボク…痛いのはちょっと………それに、いくら手首を切って血を流したからって………。

 その血で、簡単に血石のカタチにできるとは思えないんですけど………。

 あと、素朴な疑問なんですけどぉ………もしかしなくても、人数分必要なのかな………はぁ~…いいや訊いちゃえ。


 「えぇーと…その血石だけどぉ……もしかしなくても、1人1つってことで、3個必要なんですか?」


 和也からの正式契約に必要なモノの質問に、水の精霊はそれはそれは嬉しそうに答える。


 『契約の血石……欲しいぃぃ~』

 『あたしもぉ~………』

 『1人1つぅぅ~……嬉しいのぉ~……』


 血石を必要とする正式な契約は、飛竜の銀嶺さえも知らないほど、とぉ~っても古いいにしえと呼ばれるような時期の契約方法だった。


 それは、まだ、人族が多くの精霊族や魔族や妖族、獣人族などの多種多様な種族と、一時的に契約を交わし、その力や智慧を借りていた時代にまで遡るモノだった。


 古い古い既にいにしえと呼ばれるその頃は、捕縛したり呪縛したりして、使役するという考えはなかった。

 基本的に、対等な契約によって、一時的にその種族の助力を得るという方式だったのだ。


 勿論、その助力を得るためには、等価交換が必要だった。


 だが、何時の頃からか、多くの人間達は、等価交換を差し出すことを惜しみだした。


 そして、さもしく考えたのだ。


 等価交換を出さずに、ただ使役する方法は無いか?と。


 そう、他種族を一方的に自分達の利益のために使役する邪法や呪術を求めた。

 邪な欲望に染まった者達は、ありとあらゆるおぞましい実験を繰り返した。

 そして、ついには、ソレを……禁断の呪術を編み出したのだ。


 契約とは名ばかりの隷属魔法を…………。


 他種族を捕まえて使役するというおぞましいモノは、あっという間に、世界に蔓延した。


 そして、ついには、神の名を冠する者達すら、その欲望にまみれたどす黒い呪縛に捕らえ、使役しだした。


 より多くの富と権力を望む者達は、ソレを禁忌という意識も無く、欲望のままに行使し続けた。


 多くの神々や精霊たちは、命と力を使い果たされ、消失するようになった。


 それまでは、神と呼ばれる者達は、誕生時に持っていた命と力を使い終わると、自然の摂理と理に従って、世界の環の廻りの中へと還っていた。


 そう、神々と呼ばれる者達は、命が終わると世界の循環の中へと戻り、再び刻が廻れば世界に誕生していたのだ。


 世界の均衡が崩れるまでは、一定数の神々や精霊たちが常にそこここに存在していたため、とても豊かで穏やかな理想郷のような世界だった。


 だが、おぞましき呪術や邪法によって対価なしに酷使された神々や精霊達は、次々と虚無へと堕ちて、その存在を消滅させてしまっていた。


 本来、久遠に続く筈の世界の循環は断たれ、未来永劫、再生の刻の環へと帰還することはない。


 そして、その中でもっとも多くの犠牲者を出したのが水の属性の者達だった。

 水に関係する種族が減ったが故に、世界の均衡は脆くも崩れ去り、広大な地域が渇ききった砂漠へと変化していった。


 水の精霊や女神は、人間が訪れることの出来ない砂漠や樹海と呼ばれる地域の深遠に沈み、次第にその姿を隠した。


 それでも、いにしえの時代には、五月雨のように道徳観が乱れきった中でも、厳しく自分達を律する少数の者達は存在していた。

 世界の秩序の崩壊を憂い、多くの水の属性を護るために編み出されたモノが、聖誓約であった。

 水の精霊や女神を隠し護るための契約である。


 そういうとぉーっても濃い、様々な世界のふせられた歴史や事情を知らない和也は、ゲームや小説などの、ファンタジーの常識を元に、いにしえの契約の手順を踏んでいたのだ。


 そう、最初に呼び掛けて、先に恋歌を捧げ、助力を乞うという古いふるぅーいいにしえと呼ばれる契約を望んだことになったのだ。

 そんなことをされれば、常に術者たちに狙われ、虐げられてきた水の精霊たちは単純なだけに、喜んでしまうのだ。


 嬉しそうな3人に、和也はちょっと、いや、盛大に溜め息を吐いていた。


 あっ…やっぱり…1人1つですか………。

 知識的には、銀嶺のモノがありますから…血石の創り方自体はわかりましたけど………。

 そういう能力なんて無いし………。

 はぁー…もう、この際この3人に、最初から血石を創るための助力してもらっちゃいましょう。


 「血石なんて創ったことないので、すみませんが助力してくれますか?」


 和也の問い掛けに、3人は嬉しそうに言い合う。


 『嬉しいぃ~…契約の血石ぃ~……聖誓石……』

 『じゃあ…真名と愛称もぉぉ………』

 『血石創るのにぃ~…必要なんだよぉ~………』


 聖誓石?って、血石の正式な呼び方なんでしょうか?

 じゃなくて、3人分の真名と愛称ですかぁ………。

 って…あっ…もしかして名隠し………って、そうだよねぇ…これファンタジー設定だし………。


 水の精霊の言葉に、和也は再び小首を傾げる。


 う~ん……どういうのが良いでしょうねぇ~………。

 3人とも美人だし……まぁ…愛称は呼び出しのための名前でしょうから…適当でもイイですよねぇ………。

 って、もしかして真名は韻とか踏んだほうが良いのかな?

 属性と色彩を基本にすれば良いかな?


 名前をどうしようかと悩んで、ふと顔を上げれば、3人の後ろのオアシスの湖では、楽しそうに幼い水の精霊から、大人っぽい水の精霊が楽しそうにはしゃいでいた。

 陽光に湖面が照らされて、キラキラした波紋をいくつも作っていた。

 それを見た和也は、無意識に手をポンッと叩いていた。


 あっ……あれにちなんだ名前にすれば良いですね。

 とりあえず、真ん中の水の精霊さんから…………。 

 

 黄金がかった銀鱗に、薄い水色の髪に蒼銀の瞳ですから………彼女は、そうですね真名を【さざなみ】愛称をナミかな?


 んぅ~と…薄い緋色の銀鱗に、青い髪に薄青紫の瞳ですから…………真名を【あやなみ】愛称はアヤでいいかな?


 あとは、純白の銀鱗に、翡翠色の瞳ですから……そうだぁ………千に重なる波紋を現すで【ちえなみ】愛称はチエかな?


 よし、これで、真名と愛称は決まりました。

 けどぉ…ちょっと首が痛いですねぇ…………。

 彼女達は、小さくなるって出来るんでしょうか?

 要求してみようかな?

 ファンタジーの常識なら、小さくも大きくもなれる筈。


 「あのぉ~……ボク…ちょっと首が痛くなってきたんで………出来れば、ボクと同じくらいか少し小さくなってもらえませんか? 見上げるのつらいですぅ……」


 わくわくどきどきしながら和也を観察していた3人は、嬉しそうに答える。


 『はぁ~い…小さくなりまぁ~す……』


 和也が、内心でナミと名付けた真ん中の水の精霊が代表して、楽しそうに答えて小さくなると、左右にいた水の精霊も続く。


 『あっ…あたしも小さくなるぅ………』

 『アタシも小さくなるよぉ~………』


 和也は目の前で自分より小柄になった3人にお礼を言う。


 「ありがとうございます。流石に首が痛くなってしまったので………それじゃ、とりあえず、真名と愛称を告げますから、1人づつボクのところに来てくれませんか?」


 『ねぇ~…血石はぁ?……』






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