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016★水の精霊と契約? その3




 水の精霊からの問いかけに、自分の思考へ陥っていた和也は、ハッとして顔を上げる。

 考え込んでいた為に、無意識に顎に手を当て、自然と下を向いていたのだ。


 「あっ…そうですね。すみませんでした。水の精霊さんたちを呼び出したのに、まだ、自己紹介してませんでしたね………ボクは、黒沢和也って言います。よろしく、綺麗な水の精霊さんたち………」


 とりあえずの挨拶をした和也に、呼び出された水の精霊たちは、なぜか楽しそうにクスクスきゃっきゃっしながら、パシャパシャと水音を響かせる。


 『ねぇー…貴方は、何を私達に望むのぉ?』


 再びの問い掛けに、和也はちょっと首を傾げて、自分の望みをどう水の精霊に、要求? お願い? するべきか逡巡する。


 えぇーとぉ………どういう風に、水を持ち歩きたいって言えば良いのかな?

 …………って、あれ? 水の精霊さんたちが増えている?

 なんか、幼い感じの子も現れている。

 もしかして、警戒を解いてくれたってことかな?


 そう思う和也の視線の先には、何時の間にか、かなりの数の水の精霊が姿を現わしていた。

 和也は、この世界の常識や理というモノを、飛竜の銀嶺から得た知識でしか持ち合わせていなかった。

 そう、許容オーバーを恐れて、知識を探っていないため、知らない事実だったが………。

 実は、水の精霊は有用性が非常に高いため、とんでもない高額で売買されるのだ。

 ようするに、水の精霊は、魔術師や呪術師などの術者と呼ばれる者達に、常に狙われいるので、とぉーっても警戒心が強い精霊だったりする。

 だから、こんな風に簡単に姿を現すことは無いのだ。

 そんな事実を知らない和也は、オアシスの湖に現れた水の精霊の数にただただびっくりしていた。


 ここのオアシスの湖ってどれくらいの水の精霊さんたちがいるのでしょうか?

 もしかして、入ってないから正確な水深はわからないけど、見た目よりもずっと深いってことでしょうか?

 確かに、とても澄んでいて、湖底まで見えるから水深は浅いんだろうと思っていたけど、実は深い………じゃなくて、当初の目的を果たさないと……はぁ~………。



 『ねぇ~…ねぇ~……望みはぁ~…………』


 水の精霊からの問い掛けに、和也は当初の目的を果たす為に、ちょっと考える。


 ここは、普通に、水が欲しい……じゃなくて、水を持ち歩きたいって言えば良いのかな?

 体積? 容積? を、圧縮して……コンパクトに……って、こういう言葉って、そのまま通じるのかな?

 いや、一応、そういうのは、たぶんプログラミングされているよね。

 言葉の壁とかは、飛竜の銀嶺や現れた水の精霊さんたちの様子から見て、なさそうですし…………。

 へんに凝ったところは無いということでしょうか?

 いや、一応、製作中のモノですし…………。

 困ったときは、プレーヤー支援システムってモノもあるんですし…………じゃなくて………。

 今は、水を持ち歩くための契約をしなきゃ。


 「えーとぉ…ボクが、この限りなく渇いた暑い砂漠を、人がいる町や村へと渡るために、水が必要なんです………」


 とりあえず、誠実に、自分が呼び出した理由となる言葉を口にする。


 『ふぅ~ん………お水が欲しいのぉ~…………』

 『きゃっきゃっ……だったらぁ~…ここに居ればぁ……』

 『……そぉ~だよぉぉ~…ここにいようよぉ……』

 『暑い砂漠なんて渡らなくたっていいでしょ…………』

 『あたしたちとぉ~…あそぼぉ~……ねぇ~…歌って…歌ってぇ~…………』


 和也の言葉に、水の精霊たちはそれぞれの気分で答える。


 あははは………後から現れた幼い感じの水の精霊さんたちは、自分の欲望に忠実ですねぇ…………。

 じゃなくて…………きちんと意思疎通しなきゃ………。

 うぅ~ん、困ったなぁ~………こういう時は、最初の召還に応じてくれた、大人っぽいほうの水の精霊さんたちに言えばいいのかな?

 でも、どうやって、水を大量に持ち歩きたいって言えばいいのかなぁ?


 「えぇーとぉ……ボクは人間だから、人間が暮らしているところに行きたいんです。それには、お水が必要なんです。何時でもどこでも飲めるように、大量のお水を持ち歩きたいですけど……水の…体積? 容積? を圧縮して、コンパクトにして持ち歩けるようにしたいんだけど………って、ボクの言っている意味ってわかるかなぁ?」


 和也の問い掛けに対して、最初の召還に応じてくれた人魚姫姿の3人が、オアシスの湖から出て眼前まで迫ってきた。


 えっとぉぉぉぉぉ~………で…でかい…………。

 ボクの遠近感覚が、おかしくなったのかと思うほど……大きかったんですねぇ~…………。

 ボクの呼び掛けに応じて現れたときって、かなり遠くの位置だったんですねぇ~…………。

 こう、眼前にボンッキュッボンが迫ってくると、すっごい迫力ですねぇ~…………。

 相沢センパイもかなりのスタイルですけど、この迫力には負けますねぇ~…………。


 和也は眼前に現れた、人魚姫の姿を持つ3人の色違いの水の精霊をまじまじと見上げて、そんな純粋な感想を思っていた。


 『だったら、わたしと正式な契約してぇ~………』

 『そう、正式な契約ぅ~あたしともしてぇ~』

 『アタシともぉ~……正式な契約ぅぅ……』


 三者三様の言葉で、正式な契約なるものを求められ、和也は眉を寄せて、無意識に小首を傾げる。


 えぇ~とぉぉ………正式な契約って?

 恋の歌を捧げて、契約ではないんですか?

 ボクの持つ、ここの常識って………。

 うふふふ……そっかぁ…そういえば、この知識って銀嶺の…そう、飛竜の常識と理だったっけ………。

 大半は、人間達などの儀式とかを面白いモノという感覚で見ていたモノだけ……じゃなくて、正式な契約って………。


 銀嶺が和也に与えてくれた、この世界の知識の奥深くまで意識して探すが…………。


  えっとぉぉ……そういう契約って無いですねぇ………どうしましょう。

 って、考えてもしょうがないから、教えてくれるかどうかはわかりませんけど、直接訊いてしまいましょう。


 「えぇーとぉ……その…ボクには、水の精霊さんたちと交わすための…正式な契約の知識って無いんですけど…教えてくれますか? ボクと水を携帯するための契約をしてくれます?」


 和也の問い掛けに、3人は嬉しそうに応じる。


 『正式契約にはぁ……血石が必要なのぉ~……』

 『真名と愛称も必要ぉ~……なのぉ~……』

 『聖誓約の契約ぅ~…………』


 えぇ~とぉ……けっせき…って何でしょう………って、ああ血石ですか…作り方はぁ………。


 和也は、銀嶺がくれた知識を総動員して、水の精霊の言葉を理解しようとしていた。

 そのアタフタした様子を、水の精霊たちはクスクス笑いながら見ていた。

 和也は、人間なのだが、この世界の人間では無いので、水の精霊たちに対する欲望が無いのだ。

 和也に取っての契約とは、砂漠を渡るために、水を携帯するためだけのモノでしかないのだ。

 契約によって、莫大な資産や権力を手にしようという欲望は、カケラも持っていない。

 そのコトが、水の精霊たちには判るのだ。

 和也は、捕縛を目論む術者たちのような、ギラギラした欲望の気を発散さていないために…………。

 自分達に害意を持たない和也の存在に、精霊たちは、自分の好奇心を満たす為に、聖契約というモノを持ち出したのだ。






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