158★ロ・シェールの街21《いちの戦乙女》が造ったレアアイテム
「少年、これは私が造ったモノだ…
その為…冥府の住人にしか効果が無いモノだ
本当なら、生者と死者の両方に有効なモノを
造りたかったんだ…………」
和也は、《いちの戦乙女》の言葉に、内心で首を傾げるが、平然とした顔で聞いていた。
〔生者の記憶を映すモノを造れないのは
《いちの戦女神》様が《死神》と
同じ存在だからでしょうか?
でも、北欧神話で言うところの天国…
ヴァルハラ…へ…戦う者…戦士のみを
連れて行く存在というイメージしか
無かったんですけどぉ……
このRPGでは、冥府の女神様……
ボクのイメージでは…イザナミ様の娘…
という設定なんですよね?
生者の記憶?
それに何の意味があるんでしょうか? 謎です
なんにしても完璧に無理ですよね…
属性が違うんですから…
でも…口にしない方がイイでしょうね…
たぶん…きっと………〕
色々と思うところのある和也だか、藪蛇はイヤと思い、口にしたのはごく普通の質問だった。
「生者の記憶も映せるモノ?」
だが、そんな和也のごく普通の疑問を、斜め上どころか遥か彼方に裏切る、答えを口にする《いちの戦乙女》だった。
「私達は、お前の面白そうな記憶を
見てみたいと思っているのだ」
〔もしもしぃ~…面白い記憶って…イヤ…
ボクの感覚と《いちの戦乙女》様の感覚は
違いますからねぇ……面白いねぇ……〕
内心を綺麗に隠して、和也は小首を傾げながら言う。
「うぅ~ん…ボクの記憶ですか?
果たして…面白いでしょうか?…」
《いちの戦乙女》の言葉に首を傾げる和也と違って浅黄は、にっこりと笑う。
「アレックス、俺は、面白いと思うよ」
「そうですか?」
浅黄の発言にも何も思いつかず、首を傾げるだけの和也だった。
それに苦笑して浅黄は説明する。
「ゲーム、アニメ、小説、マンガ、スポーツ
映画etc.を、見せてあげれば
いいんじゃないか?
きっと、面白いと思うよ」
このRPG世界では、存在しない娯楽を口にする浅黄に、和也はやっと納得して頷く。
「確かにそうですね」
和也が納得したのを確認できた《いちの戦乙女》は、イイ笑顔で自分の言いたいコトを言う。
「今回の礼は、いずれ他の神々が、生者専用の
水晶球を造ると思うから………
それに少年が映像を映し出してくれれば良い
というコトで…私は帰る
必要な時は私を呼びなさい…
何時でもそなたの望みならば駆けつけよう」
〔ふっ…神々も暇なんですね…そんなモノを……
娯楽の為に造ろうなんて………〕
その発言の内容に苦笑しながらも、和也は笑って別れの挨拶をする。
「《いちの戦乙女》様……今回も
ボクに必要なモノを届けてくださって
ありがとうございます
また、お会いできる日を楽しみにしています」
「私も、少年に会える日を楽しみにしている」
《いちの戦乙女》達は、別れの言葉を口にすると、和也たちの目の前からふっと消えた。
その圧倒的存在感(神々の眷属の神気=オーラ?)が消えると奴隷商ゼスラの天幕に居た人間達(和也と浅黄を除いた)は、緊張で詰めていた息を吐き出すのだった。
その日ゼスラの天幕に居た人間達(浅黄を除く)は、精霊達を従え、戦乙女達の加護と寵愛受けている和也の姿を見て、何が何でも付き従うと心に誓うのだった。
《いちの戦乙女》達が帰った後、和也はガラム達に〔黒い水晶球〕を使い、行方不明になった者達の名前や姿や特徴を確認した。
それをもとに、奴隷商であるゼスラは、知り合いの奴隷商や奴隷市で探すと確約してくれた。
ガラム達の話しをレオは自分なりに、メモをとりまとめていた。
それは、和也に自分以外の渡りの戦士達が何処まで従うか、まだ判断していなかったからだった。
和也は、レオの様子(名前や特徴を書いたり、似顔絵を描いたりしながらぶつぶつと独り言を言っていたので)を見て何を考えているのか気になったので声をかけることにした。
「レオ、なにをしているんですか?」
和也に話しかけられたレオは、自分がメモを取っている理由をさらりと言う。
「ハンターギルドで待機しているヤツラに
アレックス様から命令されて砂漠などを捜索する
行方不明者の特徴や姿の説明をする為です」
レオの答えに、和也は首を傾げる。
似顔絵よりも、〔黒い水晶球〕で、本人の姿を見せるほうが簡単だし、正確に情報が共有できると和也は思っていたから…………。
「ボクは、〔黒い鏡〕や〔黒い水晶球〕を
使えば簡単に説明出来ますが?」
和也の質問にレオは苦笑しながら言う。
「アレックス様、そのアイテムは
人が造ったモノではありませんし
それを使えるのは、アレックス様のみですよね?」
和也は、レオの言葉を深く考えずに、あっさり頷く。