157★ロ・シェールの街20《いちの戦乙女》とレアアイテム
唐突に現われた《いちの戦乙女》和也の前でにこにこと笑いながら、話し掛ける。
「その鏡の大きさでは不便だろう
この〔黒い鏡〕と〔黒い鈴〕を
使いなさい」
天幕の中なのに、何故か居る《いちの戦乙女》とその部下の姿に、和也は色々と聞きたかった。
〔ボクは、呼びかけたりしていませんでしたよね?
《いちの戦乙女》様…
それなのに…どぉぉぉぉ~して…
そんなにイイ笑顔で…ここに…
ザラムの天幕に居るんですか?
…突然…現われて…アイテムを渡すって…
泉の女神様の金の斧…銀の斧…鉄の斧…並みに
不自然なんですけどぉぉ~…
うっう…レオやミランやガラム達の視線が
とても痛いです…
エリカやエルリックが平然としているのは…
ほっとしますけど…ユリアとリリアも
平然としているのは何故でしょう?
これは…後で聞いてみましょう…
《いちの戦乙女》様に
『何故、今、ここに居るんですか?
何処からボクを見ていたんですか?
何しに来たんですか?……etc.』
って聞きたいけど……余計なコトを言って…
藪蛇になるのは…ゴメンです
ここは…綺麗に…スルーしましょう…
ああぁ~浅黄くんの視線が痛いです
そんな哀れな子を見るような
同情いっぱいな表情をしないで下さい…
うっうう…切ないです……
この切なさは…緋崎君をからかうコトで
晴らしましょう………〕
内心で色々な葛藤があった和也だったが、それについてあえて何も言わずに、新しいアイテムについて質問した。
「それは、どう使うんですか?」
和也の質問に、《いちの戦乙女》は、爽やかに笑って説明する。
「この〔黒い鏡〕は〔黒い手鏡〕と
同じ働きをする
それと、この〔黒い鈴〕を鳴らすと
〔黒い鏡〕は大きくなる
大きさは、制限をかけていないので
〔黒い鈴〕を鳴らした回数の分だけ
大きくなる
だから、お互いにかなりの人数が居ても
話し合うことが出来るというモノだ」
和也は、《いちの戦乙女》が、何故、ボクがあったら良いなと思ったアイテムを持って現われたんですか?と聞きたいのを、グッと我慢して、新しいアイテムをもらったコトに対するお礼を言う。
「ありがとうございます
これで、ガラム達と捜索する人間達の姿の
特徴に付いて、会話することができます」
《いちの戦乙女》は、その言葉から、なぜ〔黒い手鏡〕を使用していたか本当の意味で判ったので、和也に新たなアイテムを与えようと思い、改めて質問する。
「人を探しているのか?」
和也は、《いちの戦乙女》に説明する。
「はい。ガラム達の家族やキャラバンの仲間達が
砂漠で行方不明になったので……
探して欲しいと頼まれましたので……」
説明を聞いた《いちの戦乙女》は、ちょっと首を傾げてから何処からともなく出現させた〔黒い水晶球〕を手に、和也に微笑む。
「では、〔黒い水晶球〕をやろう」
和也は、その微笑を見て、黒くて心臓に悪いような感じがした。
「それは、どんな《力》が有るのですか?」
嫌そうな顔をする和也の手の上に《いちの戦乙女》は、黒い水晶球をひょいっと乗せて言う。
「これは、〔黒い鏡〕に映る冥府の住人の記憶を
映し出すモノ……生者には使えないモノだ
生者に使っても、何も映しはしないモノ
だから、少年以外には使えないモノだ
我が母、冥府の女神の加護を受けたそなたにしか
使えないモノだ
冥府の住人を呼び出す許可をそなただけが
受けているからな
他の人間には使えないモノだと覚えておけ
それと〔黒い水晶球〕は〔黒い鈴〕を鳴らす回数に
よって大きくなる
それから…少年…君の知り合いでなくても…
例えば…そこにいる姉弟…奴隷商…などの
知り合いでも
〔黒い手鏡〕や〔黒い鏡〕は映し出すコトが
出来る…
また…〔黒い水晶球〕も…
呼び出した相手の記憶を映し出すコトが出来る
ただし、冥府の住人だけが対象者だ」
和也と浅黄は、特殊なアイテムを手に入れたときに聞こえる…チャラチャチャラァ~というRPGの効果音を聞いた気がした。
冥府の住人限定とは言え、記憶を映し出す便利なアイテムを手に入れたので、和也はお礼をしたいと思った。
「ありがとうござ…………」
和也の言葉を途中で切って、《いちの戦乙女》は苦笑しながら、更に言うのだった。