153★ロ・シェールの街16 奴隷廃止を命令した国の末裔?
エリカの言葉に、和也はちょっと考えてから聞く。
「それは、何処の国?」
和也の問いに、エルリックが答える。
本当に仲の良い姉弟である。
「ラ・リーグ・ロリアン帝国と
リ・ローグ・ロリアン帝国です」
上がった2国の名に、共通性があることに気付いた和也は更に疑問を問い掛ける。
「なぜ、2国だけ奴隷制度を
廃止しているんですか?」
エリカが、その問いに答える。
「どちらも、ラ・アルカディアン帝国の
正統なる子孫だと名乗り
後継者は自分達だと主張しているからです」
なるほどという表情で、浅黄が聞きかじったことを言う。
「へぇ~…ラ・アルカディアン帝国は
内乱で分裂して滅びた………」
浅黄の推理に、エルリックは途中で言葉を挟んだ。
「いいえ、七つの流行り病が原因で滅びたんです
その為、他国から攻められたわけではありません
が、他国への移住は困難を極めたと聞いています」
エルリックの説明に、浅黄は訊き返す。
「習ったではなく、聞いているって?」
聞き返されたエルリックは、当然の常識と思い、そのまま続ける。
「はい、飛竜騎士は
すべて、ラ・アルカディアン帝国の
王侯貴族の子孫なんです
継承権を持つほどの貴族かどうかの
違いしかありません」
浅黄とエルリックの遣り取りを聞いていた和也は、そこから導き出された答えを確かめる為に聞く。
「もしかして、飛竜騎士って存在は
ラ・アルカディアン帝国から
始まったんですか?」
和也の問いに、エルリックは頷いて言う。
「はい
ラ・アルカディアン帝国にしか
飛竜騎士は存在していませんでした」
エルリックの説明に、浅黄が感心して言う。
「ふぅ~ん…そうすると…
絶対的な《力》(軍事力)を持つ帝国って
感じになるね…
パックスロマーナ(ローマ帝国支配による平和)
より強いかもね」
そんな浅黄に、和也は後世まで影響力を残した、ラ・アルカディアン帝国の偉業に感心しつつ、滅亡した理由を知りたがる。
「でも、帝国が滅びた後まで
皇帝の宣言(奴隷制度廃止)が
2国だけでも残ってるのは凄いと思います
それに、奴隷商に対する嫌がらせという制限も
残ったままというのは、とんでもないと思います
どうして、滅びた後も、そんなに影響力が
残ったままなんでしょうか?」
和也の疑問に、飛竜戦士を輩出する血統であるエリカが、あぁという表情をしてから言う。
「奴隷商の人々は知らないと思います」
エリカの言葉に、和也は小首を傾げて聞く。
「では、エリカは知っているんですか?」
「はい、飛竜騎士の血統なら
全員知っているコトです」
その言葉で、和也も思い当たることがあって、エリカに更に問い掛ける。
「それって、あの話しですか?」
和也の言う『あの話し……』の少し前から意味不明になっていて、口を挟むタイミングを待っていた浅黄が、注意する。
「アレックス………悪いけど
途中から話しが見えなくなったんだけど」
浅黄の言葉に、和也はハッとする。
そして、すまなそうに、通り名を呼んで謝る。
「ごめん、レオン
飛竜騎士しか知らない伝承の話しが
関係しているんです」
そこで、浅黄も気付いたことを確認するように、和也に聞く。
「アレックスってば、飛竜を手に入れたの…
いや…《契約》したの?」
浅黄の確認に、和也はあっさりと答える。
「ええ、ボクは飛竜と《契約》しています
そう言うレオンだって
黄狼と《契約》しているでしょう?」
「うん《契約》してる」
そう頷く浅黄の表情は少し暗い。
和也は、それを見てたしなめるように言う。
「どちらも、空が飛べますし
色々な能力があるんですから…
そんな顔しないで下さい」
和也の言葉に、浅黄は頬をむくれさせ、駄々っ子のように言う。
「むぅ~…でも…
俺も飛竜騎士になろうかなぁ~…
アレックスとお揃いにしたいしね
だって、一緒に飛竜で編隊組んで大空を
ブルーインパルスみたいに飛ぶって
男のロマンって思わない?
みんなだって、きっとそう言うと思うけど」