149★ロ・シェールの街12 交渉はやっぱり、レオでしょ
そして、気を取り戻したレオが、少し責めるような意味合いを含ませて言う。
「だったら、どうして買おうとするんですか?」
「今は、その理由を言えませんが
後で説明します」
「そうですか」
和也は、往来でエリカ達の事情を話すのは不味いと思っていたので、レオの質問を後で答えると誤魔化した。
「と言うコトで、エリカ案内して下さい」
「あっ……はい……こちらです」
エリカとエルリックの後を、和也達は黙って付いて行くのだった。
その中で、レオは和也に質問したいのに出来ないコトに、ちょっとムッとしている表情を浮かべていた。
ミラン達は、キャラバンを作る商人達(護衛の奴隷戦士、使用人としての奴隷などを常時使っている)の子供だったので、何か仕事をさせたいから、奴隷を買うのかな?という程度の感覚しか無かった。
そして、浅黄もゲームの中のコトなので、和也が奴隷を買うというコトをあまり気にしていなかったのは言うまでも無い。
それよりも、浅黄は、他の友人達がいない状況(和也を独り占めしている?)を楽しんでいた。
だから、心から、幸せそうな微笑みを浮かべて和也を見詰めてしまう。
もし、ここに緑川とか青木達がいたなら、速攻で突っ込みが入るのだが、今はいないので浅黄は1人幸せを誰にも邪魔されず堪能出来していた。
なお、その表情に気が付く者がいなかったのは確かなコトだった。
目的の侍女達がいる奴隷商人の檻の前で、和也達は立ち止まった。
すると、でっぷりと太った奴隷商が、わざわざエルリックの前に来て言う。
「若様、お待ちしておりました。
2人の元侍女の奴隷をお買い上げに
いらっしゃったんですよねぇ~」
「…………」
奴隷を買った経験の無いエルリックは頷くと、和也を見詰める。
すると和也は、苦笑してレオに命令する。
「レオ、旅先の宿での扱いが、ちょっと
気に入らないので、侍女が欲しいんです
交渉を任せてイイですね」
和也の命令にレオは、そうかと思って頷く。
〔確かに、アレックス様は見るからに
かなりの上位貴族だろうし
側近の姉弟は、護衛と話し合い手だろうから……
身の回りの世話は……いまいちだろうなぁ~
というか、この姉弟も上位貴族っぽいからなぁ~
お忍びでの旅行には向かないよな
だから、旅先で戦士を雇う
侍女は奴隷を買えばイイっていい加減な考えで
行動しているんだろうなぁ~
まっ何人も人数を引き連れての旅行は
飛竜騎士には向かないよな
少人数なら…飛竜に乗せてひょいっと…
飛んでいけるから……
ここは…俺が役に立つ男として認めてもらい
正式な部下にしてもらえるように頑張るかな〕
内心で色々と考えたレオは、奴隷商の前に立ち声を掛ける。
「はい、アレックス様お任せ下さい
では、元侍女って話しだが
2人を見せてもらおうか?」
「はい、お前達、あれらを連れておいで」
「「はい」」
「少々お待ち頂けますか?」
「構わない」
「毎日湯浴みをさせておりますが
化粧はさせておりませんでしたので
今日は改めて湯浴みをさせ化粧をさせて
それなりの衣装に着替えさせております」
「ふぅ~ん、その衣装や化粧品の分だけ
高くする気か?」
「そちらの若君と姫君は、侍女が欲しい
とのコトでしたから…………
あれらも、侍女としての相応しい姿を
させる必要がございますので………」
「見掛け倒しという言葉もあるが?」
「いえいえ、2人は仕えていた主が失脚し
罪に問われたので………
連座で奴隷に落とされた侍女でございますので
本人達も、下位貴族出身の者達ですよ
ですから、侍女として躾けられていますし…
容姿も美しい者達ですよ…」
などと、レオと奴隷商は、ぬらぬらとした会話をする。
それを、和也と浅黄がクスクスと笑いながら見ていた。
ちなみに、ミラン達は、その場所自体が怖いので、和也と浅黄の後ろにぴったりと付いていた。
その視線の先では、まだ、ぬらぬらとした会話が続いていた。
「ほぉ~」
「私としては
侍女として売りたいと思いましたので
生娘かどうかも確かめておりません
王宮から下げ渡され買った状態のままに…
なにひとついじっておりませんよ…
勿論…奴隷の〈輪〉も〈咒印〉も
付けておりません…」
高級感をアピールする言葉を並べたてる奴隷商に、レオは双眸ほ細めて言う。
「そうか…ならば…極上品だな……」