147★ロ・シェールの街10 お互いの通り名は?
ガロと子犬(子狼)達を上空に待機させて、和也と浅黄は、誰にも気がつかれずに地上にこっそりと降りた。
そう、誰にも見咎められることなく、こっそりと降りられたのだ。
ちなみに、誰にも気がつかれずにすんだのは、上空で遊んでいる子犬達の楽しそうな声が聞こえていた為だった。
そのセイで、市場に居た人間達は、何処から子犬達の声が聞こえて来るのか?と、キョロキョロとしながら、相変わらず辺りを見回していた。
が、影の薄い?和也の影響力もあって、極自然に市場の中に紛れることが出来ていた。
地上に降りた2人は、辺りを見回してから、お互いを見て笑う。
「良かった…どうやら、誰にも
気が付かれずにすんだようですね」
「そうみたいだね」
自分達が周囲に埋没してることを確認してから、浅黄は和也に問い掛ける。
「そう言えば和也
君は誰かと一緒だったの?」
そのセリフで、和也は重要なことを思い出して、さりげない風を装いながら、浅黄に言う。
「ああ、そうだった…
ボクは…今…
アレックス・ライト・ナインタークって…
名乗ってます
だから、浅黄くんも別名を名乗って下さい」
和也からの言葉に、浅黄はなるほどという表情で頷く。
「そうかぁ~…ハンドル名ね んじゃ
レオンハルト・ライト・カイエスって名乗るね」
「くすくす…浅黄くんも…
あの【黒○剣】の主人公をもじっていますね」
お互い、気に言っているゲームの名前を上げて、楽しそうに言う。
「だって、アレはおもしろかったからぁ~
技の種類も、古いゲームのわりにね」
「ですねぇ~みんなで嵌まりましたね」
「アレって、誰が持ってたんだっけ?」
浅黄の疑問に、和也がクスッと笑って言う。
「確か、緑川くんが
おじさんにもらったって言ってました」
その答えに、記憶を刺激された浅黄は、その事実を思い出して頷く。
「そうだったね…
古いゲームって、オンラインと違って…
のんびり遊べるからイイよなぁ…
なんか…まったりしてる……」
「ですねぇ~…このゲームは…
なんか凝ってい過ぎて……」
「うん、変に設定がキツイ感じがするね」
お互い、この次世代型ゲームの設定に思うところがあって、ついつい点数が辛くなる。
「なんか、けっこう融通が利かないし…
補正キャラとか…サポートキャラが
居ないからでしょうか?」
「じゃ…自分達で入れるしかないかも?」
「う~ん、面倒ですね」
和也が、浅黄とゲームの話しをしていると、ミランがおずおずという感じて話しかけてきた。
「あのぉ~アレックス様、そちらの方は?」
ミランの問い掛けに和也は苦笑する。
そう、ミラン達は、和也の隣りに現われた貴族っぽい少年に苦悩していたのだった。
ここは説明した方がイイと判断した和也は、にっこり笑いながら言う。
「ボクの友達です
名前は、レオンハルト・ライト・カイエスです
レオン、この少年は
案内として雇った、ミランです」
「へぇ~案内ねぇ~…
俺は…レオンハルト…宜しく」
和也の紹介の言葉にのって、浅黄はサラッと自己紹介をミランにした。
自分達を、観察するような視線を向ける浅黄に、ミラン達はドキッとする。
鷹揚と言うよりは、いい加減とか大雑把で優しい雰囲気をまとっている和也と違って、容姿端麗でどこか冷たい感じのする浅黄に、ちょっとヒビッたミラン達だった。
それでも、健気なミランは必死で挨拶する。
「ミランといいます
アレックス様に、ロ・シェールの街中の案内と
荷物持ちに雇われました…宜しくお願いします」
ミランの挨拶に、無言でにっこり笑ってすませる浅黄だった。
浅黄は、和也とチームメイト、極親しい人間以外に、興味が無い人間なので、大抵の人間に冷たいのが標準だった。
そんな浅黄の性格を把握している和也は、ちょっと苦笑しどうやって場を取り持とうかなぁ~と思ってしまう。
そこへ、奴隷商のエリアで別れたエリカ達がやって来た。
「アレックス様、ちょっとよろしいですか?」
エリカの真剣な様子に、何かあったのか?と思って、和也は質問する。
「エリカ、何か有りましたか?」
「はい、私達に仕えていた
侍女を2人見つけました」
「そう、見付かったんですね…他には?」
「いいえ、彼女達だけでした」
和也は、即断即決で確認するように言う。
「では、買取ましょう…それで…イイですか?」
エリカは、嬉しい反面、自分の主に迷惑がかかるのではという懸念から、確認じみた言葉を口にしてしまうのだった。