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146★ロ・シェールの街の上空 和也、浅黄と合流する



 動物好きの和也が、なるほどと納得しているところに、銀嶺は面白そうという雰囲気を含ませて、更に言い放つ。


 [ただ、この場に彼らが降りて来たら

 大騒ぎになるでしょうねぇ~]


 そのいかにも楽しそうな銀嶺の言葉に、和也は基本的な疑問を持って聞く。


 [えぇ~と…黄狼って

 人間をむやみやたらに襲うんですか?]


 和也の素朴な疑問に、銀嶺はあっさりと答える。


 [そんなことはしません

 ただ、人間が怯えるだけです]


 銀嶺の説明に、ちょっと眉を顰めた和也は、更に問い掛ける。


 [怯えた人間達に攻撃されたりしますか?]


 [いいえ、黄狼は強いので

 人間達は、遠巻きにするだけです]


 銀嶺からの答えに、無意識に頷いた和也は、今後の自分の行動を決める。


 [そうだったら

 知らない振りしてもイイですよね]


 [大丈夫でしょう]


 銀嶺の答えに、和也は面倒ごとはゴメンですという事なかれ主義を貫こうとした。

 その時には、聞こえて来る吠え声がより大きく聞こえて来た。


 そして、ミラン達が怯えた顔になって辺りをキョロキョロと見回すようになった。

 檻の中の動物達は、怯えて檻の隅に固まってブルブルと震えている。

 どうやら、周辺にいる者達も、黄狼の声が聞こえ始めたらしい。


 和也は、銀嶺との会話で、黄狼が空を駆けると知っていたので、空を見上げた。

 すると、そこには、色取り取りの子犬、もとい子狼と銀色の大きな狼が、市場に降りようとしている姿が見えた。


 流石に、このまま真っ直ぐ降りられたら、市場はパニックに包まれると思った和也は、咄嗟に魔法を使って、上空に上がった。

 そこで見たのは、銀色の狼に騎乗している浅黄の姿だった。


 初めてゲーム内で、友達に会えた2人は驚いてしまう。

 先に気を取り戻したのは、浅黄だった。


 「なんか久しぶりだね…和也…会いたかった

 本当に…このRPGの中の街で…


 ロ・シェールで会えると思っていなかったから…

 なんか…すごく嬉しい」


 満面の笑みを見せて嬉しそうに話し掛ける浅黄に、和也もにっこり笑顔(ちょっと黒が混じっている?)で言う。


 「ボクも嬉しいですよ…

 でも…ガロちゃんをしまって下さい


 このまま降りたら…市場は大パニックになり

 死傷者が多数出そうなので」


 和也の言葉に、ガロを信頼している浅黄が不満を混ぜて言う。


 「酷いなぁ~死傷者がでるなんて…

 ガロは人間を襲ったりしないけど」


 浅黄の気持ちは理解わかるが、いかにせん、子犬の数は多いし、成獣のガロはみるからにでかかった。

 その大きな狼が降り立った時に起こるだろう混乱を考え、和也はここで浅黄を諌めなければならなかった。


 「襲う襲わないの問題じゃないんですよ…

 怖がるコトが問題なんです…

 諦めて下さいね…浅黄くん」


 きっぱりと、そう言い切られた浅黄は、それでも離れることに未練があるので、正統な理由を口にする。


 「う~ん…オレ…ガロから降りたら

 真っ逆さまに落ちるんだけどぉ~」


 が、そんなことお見通しの和也は、浅黄が喜ぶだろう言葉をかける。


 「大丈夫です。ボクが魔法を掛けますから」


 ファンタジー世界の定番の魔法を掛けてくれるという和也の言葉に、浅黄は素直に感動する。


 「そう…和也が…オレに

 魔法を掛けてくれるんだぁ~…嬉しいなぁ…」

 そう言ってから、無意識に周辺をキョロキョロして聞く。


 「ところで、緑川とかは一緒じゃないの?」


 浅黄の質問に、和也は肩を竦めて首を振る。 


 「緑川くんには会ってません


 ロ・シェールで会ったのは

 浅黄くんが初めてです


 他のメンバーとも会ってません

 ボク達が一番乗りですね」


 和也からの答えに、頷いてから、ガロの背中を軽く叩いて言う。


 「そっかぁ~1番ね…

 じゃ、ガロここで待ってて」


 ガロは、自分が人間達の中に降りたらどうなるか、きちんとわかっていたので、素直に頷く。


 「はい。ますたー」


 こころよく頷いてくれたガロにニッコリと笑ってから、浅黄は和也を見る。

 そんな浅黄に、和也もニッコリとしてから言う。


 「じゃ、浅黄くん魔法を掛けますね

 『空歩』 これで良し…降りて下さい」


 「わかった」


 和也が魔法を掛けたと同時に、浅黄はなんの躊躇もなくガロから飛び降りた。

 目の前の空中を平気で歩く和也を見ていたので、浅黄は疑うことも無かったのだ。


 浅黄は、ちょっと首を傾げてから、和也の隣りまで歩いて行く。


 「とりあえず、合流できたな」


 「ええ、まにあって良かったですよ」


 〔正直…危なかったですよ…ほんとに

 ガロで降りられなくて、本当に良かった〕


 そう内心で呟いた和也は、ホッと肩から力を抜いた。

 こうして、和也は浅黄と合流したのだった。

 そして、やっぱり、和也同様、常識がない浅黄だった。









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