145★ロ・シェールの街中8 聞こえて来たモノは?
〔やっぱり、ファンタジー要素の強い
RPGらしく世界観も常識も違うんですね
まぁ…実際の現実世界には
グリフォンも飛竜も存在しませんからね〕
飛竜などの大型の幻獣の売買を城壁の外でするコトと、それに対する責任を放棄する城主(領主)に和也は驚いてしまう。
城壁の外側は、領地として扱わないという治外法権が存在しているのだ。
でも、それは、城壁の外側に農地など(=領地)が存在しない場合のみだった。
農地がある場合は、もっと外側の荒地で飛竜市は開かれるのだ。
そのことをミランは和也に説明しなかったのは、お貴族様でも、それぐらいは、知っているだろうと思ったからだった。
ミランは、和也に説明を続ける。
「城壁の外なら、街としては
なんの責任もありません」
「それって……」
「その代わり
売買による課税はありません」
「う~ん」
「アレックス様
飛竜って、滅茶苦茶高いんですよ
ですから、売り上げ税もかなりの金額になります
そんなモノ、商人だったら払いたくないんです
儲けが確実に目減りしますから……
この話しは、キャラバンであちこち歩いている
父達から聞いたモノですけど」
「…………」
「それに、グリフォンとか飛竜を盗める
盗賊や夜盗は、いませんから」
「ついでに、野生の動物は
飛竜とかを嫌がって避けますので」
「外での市は、そういうモノが主な商品なので
通称『飛竜市』って呼ばれています」
「それに、僕達の父達は
場所代金を払って、商品の売り買いをします」
「えっ…飛竜とかを売る商人に…
場所代金を支払って、商売するんですか?」
「だって、飛竜を買い(飼い)に来る人達って
ほとんどが、王侯貴族ですから、随員も多いし
飛竜を見たくって、市民も沢山来ますから
結構な商売になるんです」
「どんなに商品が売れて儲かっても
支払うお金は場所代金のみなんです
これは、物凄ぉーくお得なんです
アレックス様も、そう思いませんか?」
「う~ん確かにそうですね…でも…
『飛竜市』で、トラブルが発生した時は?」
その場合はどうなるのかと問い掛ける和也に、ミランはあっさりと答える。
「飛竜を扱う商人は、飛竜商って呼ばれています
彼らは飛竜を育てて、人間に有る程度従うように
躾けを入れる訓練をする者達でもあるんです
ですから、下手な戦士より強いんです
だから、買い物に来た市民を護るコトも
王侯貴族を護るコトも出来るんです」
「なるほどね…ってコトは『飛竜市』じゃないと
飛竜やグリフォンは見れないんですね」
「はい…今年は、ロ・シェールでの
『飛竜市』はありませんので……」
「残念ですが仕方ありませんね
ここは、小型動物を見て楽しみますか」
こうして和也は、エリカ達やレオを待ちながら、見たことの無い動物達を堪能していた。
そんな時に、遠くの方から嬉しそうに駆けたりしながら、じゃれて遊ぶ子犬?犬?のアンアン、ワンワンという声が聞こえてきた。
その愛らしい声に、和也は足を止めて耳を傾けながら、首を傾げる。
市場にペットを連れて来るコトは、禁止されていると聞いていたから。
ミラン達は、和也の様子にちょっと小首を傾げながら黙って動くのを待つ。
その間も、子犬?らしい声が聞こえている和也は、愛らしい声が気になって、何処から聞こえてくるのか?と辺りを見回していた。
しかし、周りには声の主であろう、子犬?の姿は見当たらなかった。
ついでに、周りの人間達を観察しても、和也のように子犬の声が聞こえていないようだった。
和也が不思議でしょうがないという顔をして、小首を傾げていると、銀嶺の声が聞こえてきた。
[ますたー…あの声は…黄狼の子供達の声です
この上空で遊んでいるんでしょう……
たぶん…親も一緒でしょう]
身の内に潜ませた銀嶺からの言葉に、和也はきょとんとする。
[おうろう? ですか…でも…なぜ…
みんなには、聞こえないんでしょうか?
黄狼…つい最近、聞いたような名前ですねぇ]
和也の疑問に、含み笑いを潜ませた声で銀嶺が答える。
[それは、ますたーが
私と《契約》しているからです
そのセイで、聖獣や幻獣や霊獣や神獣などの声が
聞こえるんです]
理由を知って、和也は頷く。
[そうですか…空耳じゃなかったんですね
ほっとします]
子犬?の声が聞こえる不思議の内容に、安堵の溜め息を吐いた。
立ち止まって、真面目な表情で小首を傾げる和也の様子に、ミラン達は不思議そうな表情で、黙って見ていた。
そう、内側での会話なので、ミラン達に、その会話内容は聞こえなかった為に…………。
そして、もし、聞こえていたら、それだけでパニックに陥っていただろう内容だったが、常識の無い和也にはわからないことだった。