139★ロ・シェールの街中2 エルリックのお買い物
和也は、悪戯を思いついた少年の顔で、エルリックに話し掛ける。
「それじゃ、このお金で、適当な食べ物を3人分
エルリックに買ってもらいましょう
イイですか?」
和也に、買い物を頼まれたエルリックは、手渡された袋の中を確認する。
その中には、ちゃんと小額の銅貨も銀貨も入っていたので、エルリックはにっこり笑った。
そんなエルリックに、和也は小さな声で命令?する。
「ここは、街中なので、ボクを呼ぶ時は
アレックスと呼んでください」
「はい、すぐに食べられる串肉とか
果物とかを買ってきます」
和也に、初めて命令?頼まれて?お仕事をするいうコトに、エルリックははりきって屋台に小走りで向かった。
その後姿を見ながら、和也は始めてのおつかいを思い浮かべていた。
そんな和也達の周りを気にしない(=警戒しない)のほほんとした貴族のお坊ちゃまお嬢様な会話に、その会話が聞こえた範囲の人間達は、色々な思惑を持った。
ある集団(俗に言うごろつき、ちんぴら)は、にやにやと人の悪い表情を浮かべていた。
そして、自分達の思い込みで、楽しそうに会話を始める。
「どこのお貴族様か知らねぇーけど…………
かなりの上位貴族だよな」
「あの主って感じの少年は
確実に伯爵以上だろうぜ」
「仕えているって感じの2人も
貴族らしい匂いがぷんぷんするぜ」
「ああ…容姿もかなり…綺麗だから…
間違いなく…上位貴族だな」
「ここは、お近づきになって……
色々とお教えしてやろうぜ……」
「んで、たぁ~っぷりと、お代を頂こうぜ」
「金貨でも、カ・ラ・ダでもさ」
そんな彼らの会話を、眉をひそめている人間達も居たが、彼らに絡まれるのは、ちょっといやかなり怖いと思い黙っていた。
が、それを知って、行動に移す者達もいたりする。
それは、街に幾らでも居る浮浪児や親の庇護があまり無い子供達だった。
子供達は、日々の糧を得る為に、仕事を必要としていたから。
その中には、キャラバン(帰って来ない親を持つ)の子供達もいた。
キャラバンの子供達は、別の思いで会話を始める。
「ミラン、あのお貴族様をどう思う?」
「ましな貴族だと思うよ、マック」
「なぁ~街の案内したら
俺達に腹いっぱいのご飯を食べさせてくれるかな?」
「ウィル、上手くやれば
ご飯の他にお小遣いをくれると思うよ」
「ねぇ~お兄ちゃん、あたしが話しかけてみるよ」
「お兄ちゃん、僕も一緒に行くよ」
「ミーナ、ミルド、気を付けるんだよ」
「「うん、行ってくるぅ~」」
グループの中で1番と2番の小さいコンビが、和也達の元に向かった。
それを見送るミラン達は、上手くいってくれよと商売の神エーベスに祈っていたりする。
彼らは、このところ小さな仕事をもらえず、昨日から何も食べていなかったから、かなり切実になっていたのだ。
他の浮浪児達も、和也に近寄りたかったが、身なりが今ひとつ悪かったので遠めに見ているだけだった。
そして、ミラン達のグループが上手くいったら、おこぼれをもらおうとじっと彼らを見ていた。
そんな思惑を持つ者達の他に、仕事にあぶれたハンターや戦士などが、和也達の護衛や案内役になりたくてウロウロしていた。
彼らは、和也達にごろつき達が絡むのを期待している。
そこを助けて護衛になろうなんてコトを思っていたりする。
色々な集団に注目されている中で、エルリックは屋台で美味しそうな串刺し肉と、果物を搾ったジュースを持って帰って来た。
「アレックス様、これを」
買ってきたモノを差し出された和也は、にっこり笑って受け取る。
「ありがとう、エルリック、じゃ、エリカも」
「はい」
和也と同じように、エリカもエルリックに串刺し肉とジュースをもらっった。
それを確認した和也は、ひっそりと言う。
「いただきます」
和也の言葉を聞いたエリカ達も言う。
「「いただきます」」
わきあいあいと食べ始めた和也達に、ミーナが話し掛ける。
「お兄さん達、この街は初めてでしょ?」
「そうだけど?」
「あたしは、ミーナ
こっちは、弟のミルドって言うの
それでねぇ~あたし達が、街の中を案内するし
買い物とかの荷物持ちもするよ」
「だから、ご飯をじゃなくて……お小遣いを……」
一生懸命という表情で喋るミーナに、和也は苦笑する。
これは、もしかしなくても
ストリートチルドレンですね
盗みや売春をする程には
追い詰められていないんでしょうか?
この2人だけで、生活出来るとは思えませんから……
和也は、2人の顔色や健康状態を見てから、辺りに視線を向けた。