138★ロ・シェールの街中
レオニールの苦笑に向かって、求職中のハンターが言う。
「あの若さと、見た目(とても細く華奢な姿)で
あの強さだし、繁殖期のトゲムシなんて高級品を
お前みたいな流れの戦士に平気で丸投げするんだ
簡単に獲れるから、いい加減なんだよなぁ~……
イイよなぁ~………金に汚くなくて………
与えられた仕事を、ちゃんとすれば…
きちんと…評価してくれるって…噂通りの…
飛竜騎士に会えるなんてさぁ~………」
「俺達も雇って欲しいんだよ」
「そうそう」
「ここんとこ、キャラバンの動きは悪いしよぉ
きな臭い噂が多いからなぁ~………」
「戦はゴメンだぜ」
「俺らはハンターだし…戦争は係わりたく無い」
「戦士ったって、俺らは傭兵じゃない…
盗賊や獣なんかが相手の商売だからさ…
戦の訓練なんて受けて無いし……」
何度も一緒に仕事をした者達に、口々に和也の仕事をしたいと言われて、レオニードは苦笑する。
頭をガシガシとかいてから、1つ溜め息を吐き出して言う。
「ったく、判った…紹介ぐらいはしてやるから
…さっさと運べよ……」
レオニードから、欲しかった言葉を貰うと彼らは、トゲムシのもとに走って行く。
その途中で、口々に、レオニードにお礼を言う。
「ありがとよ……おう…運ぼうぜ…」
「そうだな……さっさと運んで……新しい仕事を
紹介してもらおうな…助かったよ…ありがとう」
「おう…さっさと運んで…仕事をしような……」
商人達の馬車に、次々とトゲムシを運ぶ彼らは、心底楽しそうに見えた。
そんな彼らを見て、軽く頭を振ったレオニードは、トゲムシの種類(繁殖期のオスとメス+通常時の固体)と数の確認をしていたのは言うまでも無い。
こうして、和也の与り知らない間に、雇う人間が増えていたのは確かなコトだった。
一方の和也は、街壁の前にある門を、身分証明書無しにするりと通っていた。
門番との会話を面倒臭いと思った和也は、精霊達に人間の認識を阻害をする魔法をかけてもらったのだった。
ふふふふ………認識阻害とか透明化とかという
ズルイ? 方法を、さっさと思いつけば面倒は
無かったのかも知れないませんねぇ~
クスクス………でも、トゲムシを倒したお陰で
レオニードという、世慣れた渡りの戦士を手に
入れた? コトを考えれば、これはこれで
良かったと思うべきですね
何にしても、人間がいっぱい居る都市にやっと
辿り着きました
冒険者のギルドか、ハンターギルドに行ってみ
れば、ボク以外の誰かが居るかもしれませんし……
レオニードと合流する前に、確認ですね
誰も居なかったら、街中を冷やかして歩くのも
一興です
それに、この服装を着替えたいですし………
適当な古着屋でも見つけて、旅人らしい服装に
なるのもイイですし………
でも、こんな街中で買い物をするというコトは
……値切る必要がありますね……
う~ん…ボクには…何か…無理そうな気が………
エリカ達に聞いてみましょう…
街壁を離れ、大通りを都市の中心部に向かって歩きながら、和也はエリカとエルリックに質問する。
「エリカ、エルリック…君達は…街中で買い物を
したコトはある?」
和也の問い掛けに、エリカとエルリックはお互いの視線を合わせて苦笑する。
先に、エリカが口を開いた。
「買い物をしたコトはありますが……それは……
欲しいモノを指差しただけで…………
それを…侍女や従者が…買ってくれましたので…
自分で買い物をしたかと言うのは……」
「僕も、侍女か従者に買ってもらいました……
屋台の食べ物だったら……ちょっと…お祭りで
買ったコトがあるぐらいです」
エリカとエルリックの答えでは、役に立たないと即座に和也は判断した。
「そうですか…2人とも貴族でしたね……
困ったなぁ~…ボクは、値切るって行為を
したコトが無いんです
ここでは…買い物は出来ませんね」
ガックリしている和也に、エリカ達は頭を下げる。
「「すみません、お役に立たなくて………」」
「あぁ…気に病まないで下さい……ボクは……
お金の価値も……品物の相場も、イマイチ……
わかりませんから……
ここは、欲しいモノを見繕っておいて…後で…
合流したレオニードに買ってもらいましょう
特にエリカは、女の子だから、色々と必要な
モノもあるでしょう
チカ達に作ってもらうんじゃなくて…………
普通の品物も欲しいでしょうから……ねっ」
和也の思いやりに溢れた?言葉にエリカは嬉しそうに頷いた。
「はい」
和也は、歩きながら串にさした肉とか果物、パンモドキなどを食べながら歩いているのを見て、エルリックを振り返った。