137★ロ・シェールの街中へ
ちなみに、頷いた和也の内心は、わりと打算的だった。
ふむ…どうやらレオニードさんは、渡りの戦士で
動物の知識がありそうで………
親切…誠実な感じですね
それに、なんとなく《力》もありそうです
せっかく、彼と知り合ったんですから…ここは……
雇ってしまいましょう
ガラム達との約束もあります
人探しを依頼するのも一興です…
結果が出たら…ラッキーぐらいの感覚でいきましょう
うん…そうしましょう…RPGの…お約束ですね
ゲーム補正も有るでしょう…たぶん…きっと………
そして、考えがまとまった和也は、レオニードに提案する。
「それじゃ…レオニードさん…次の仕事が決まって
ないんだったら……ボクと《契約》しませんか?」
まさか……この少年が…俺の主?
アレックス(和也)は俺よりかなり強いよなぁ~……
でも…後ろにいる2人の従者? よりは…俺の方が
確実に強いし、世間の常識も…動植物の知識も有る
色々なところも旅して廻った…それなりに、経験は
ある…主の役に立つよな……あの2人より確実に……
レオニードは、内心で和也の提案を受けるつもりだったが、表情は驚いたままにしていた。
少しでも自分に有利な条件で、仕事は《契約》したいと思う渡りの戦士の本能?らしい……だから、レオニードは首を傾げて言う。
「アレックスと《契約》ですか?」
ちょっと不審感があるんですという表情のレオニードに、和也は内心で苦笑する。
そこで、和也は、丁寧に説明する。
「ボクに、知識を下さい…それと獲物の売買とかを
頼みたいんです…それに…あとで、もうひとつ頼む
かもしれません」
説明を聞いたレオニードは、エリカ達を見詰めながら質問する。
「アレックスの後ろにいる2人は?」
質問に、和也は自分を棚に上げて言う。
「もとが、貴族なので…世間知らずなんです…
だから……」
和也の答えに、レオニードは笑ってしまう。
やっぱり、上位貴族だったか………
貴族を、従者にしているってコトは……
アレックスと名乗る少年は……伯爵以上だな
世間知らずって…自分もでしょ…って…突っ込みは…
入れないでおこう
機嫌を損ねるキケンは避けよう……取りあえず……
《契約》して、本当に俺の主なのか確認しよう
「判りました…アレックス……ハンターギルドで…
正式な《契約》をしましょう……」
「助かります……じゃ……」
レオニードが、自分の提案を受けたので和也は、その場所に留まる意思をなくしてしまう。
そして、和也は、レオニード達護衛や商人達と別れて城壁の門へと向かった。
残されたレオニードは、自分と一緒にキャラバンの護衛をしていた流れのハンターや戦士達に声を掛ける。
「みんな、新しい仕事だ。トゲムシを運ぶと言った
商人達の馬車に、コイツラを持って行ってくれ……
報酬は、聞いていた通り、ハンターギルドで払う」
「おう、わかった…けどよ…ちっとイイか?」
レオニードの言葉に、頷きながら言い返す者がいた。
それに、首を傾げながらレオニードが答える。
「なんだぁ」
濃い茶髪のハンスが、ぼそぼそと言う。
「なぁ…レオ…俺達も新しい雇い主に………
紹介してくれよ………」
その発言の内容は、その場に居た戦士達やハンター達の内心を代弁しているモノだった。
それに賛同する声が同時に上がる。
「「「そうだ…そうだ」」」
「何度も、一緒に仕事した仲だろ」
「おんなじ、獣人なんだから………
一緒に仕事してもイイだろ」
「だよなぁ~…あの姿なんだから……
かなりの上位貴族の若君だろ?」
「それなのに、かなりおおらかで………
貴族らしくないから、飛竜騎士だろ?」
「うっ……」
そのセリフに、レオニードは内心で舌打ちする。
実際、レオニードもそう思っていたので…………。
「上位貴族でも、飛竜騎士だと……仕えて………
気に入られると……そのまま、ずぅーっと雇って
くれるって有名だからなぁ~」
「なんで、そう思うんだよ」
「んなもん……ちっと考えれば…判るだろ…」
そのセリフに、レオニードは苦笑するしかなかった。