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135★ロ・シェール城壁前にて



 自分より縦も横も小さい和也に、怯えてしまい恥ずかしかったので……レオニードの言葉はぶっきらぼうになった。


 「俺になんの用だ?」


 むっとした表情を浮かべたレオニードに、緋崎君に似ていますねと思いながら、和也は言いたいコトを言う。


 「トゲムシの倒し方を聞きたいんです」


 自分達(護衛達)と比べたら、かなり小柄で華奢?な和也が、凶暴なトゲムシと戦おうとしているコトにレオニードは驚いた。

 無謀なコトをするなという思いを込めて、レオニードは和也に尋ねる。


 「少年…君が…倒すつもりなのか?」


 レオニードの心配そうな声に、和也は苦笑する。

 トゲムシの大きさや凶暴性など……巨大なサンドワーム(切り方を失敗すると即……再生する…)や、毒持ちの巨大なスナワニを叩き斬った和也にとって、そこまで大変だとは思えないのだった。

 だから、和也は、しれっと自分の言いたいコトを答える。


 「もちろんです…あんな場所で、あんなモンのセイで

 交通渋滞を作られると……何時までたっても、街中に

 入れないじゃないですか……


 ボクは、友人達と待ち合わせしているんです

 ですから…さっさと…中に入りたいんです


 その為に…トゲムシは邪魔です…

 だから…処分したいんです…」


 獣人の自分でも、繁殖期のトゲムシはちょっと避けたい(無傷でトゲムシを狩りつくすコトは出来ないので)と思っているのに、目の前の少年は、淡々と自分のやりたいコトを言う。


 ならば、倒す方法を教えて、危なくなったら助けてやれば良いと、ちょっとヒトの悪いコトを考えてしまう。


 だから、レオニードは和也に甘く優しく囁く。

 トゲムシを倒す方法を…………。


 「あいつらトゲムシは、魔法攻撃に耐性が有るから

 物理攻撃のみで倒すしか無い


 ただし、やたらめったら、弾力が有るからな

 よほどの《力》がなければ叩き斬るコトは難しいぞ


 それと、あのトゲを攻撃してくる相手に飛ばすなんて

 コトも出来るから……不用意に近付くと危ない


 あのヨダレは強力な消化液だから、触れれば溶ける

 つまり接近戦でしか攻撃出来ないのに、あいつらの

 攻撃の手数が多い相手だから、倒すのは難しい


 1匹に攻撃すると、全部が…いっせいに攻撃者に

 向かって来るからな…気をつけろ……


 ただし…あいつらの肉は、ワイバーンの好物だから

 高く売れるし…トゲと牙は、色々な物に加工出来る

 から喜ばれる


 そして、ヨダレは、薬の材料になるってコトだな

 だから、倒せれば結構な金になるぜ


 ああそうだ…赤や黄色のトゲに生えている、小さな

 トゲは勢力剤や媚薬の材料になる

 これが…結構、イイ金になる」


 トゲムシの攻撃方法と、素体としての価値を聞いた和也は、にっこりと笑い、邪魔なフード付きマントを、付いてきたエリオットに放り投げる。

 それを受け取ったエリオットとエリカに、和也は爽やかに笑って言う。


 「ちょっと持っていて下さい。エリカ、エリオット」


 そして、和也はオリハルコンで出来た細身の直剣を音も無く抜き、目にもとまらぬ速さで何度も振りぬく。


 微かな風音と共に、トゲムシは剣圧のみで真っ二つに切られていく。

 和也に、攻撃するコトも、抵抗するコトも、叫び声を上げるコトも出来ずに、トゲムシは左右に分かれた身体を晒して倒れ微動だもしない。


 淡々と細身の剣を振るい、すべてのトゲムシを斬り捨てた和也は、ひときわ大きく剣を振り、鞘に納める。


 そのカチリという微かな音に、レオニード達は、はっとする。


 その時には、エリオットからフード付きマントを和也は着せかけられ、白い豪奢な軍服を隠していた。


 なお、レオニードやキャラバンの商人や旅人達は、和也の白い豪奢な軍服を見ても珍しいと思っただけで特に驚くコトは無かった。


 白い軍服に意味を見出すのは、飛竜騎士とその家族及びその関係者のみだったから。

 和也は、自分の服装を見ても反応が無かったので、内心でほっとしていた。


 マントが邪魔だから…つい…脱いでしまいました

 でも、誰も変な反応をしなかったのでほっとしました


 もしかしなくても……この服装は…飛竜騎士とか

 精霊とかにしか意味は無いのでしょうか?


 ……後で…エリカ達に聞いて確認しなければ………

 でも…このトゲムシの山はいただけませんね


 どうにも邪魔です…それに…お金になるといっても…

 これらを運ぶのも面倒です…困りましたね…………

 

 首を傾げている和也に、気を取り直したレオニードが声を掛ける。


 「俺は、渡りの戦士レオニードって言うんだ」


 唐突に自己紹介してくるレオニードに、和也はちょっと困惑顔になる。


 「……?…?…」


 そんな和也に、レオニードが問い掛ける。


 「あんたは、1人なのか?

 それとも、後ろの2人は連れなのか?」


 わかりやすい問いかけに、和也はちらっと後ろの2人を確認してから答える。


 「ボクは、アレックス、後ろの2人は

 エリカとエルリックです」


 和也のセリフに、レオニードは表情を取り繕いながら、親切ごかしに言う。


 「子供…3人じゃ…あの大量なトゲムシは

 運べないだろう?」


 レオニードの確認を含む言葉に、和也はあっさりと肯定して、その言葉に含まれるモノを問い掛ける。


 「ええ……それで?」


 話しを促されたレオニードは、にっこりと笑って言うのだった。








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