134★何時になったら、ロ・シェールに入れる?
キャラバンの護衛?らしい男達が、トゲムシから十分な距離をとって暗ぁ~い会話をしていた。
その中に、トゲムシの生態に詳しい男がいたので…………。
護衛?の男達に説明をしていた。
「なぁ……なんで、あんなに大きなトゲムシが
ここに居るんだ?」
「それより、こんなに数が居て、ガブガブと
噛み合いしているんだ?」
「あいつら、本来は地中に居るはずだろ?」
トゲムシに詳しい金髪の男レオニードは、ちょっとイヤそうな顔をしながらも、へろりと答える。
「いや……この時期は、繁殖の為に、地上に
出て来るんだ」
レオニードの答えに、質問した男は感心する。
「へぇ~……そうなんだ……」
そんな2人の会話に、割り込んだ茶髪の男が、他の護衛達に疑問を口にする。
「あそこに、1匹だけ棘が赤いトゲムシが居るだろ?」
「ああ赤いのは、1匹だけだな…他は…黄色いのに……」
「何で、棘の色が違うんだ?」
濃い茶髪と明るい茶髪と普通の?茶髪が、棘の色について話していると、レオニードが、あっさりと説明する。
「ああ…あれは…繁殖期になると、棘は、黒から黄色
または……赤に、変わるんだ」
その説明に、首を傾げる茶髪に、残りの茶髪が話し掛ける。
「繁殖期?」
「ほら、春先にネコが鳴くアレだよ」
「ああ……アレね……」
自分達なりに納得した彼らに、レオニードが改めて説明する。
「赤は、成熟したメスで、黄色は、成熟したオスだ…
あっちに…何時も見る黒い棘を持つトゲムシが居るだろ」
濃い色の茶髪の持ち主は、ふとカマキリを思い出し、ちょっと、いや、かなり嫌そうな顔をしながらボソボソと言う。
「へぇ~……オスとメスねぇ~……なるほど……
交尾をしようとしているのか?」
顔を顰めている男に、レオニードは淡々と答える。
「その通りだ…1番強いオスが、メスを手に入れる」
濃い色の茶髪は、背筋に悪寒を感じながら、希望的観測を口にする。
「じゃ~メスと交尾したら、地下に戻るんだろ?」
その表情に、レオニードは言葉を濁しながら、イヤァ~ンな説明をする。
「いや、残念ながら……卵の為に栄養が必要なんだ……」
いくらレオニードが言葉を濁していても、茶髪の彼らは気が付いてしまう。
自分達がトゲムシの捕食対象になってしまうコトを…………。
ようするに、襲われる(喰われる)対象に、これからなってしまうコトに。
そう逃げたいと思っても、キャラバンの護衛として雇われているので、弾力が有りすぎて、剣では切れないトゲムシと戦うコトに…………。
「「「「「それってぇ~………もしかして…」」」」」
そんな彼らにレオニードは、心底嫌そうにトドメを刺す。
「はぁ~……そう、君達の想像通りなんだよなぁ……
倒したオスを食い尽くしたら…次は…俺達が食われる
だから、オスとメスが交尾を始めたら逃げるんだ………
とにかく、なにをおいても逃げるんだ……それしか無い」
どうあっても逃げられない運命に、茶髪達は叫ぶ。
「「「「「ウッギャー……ハンター呼べぇ~……
警備隊は……まだかぁ………」」」」」
トゲムシに詳しい男の説明に辺りは、阿鼻叫喚の騒ぎになった。
それを和也は黙って見ていた。
う~ん…トゲムシって…剣で切れるんでしょうか?
それとも、魔法で焼き払うとか?…凍らせるとか?
どの方法が…イイんでしょうか?
あの男に聞いてみましょうか?
せっかくココまで来たんですから、ロ・シェールの
中に入ってみたいです……
でも……身分証明書の類いは持っていませんから………
ここは、あのトゲムシをたったと倒して…………
どさまぎで、中にはいりましょう
思考がまとまった和也は、トゲムシに詳しいレオニードに声をかける。
「あのぉ~ちょっとイイですか?」
気配が薄い状態の和也に声を掛けられて、緊迫状態にあった男達は…………。
「「「「ウッギャー…………」」」」
その途端、レオニードと茶髪達は、悲鳴を上げて飛び上がった。
その反応は、緋崎や他のチームメイトと同じ反応だった。
その為、和也は、ゲンナリしてしまう。
はぁ~……RPGの中の人間達にまで、こぉ~んな
反応されると、流石にへこみますね
でも、さっさと対処方法を聞かないと、なんか間に
合わなさそうですしねぇ…………
ここは、文句を言うのは後にして、手遅れになる前に
倒し方を聞きましょう……不本意ですが……
エリカやエルリックもいますし、ここは、穏便にして
あげます……全ては、トゲムシを倒してからにします
和也は、内心で色々と思っていても、それを口にしないで耐える。
そして、再度、レオニードに質問する。
「ちょっと…聞いてもイイですか?」
再度の問い掛けに、レオニードは、振り返り、和也を見てほっとした顔で答える。