133★ロ・シェールまであとどれくらい?
ロ・シェールから、少し離れた場所に降りた和也は、銀嶺に話し掛ける。
「銀嶺、ここで待つ? それともボクのなかに入る?」
「ますたーのなかに…………」
「ん……わかった……」
和也の了承の言葉とともに銀嶺は、きらきらと輝く粒子になって消えた。
それを見て、驚いて声も無いエリカとエルリックだった。
和也は、自分と姉弟の服装を見て苦笑する。
そして、チカに話し掛ける。
「チカ…フード付きマントを3枚用意して………」
「はい…ますたー」
チカは、色取り取りなフード付きマントを和也達の前に差し出した。
どうやら、和也の好みで選んで欲しかったらしい。
その中で、和也は、目立つかもしれないが、黒が好きなので黒のマントを選んだ。
それを見た二人も黒のマントを手に取った。
黒のマントを肩にして、フードの襟元のボタンを和也ははめた。
その姿を見て、2人もマントを身につけた。
布がたぁ~っぷりなマントなので、和也の服装も二人の服装もきちんと覆った。
和也は、2人の姿を見て、自分の服装も隠れていると確認した。
そして、自分の周りで漂っている精霊達に和也は話し掛ける。
「エン…皆と一緒に…姿を消して…人間に
見付からないように……………」
「はい…ますたー…俺が必要な時は…名前を
呼んでください……」
頭を下げたエンは、何かあったら自分を呼んでとアピールして消えた。
その後、他の精霊達も次々と消えていった。
ただ、チエは消える時に、和也の手に金貨などの入った袋を手渡していた。
もし、ロ・シェールに入った時、買い物が出来るように…………。
意外と気が聞くチエだった…………それは、地の精霊として、人間の生態を知っていたからだった。
和也達は、精霊達が全て消えるとロ・シェールに向かって歩き出した。
砂漠を少し歩くと、和也達は、地上からかなり高い街道を見付け、その上にのぼる為の階段を探す。
きょろきょろしながら3人は、辺り一面を見たが、のぼるための階段が無いので困ってしまう。
和也は、この世界の常識を知らない。
そして、貴族だった姉弟は、領地と王都を移動するとき、使用人達が全てを整え(最初から街道しか馬車で走っていた)ていたので、都市近くの街道に、危険を避ける為に、階段が無いコトを知らなかったのだ。
街道を見ても階段が無かったので、和也は、魔法を使うことにした。
「エリカ、エルリック…魔法を使います…
イイですか? ……」
「「はい」」
和也の問い掛けに、2人はにっこり笑顔で答えると同時に、優しい風を受けて和也達は街道の上とのぼった。
そこには、渋滞している馬車の群れが、遠めに見える。
好奇心の強い和也は、魔法を維持した状態で、渋滞している馬車の先頭を目指すことにした。
その間に、和也は姉弟に質問していた。
「都市に入る為に、馬車の渋滞って…けっこう…
あるんですか?」
「私達は、領地と王都の移動しかしたことが
ありませんが…このように…馬車が長い列を
作っているのを見たことがありません……」
エリカの答えに、和也は首を傾げるが、渋滞の原因が知りたくて先を急ぐ。
日暮れが近い時間なので、渋滞した馬車に、新たな馬車が加わって行く。
馬車に乗っている彼らは、早く安心して休める(旅の途中は基本、商人達は野宿しているので)都市に入りたくてイライラしている。
そんな彼らに、あえて和也は、RPGの定番の呪文(質問)という行動を取らない。
渋滞に嵌まっている人間はイライラして、何を尋ねても答えなかったり、くだらない話しを延々とするコトを知っていたから…………。
だから、和也は、渋滞の先頭の方まで見に行くコトにしたのだった。
その姿は、かなりの速度で走っているのに、黒いフードは、風に飛ばされることは無いし、またマントは地に着いていないという妖しげな魔法使い?呪術師?という状態だった。
和也達に追い越される馬車に乗っていた人間達は、そのうさんくさい姿に皆は黙って見ているだけにしていた。
下手に声を掛けたら呪われそうだと思っていたから…………。
和也が知ったら、メチャクチャ嫌そうな顔をするのは確実だったりする。
なお、蝶よ花よと育てられた貴族であるエリカとエルリックにも、一般常識は足りなかった。
俗に言う経験値が無いという状態だったりする。
そんな3人だったが、あっさりと渋滞している馬車の先頭にたどり着いた。
その馬車の遥か前方には、口から唾液?消化液?毒?を吐き出しながら、くんづほぐれず戦っている?イモムシに剥き出しの牙(乱杭歯?)と背中に大きな棘と尻尾にも鋭利な棘を持つモノが居た。
それを見た和也は眉を顰める。
う~ん……気色の悪いモノが……城壁の門の近くで
戦っていたら……その脇を通って門を潜るなんて……
出来ませんね……渋滞になって陶然です
いったい、ここの警備はどうなっているんでしょうか?
この世界では、得体の知れない動物や魔物など
ウヨウヨと居るンですから………
きちんと対応して欲しいモノです
まして…出入り口の門で…こんなに渋滞していたら…
都市の物流が滞てしまいます……
早急に対処して欲しいです
って…ボクってば……馬鹿……
ロ・シェールの概観だけを見る予定だったのに………
なんで…こう…予定外の行動を、取ってしまうんでしょう……
困ったモノです
とりあえず、情報を手にする為に、立ち聞きにセイを
だしましょう
和也は、1つ溜め息を吐き出すと、辺りの声を拾うことにした。
すると、商人や貴族やその護衛などの会話が耳に入ってきた。