132★ヴァルキューレは、竹を割ったような性格?
和也は、自分でも少し虚しいかもと思いつつ、もう少しで良いから【黒の剣】を大事に扱ってもらおうと、言ってみた。
「でも…もしも落としたら…誰かに拾われるのでは?」
だか、あっさりと≪いちの戦乙女≫に切って落とされる。
「それは ありえない」
そう言い放つ≪いちの戦乙女≫の背後では、他のヴァルキューレ達が楽しげに微笑っていた。
「どうしてですか?」
和也の素朴な問いに、≪いちの戦乙女≫はさらりと答える。
「扱う資格の無い者は 【黒の剣】を握るコトは
出来ない それでも 無理矢理握ろうとするならば
触れた時点で死ぬ それを知識や理性や《力》や
生存本能があるモノは知っている
だから気にするな」
あまりな発言に、和也は愛着を覚え始めた【黒の剣】を、少しでも丁寧に扱ってもらおうと、更に言い募る。
「落っことしても、誰も拾えないのは判りました
でも、放り投げたら何処かに落ちて、何処にあるか
判らなくなってしまいませんか?」
≪いちの戦乙女≫は、クスッと微笑って言う。
「それも無い 【黒の剣】は主を選ぶ
そして 主の下に帰る《力》を持っている
故に 落ちたとしても 我が手か 我が母の手か
君の手に戻るだけだ」
和也の、少しは丁寧にという希望は、その発言で綺麗に砕け散った。
内心で、かなりがっくりする。
あぁ……やっぱり…女のひとですねぇ………
……口では敵いません……はぁ~……
「そうですか」
「そんなにイヤそうな顔をするな
では 私が そなたのもとに行こう」
和也のもとに、≪いちの戦乙女≫はバイコーンペガサスを寄せて、ふわっと和也の前に飛んで来た。
そして、にこやかに笑って手を和也に差し出す。
その手に和也は、【黒の剣】を差し出した。
【黒の剣】を受け取った≪いちの戦乙女≫は、生真面目な和也に、にっこり笑う。
「確かに 【黒の剣】は受け取った」
「はい…では、お礼にこれらを」
≪いちの戦乙女≫は、和也の差し出す色鮮やかな《魔石》を見比べて、黒い笑顔を浮かべる。
「改めて見ると 今回の《魔石》は
色も鮮やかで《力》に溢れている
これなら あやつらに くっくくくく
色々な罠を仕掛ける時に使える」
そう言って、色も鮮やかな《魔石》を幾つか≪いちの戦乙女≫は受け取った。
「また 【黒の剣】が必要な時は
私を呼べ また 会おう」
和也に、イイ笑顔を見せて≪いちの戦乙女≫とヴァルキューレ達は、天の門を目指して駆け上がって行った。
ヴァルキューレ達を見送った和也は、銀嶺に質問する。
「あとどのくらいで、ロ・シェールに
降りるんですか?」
「もうすぐです…今から…下降します」
銀嶺は、和也の質問に答えるとゆっくりと下降し始める。
それを感じた和也は、改めて地上に目を向ける。
すると、確かに、茶色い都市?らしいモノが見えてきた。
どうやら、ロ・シェールにかなり近付いていたらしい。