125★敵キャラ登場?4 ヴァルキューレと妖魔
改めて和也は、赤髪の妖魔を見詰めて考える。
結構な美形なのに…ボクより…そんなに…弱いの?
なんか残念美形って、言葉が浮かんでしまいます
綺麗なほど強いって言う……魔物の法則が……
このRPGでは、通じないんですか?
はぁ~……なんか切ないんですけどぉ~…………
「そんなに弱いんですか?」
和也の戦いたいのに、弱い相手はつまらないという表情に《いちの戦乙女》は苦笑する。
自分の強さの自覚が カケラもないんだな
ここは きちんと説明した方が良いか?
「君は…人が作った邪神以外のすべての
神々の加護と守護を得ている………
そんな君を…現世で傷つけられる者は…
本気になった妖魔の君クラスだ」
《いちの戦乙女》が、淡々と事実を言うを聞いて和也は驚く。
なんですか? その異様な強さは…………
ボクってば、それでいくと人間として最強じゃないですか?
RPGの設定として、桁違いに強すぎます
中二病をやり過ぎましたか?
でも、ボクはゲームクリエイターでもありますし…………
こんな設定を作っても構わないってコトでしょうか?
まっ…後で…補正が入るでしょうし……
ここは、やりたい放題もイイでしょう…………
たぶん……きっと……誰かが…とめてくれる筈?
ここは、もう一回、確認しておきましょう
「妖魔の君? ぐらいですか?
……ボクを傷つけるのは?」
困ったなという表情で、自分の強さを尋ねる和也に《いちの戦乙女》は、苦笑しながら補足説明をする。
「もっとも…【黒の剣】を使うなら…
君の方が優位に立つけど……」
その説明に、和也は内心で頭を抱える。
今、ボクが握っている【黒の剣】を使うと…………
ボクは…妖魔の君と…とんとん以上になれる?
RPGなのに……敵キャラ…無茶苦茶…弱いです
それとも…妖魔の君は……魔王じゃないから…
ラスボスじゃなくて……中ボスなんでしょうか?
それとも…邪神がラスボスなんでしょうか?
う~ん……神々の黄昏って感じで…ラスボスは神様?
ここは、神話をモチーフにしているんでしょうか?
「それって……チート過ぎです……」
色々と考え過ぎて、つい口からゲーム用語が零れる和也に、《いちの戦乙女》が聞きなれない単語を繰り返して質問する。
「チートって?」
質問されても、元になる常識を知らない《いちの戦乙女》に説明出来ない和也は、軽く頭を振って誤魔化すことにした。
「いえ…なんでもないです…」
そんな和也の苦悩を知らない《いちの戦乙女》は、赤髪の妖魔バルドとその側近を冷たい瞳で見ながら、サラリと非情なことを口にする。
「そうか? …まっ…気に入らないんだったら…
浄化すればイイ…」
「…………」
むやみやたらに、妖魔を消すことは世界のバランスが崩れる原因になるのでは?と思った和也は、無言で、とりあえず赤髪のバルドを見詰めることにした。
和也と《いちの戦乙女》の会話を、しっかりと聞いていたバルドは苦笑する。
そんなバルドに、側近のルイスが話し掛ける。
「バルド様…あのヴァルキューレ…いかが致しますか?」
一見すると言葉は穏やかだが、バルドや周りにいる者達には、はっきりとした副音声が聞こえた。
『バルド様…あのむかつくヴァルキューレ
…殺してもイイですか?』
ラ・アルカディアン皇帝?の和也に手を出す気は無いし、下手に手を出したら敬愛する主バルドが、妖魔の君に処分されるのは確実なので…………。
ルイスには、他に選択肢(攻撃相手)は無かった。
今では、お互いに姿を見せないで暮らしているが、神々の息吹が感じられたラ・アルカディアン帝国が有った頃は、妖魔や悪魔、魔物などとヴァルキューレや精霊達は、けっこう、戦っていた。
退屈とは無縁な時代だったのだ。
その頃は、皇帝も皇族も貴族もドラゴニアンの血を引いていたので、丈夫で《力》もあったので、魔なる者と人間達も戦っていたのだ。
だが、七つの流行り病により帝国が滅びると《力》ある人間は居なくなり………。
戦える人間も、それに力を貸す、精霊やヴァルキューレ達も居なくなり、妖魔達の退屈な時が始まったのだった。
神々も精霊も妖魔たちも、《力》がある為に、地上(現世、人間の世界)に介入することは容易には出来ないのだ。
ありあまる《力》の為に…………。
地上に介入するには、介入先の主である人間の《力》が無い(神々達の《力》加護を受け取る為にある一定以上の《力》を必要とする)と、世界の理に影響が出るので…………。
ただ、ある程度の間引き?の為に、妖魔達の地上への介入は許されていた。
が、それは妖魔達にとって、楽しめる程のコトは無かった。
それ故に、和也の為に地上に降りたヴァルキューレ達は、久しぶりの獲物?好敵手だった。
もちろん、ヴァルキューレ達も、妖魔達の存在にワクワクしていたのは言うまでも無い。
が、戦いを好まない和也のセイでお互いに、戦いたいのを手控えているという状態だったのだ。
閑話休題。
妖魔ルイスの言葉は、風の精霊フウカのお陰で、しっかりと和也達のもとにも届いていた。