118★《合の月》の見解
和也は、聞いたことの無い言葉に、首を傾げてしまう。
「えっ……《合の月》って、なんですか?」
和也の問い掛けに、エリカが答える。
「空には、3個の月があります………
ラ・ルナ…ラ・セレナ…ラ・ディアナ…
と呼ばれています」
エリカの簡単な説明に、和也はひとつ溜め息を吐き出して嫌そうに言う。
「やっぱり…月が…3個あるんですね…
うっわぁー……それだと、干潮と満潮の
落差が激しいですねぇ~………
大潮のときなんて、海が荒れて………
どうしようも無いでしょう………
そこに、もし台風なんてあったら……
津波並みの高潮が発生するでしょうねぇ~
それに……動物達の血液の流れも
激しく変化するでしょうから……
《合の月》の日には…………
犯罪率があがるでしょうねぇ~……
もろ…影響を受けるのは…獣人でしょう…
あとは…妖魔、魔族、悪魔などの魔物達も
蠢きが活発になりそうです………
う~ん、ボクは弱いから《合の月》には
あまり出歩きたく無いですね」
和也の独り言?に、その場に居たモノ達は、全員が無言で顔に?マークを貼り付ける。
「「「「「……? …? …」」」」」
どうして?潮の干満が激しくなるのを
知っているんですか?
誰もソンナコトをますたーに説明していないのに?
《合の月》に大潮の日が当たると………
海が荒れやすいなんて……
誰も言っていないのに……
私達(精霊や人間や獣人)は…《合の月》と
高潮が関係あるなんて知らない………
でも、ますたーの言うコトは正しいと思う
獣人達が、発情する《合の月》って
血液の流れのセイなの?
魔物達も、確かに血が流れているから……
《合の月》の影響をうけるのか……
ますたーって、色々なコトを知らないのに…………
私達の知らないコトを知っている
ますたーって不思議です……でも…大好き…
その中で、立ち直りの早いエンが和也に声をかける。
「ますたー……どうして……俺達の誰もちゃんと
説明していないのに《合の月》に
起こることがわかるんですか?」
エンの質問に、和也は説明するのが、面倒なので適当なコトを言う。
「後で説明します」
「「「「「…………」」」」」
今すぐ知りたいという表情で、自分を見詰める彼らに、和也は苦笑する。
「はぁ~……《合の月》と言う…言葉で…
月が2個以上あることはわかりました……
次に…銀嶺の…1年の間に何度もあったり…
まったくなかったり…と言う説明で……
月が3個以上あると判りました……
それは…《合の月》が…2個の月だったり…
それ以上だったりするということで……
ついでに…月の軌道が楕円を描いている
可能性があるというコトもわかりました……
満潮と干潮は…月の引力で起きる現象の1つなので…
月が1個より2個の方が引力が増すので……
それと…血液は液体なので…引力の影響を受けます
血液の流れが多くなれば…自然と興奮しますので…
運動していないのに…運動している状態になるのは
不自然なので…変な興奮をします…
そこで…ふだんはしない行動をしてしまいます………
この辺は、科学的にほぼ証明されていますので……
こんな…説明ですみませんが…………
これ以上…詳しい説明は…ボクが科学者…う~ん…
研究者などではないので…出来ません…」
和也の説明に、エン達精霊もエリカ達姉弟も、銀嶺も頭の中がくじゃぐしゃになってしまった。
知りたいコトを尋ねても、答えが何時でも理解出来るモノでは無いというコトを実感した彼らだった。
このへんは、科学知識の有無のセイなので、これからも改善される余地は無い。
閑話休題。
和也の知識という藪を突くコトに、疲れを感じた彼らは、質問する難しさに溜め息を吐き出した。
そんな彼らの苦悩を知らない和也は、銀嶺に尋ねる。
「銀嶺、何時、亜空間に入るんですか?」
「そうですね……ますたーが…良いと言うなら……
すぐにでも……」
「エリカ、エルリック……
亜空間に入ってイイですね……」
「「はい」」
「では、銀嶺、亜空間へ」
「はい…ますたー」
銀嶺の言葉とともに、青い空は、銀色の上下の無い世界へと変わった。