113★飛竜の騎乗って?
和也は、騎乗する為に着替えさせた2人を連れて、待機する銀嶺の元に向かった。
歩いて来る和也と姉弟を見て、銀嶺は瞳を細めて考える。
まだ、騎乗する飛竜がいない
騎士見習いですか?
ますたーは、この2人に飛竜を
見つけてあげたいのでしょうか?
後で、聞いてみましょうか…………
とりあえずは、空の散歩を
楽しむのもイイでしょう
それとも、何処か行きたい所が
あるのでしょうか?
和也に付いて歩き、改めて銀嶺を見たエリカ達は、バッキバッキに顔を固まらせて緊張していた。
そう、2人が見たことのあるどの飛竜よりも、銀嶺は大きかったから…………。
大きさと迫力……何よりも…飛竜の最上級種…翼竜に感動した2人だった。
もの心付く頃から憧れて恋焦がれた、ラ・アルカディアン皇帝の騎竜の翼竜。
古代帝国ラ・アルカディンでしか、翼竜は、人間と《契約》を交わしていなかった。
また、2人は、飛竜やグリフォンに乗った経験が無いので、野生の翼竜を目にするコトも無かった。
だから、銀嶺を見ると感動して、声を失ってしまう。
そんな2人を見て、和也は苦笑する。
やれやれ……銀嶺に乗る前に……
放心状態になりましたか…………
困ったモノですねぇ~……これは……
2人の命綱をチエ達にガッツリと
括ってもらいましょう……
危険には……安全対策と訓練のみです
そういえば、ボクは、銀嶺に空歩で
ヒョイと乗りますけど…………
彼らは、魔法で乗る派なんでしょうか?
それとも、台座みたいなモノを使って
乗る派なんでしょうか?
まさかと思いますが、しっぽから
駆け上がる派とか?
飛竜に乗るのも、奥が深いですねぇ~
とりあえず、2人が正気になれるように
……声をかけてみよう……
和也は、色々と考えていたことを綺麗に隠して2人に言う。
「2人とも、飛竜に乗るのは、初めてですか?」
「「はい」」
元気良く、声をハモらせて言う二人に、内心で頭を抱えた和也だった。
ここは、ちょっと突き放した言い方で………
本人達に、騎乗の仕方を選ばせましょうか?
「ボクは、魔法を使って、銀嶺に乗りますけど
君達はどうしますか?」
和也の好きな食べ物は何ですか?という質問と同じような軽さで騎乗の方法を聞かれた2人は心底困ってお互いの顔を見詰めあった。
エドワードが、飛竜に乗る姿を見たコトが2人には無かった。
もちろん、飛竜騎士達が、騎乗する姿も見たことが無かった。
それに、2人の見たコトのある飛竜と銀嶺の大きさは、かなぁ~り違っていたので、見ていても意味が無かったコトは確かだったりする。
この世界で、飛竜に乗る騎士達は、魔法を使うし、身体能力もバケモノ級であった。
ざっくりと言えば、飛竜の首に、丈夫な縄をかけ、それを握って、飛竜の身体を軽く蹴り鞍まで上がるのだった。
その時、体重の軽減魔法を唱えたり、飛翔魔法を唱えたり、自分の身体に肉体強化の魔法をかけたりして、一瞬で駆け上がるのだった。
勿論、腕の力は、かなりあったりする。
飛竜騎士とは、脳筋に近い、フィジカルエリートが騎士なのだから…………。
閑話休題。
前回と違い、今回は、エリカとエルリックは、ちゃんと声を出して会話した。
「エルリック…ひいお祖父様って…どうやって
……飛竜に乗っていたのでしょうか?
私は、見たことが無かったので…………」
「姉上、僕も、騎乗は見たコトがりません」
2人の予想通りの頼りない会話に和也は苦笑する。
「わかりました……乗る姿を見たコトが無いなら……
ボクの騎乗の姿を見て参考にして下さい…
何かの参考になると思います……『空歩』…」
和也は、2人に話しかけたあと、すぐに魔法を使い銀嶺に装備されている鞍に登ってみせた。
空中を優雅に歩き、ストッと鞍に座る和也は、2人から見てとても格好良かった。
キラキラと輝く瞳で自分を見る2人に、和也は苦笑ってしまう。
ダメですね……あの姉弟…なぁ~んにも
……考えていませんね
こんな状態で、魔法をかけるのは…………
ちょっと…いや……かなり…不安です
ここは…以外と物知りな……
エンに聞いてみましょう…
軽く頭を振って思考を切り替えた和也は、火の精霊エンに呼びかける。
「エン…ちょっと……聞きたいコトがあるから…」
和也の問いかけが終わる前に、エンが空中に炎と共に現れた。
「お呼びですか? ……ますたー」
脳筋並みに、がっちりとした筋肉美を誇るエンに和也は話し掛ける。
「エンは、飛竜騎士が、飛竜に乗る姿を
見たコトがありますか?」
「ありますけど?」
知りたいと思っていた飛竜騎士の情報を、サラリというエンに、和也は苦笑するしかなかった。