112★元貴族の姉弟の見解
和也の命令(理解と気遣いによる)?にエリカとエルリックは、ほっとした表情で頷く。
そして、2人は、衣装や剣などを手に天幕に向かった。
和也は、自分が身に纏った、派手な衣装について何も言われなかったので、ほっとしていた。
が、エリカとエルリックは、しっかりとラ・アルカディアンの皇位継承権を持つ皇子としての衣装を、和也が着ていると認識していた。
2人は、天幕に入ると、洋服を着替えながら、興奮して会話していた。
「エルリック……主様の衣装って……」
頬を赤らめてそう言うエリカに、エルリックは同意するように頷いて言う。
「姉上…ひいお祖父様に見せて頂いた…
あの絵のままでしたね……」
凛々しい姿を反芻しながら、エリカは疑問を口にする。
「主様は、時空を超えた皇子様なのでしょうか?
……それとも…この時代に…転生なさって
生まれた皇子様なのでしょうか?」
愛らしく小首を傾げて、ちょっと悩むエリカの疑問に、エルリックは何に疑問を持ったかわからず、同じように首を傾げる。
「どういう意味ですか?」
エリカは、エルリックが気づいていないと思い、端的に、1番疑問に思ったことを言う。
「主様は、貴族としての常識が通じません」
はっきりとそう言うエリカに、エルリックは何が疑問なのかという風に、自分の解釈を口にする。
「ああ……そう…ですね……でも…
一万年以上も昔の常識と、今の常識が…
違っても、当たり前だと思います…
それに…主様は…奴隷と言う存在に詳しくないし
……嫌っているようでしたから………
彼の国では…奴隷は存在しなかったと……」
だから、不思議はないのでは?と思うんですけどと、暗に言うエルリックに、エリカは言葉を引き継いで頷く。
「そうでしたね…彼の国には奴隷は居ない……
それは…精霊達と《契約》する皇帝達が
奴隷の放つ《負の念》や《穢れ》を
嫌ったからだって………」
そこまで言って、エリカはちょっと考え込む。
それでは、奴隷の私達は? 奴隷を嫌う主様
いいえ、だから解放しましょうか? だったのですね
そして、解放が無理なら、飛竜騎士になれば問題ない
和也の意図に気づき、ちょっと言葉が止まったエリカに気づかず、エルリックは溜め息混じりに言う。
「だから、中央の大国ラ・リーグ・ロリアンは
奴隷所有禁止、奴隷売買禁止、奴隷使用禁止
国内入国時に、奴隷を所有してはならないって言う
ガチガチの法が有りますよね」
エリカは自分が思い至った結論は口にせず、エルリックの言葉に重ねる。
「あそこの国は、自分こそが
ラ・アルカディアンの正統なる後継者だって……
いっつも言っているから………」
こんな会話をしながら2人は、軍服に着替えた。
剣帯に剣、手には、黒い手袋、足元は黒いブーツ、背には黒いマントただし裏地は白。
サークレットだけは、2人とも和也の前に有るテーブルに置いて来た。
ラ・アルカディアンの皇帝が飛竜騎士を任命するとき、かならず騎士の額にサークレットを渡してくれる……それと……剣も手渡していたと伝説が…………。
エリカとエルリックは、まだ、飛竜に乗ったことは無い。
また、邂逅し、お互いを認め魂の伴侶とも言うべき《契約》をした…自分の飛竜を持っていない。
それでも、和也に、剣とサークレットとラ・アルカディアンの軍服をもらったので、生涯の忠誠と命を奉げる騎士の誓いを和也にしたかったのだ。
2人にとって、和也に、奉げられるのは、飛竜騎士にとっては公然の秘密と己が身と命と心だけだったから。
和也は、この時から、エリカとエルリックの剣と命を受け取った本当の主となった。
和也自身は、理解していなかったのは確かなコトだった…………。
改めて、剣とサークレットを、渡して欲しいと二人に強請られた和也は、
ノリの良い浅黄を思い出していたので…………つい、頷いてしまった。
厨ニ病とか、リア充という言葉や、どんなコトをするかも、おぼろげながらわかっていた和也は、ついノリで2人の剣を奉げるという儀式を受け入れてしまう。
その後に、和也と一緒に、エリカとエルリックは銀嶺に乗って大空を駆け上がった。