109★幸と不幸を決めるのは?1
2人はエドワードに服装の持つ意味を、教えてもらったときのことを鮮やかに思い出す。
大広間に掲げられていた大きな色鮮やかな絵を指差して、エドワードが言う。
『綺麗な絵だろう』
綺麗な皇子達の姿に、幼いながらも女の子のエリカは、ほぅーっと息を吐き出し、うっとりとした表情で言う。
『これが、ラ・アルカディアンの飛竜騎士なんですね』
姉の反応に対して、幼くても男の子なので、エルリックは綺麗な顔をしていても男に興味は無いので、中心にいる皇帝と思われる男の衣装に疑問を持つ。
『白の軍服?』
それに対して、エドワードは笑って答える。
『ラ・アルカディアンの皇帝は
全身を白と金で飾るんだよ』
エドワードの答えに、エルリックは疑問を深める。
『飛竜騎士は、戦う者なのに?
神官の衣装と同じ色?
神官達でも、仕える神によって
肩布の色を変えるのに?
皇帝達は白だけって? 変なの』
エドワードは、笑顔を深めて答える。
『それはな…皇帝は…全ての精霊を従える者だから
…もし、皇帝が戦うのなら…精霊達の《力》を使い
戦場に居る敵軍を全て一瞬で滅ぼすコトが出来るからなんだよ
…皇帝や皇位継承権を持つ皇子達も……
それに準じる《力》を有しているんだ……
ラ・アルカディアンの飛竜騎士に敵う者は……
人間には居なかった……だから………
戦う相手は居ないという…意味で白を着ていたんだよ…
神官は、従軍(治癒と連絡をする為)しても
戦いに参加しないのと一緒でね…』
さらりとして、ソレでいて、良く考えるとかなり恐ろしいことをエドワードは、2人に教えた。
それに対して、エルリックは、更に疑問を口にする。
『そんなに《力》があったのに、なぜ?
流行り病などで、滅びたんでしょうか?
……全ての病を治す……水の精霊の薬とか
使わなかったんでしょうか?』
賢いエルリックに、エドワードは瞳をひそめて微笑む。
『それは、一年に3回しか使えないからさ………
流行り病の種類は、七つ…ちょっと考えれば………
お前でも…わかるだろう?』
考えるヒントを与えられたエルリックは、はっとした顔をする。
『……あっ……』
そんなエルリックの表情を見て、エドワードは軽く首をうんうんというように上下させて言う。
『だから、病におかされていない健康な皇子を
時空を超えた旅に出したのさ………
それに……従う…飛竜騎士もな………それを…
ラ・アルカディアンの正統な子孫たる我等が…
皇子を探しだし………
新たなラ・アルカデイアン帝国を作るんだ…
わかったな』
『はい』
在りし日の曽祖父エドワードを思い出し、2人は衣装の意味を知る。
私達は、皇子に仕える者になれると思うのだった。
衣装を見て去来する思いと感動に、言葉を無くして立ち尽くす2人に気が付いた和也が声をかける。
「2人とも、ぼんやりしてますね……
とりあえず…衣装合わせをして下さい…
動き易さの有無と躯にあっているか? を……
サイズが合わないとか…動きに支障があるなら
言ってくださいね…………
チカ達になおさせますから………
それと、自分の剣との相性を確認して下さい…
特にエリカ…君は…男と違って力が無いから………
剣の重さ、握りの部分とかもね……
あと…君達は、サークレットを付けなれてるかな?」
矢継ぎ早に和也に聞かれて姉弟は、はたから見てもわかるぐらい、ジタバタしていた。
和也に言われて、エリカは慌てて、衣装を手に取った…………。
なお、和也達が居る場所には大きな姿見が、設置されていた。
そこで、エリカは、胸の前に上着を持って、鏡に映る自分を見てみた。
これなら、着てみて確認してもイイわね
きっと、ぴったりだと思う……
でも…黒地に金の刺繍と鎖って…………
私が着てもイイのかしら
でも、マントの裏地が……白? ……
そういえば、あの絵には、黒の制服を着た人も居た
アレはどういう意味なのかしら…………
でも、そんなコトは、後でもイイわ
エリカは、黒の上着を握ったまま、鏡の前で考える。
その後ろには、同じく黒の上着を持ったエルリックが………。
なお、エルリックは、生まれたときから、弟だったので『待て』が出来るのだ。
幼い男の子にとって、姉は決して逆らってはいけない相手だったから…………。
エルリックは、エリカが鏡の前から居なくなると、同じように鏡に映った自分を確認する。