104★和也の思いと姉弟の思惑
和也が、真っ白な翼竜と《契約》しているコトを、自分の目で見て確認した姉弟だったが…………。
直ぐには、自分達が見ているモノを信じることが出来なかった。
それに、代々の飛竜騎士達が、一般?に対して秘密にしていたコトを、自分達の口から言うことに躊躇がある。
2人は、顔を見合わせて、微妙な溜め息を吐き出す。
そんな姉弟を見て、和也は首を傾げるだけだった。
なにか、重大な秘密があるようですねぇ~
不謹慎なんですが、ワクワクします
なんか、冒険の扉が開くとか…………
新たなミッションの情報が…………
普通のRPGのように……
このゲームが…変化するんでしょうか?
やっと村人AとBとの会話ですからねぇ
ここは、じっくりと待ちましょう
それとも、情報を手に入れる為の
ピースが、まだ足りないのでしょうか?
色々と考えている為に、静かな和也に姉弟は悩んでいた。
奴隷として仕えるには、これ以上の人はいないと思える優しい主様が、知りたいという飛竜騎士の秘密。
でも、自分達は、飛竜騎士ではない。
ただ、その秘密を偶然知ってしまっただけだったから…………。
姉弟は、和也の前で、ワーグリン家に伝わる手話モドキで会話する。
『姉上、主様は、飛竜騎士と思われますが?』
『そうね、でも、飛竜騎士の誓いを知らないと思います』
『知らないという事実が物語るのは……
皇子だからと……』
『もしかしたら、あの伝承の通り
時空を越えし皇子なのかも知れませんが…………』
『飛竜だけでは、足りないと……
姉上は…思うのですか?』
『ええ、伝わっている、サークレットや衣装や
マントや剣は? と思って……』
『でも、姉上、主様は、精霊を従えています』
『そうね……でも…私達は…飛竜騎士では無いのですよ
……飛竜騎士の誓いを…話す資格が無いのです…』
『主様は、奴隷になった一族を買い集めても良いと
言って下さいました………
それを……確約していただくためにも………
話しても良いのでは?』
『…………』
『姉上』
『では、主様に、我がままを言ってみましょう』
『なにをですか?』
『私達を飛竜に乗せてくれたら話すと…………』
『それって……姉上ってば……ずるいのでは?』
『あら、貴方は飛竜に乗って空を飛びたくないの?』
『それは……飛びたいです…だって…だって
僕は…飛竜騎士になりたかったから…………』
切実なエルリックの心の叫びに、エリカはにっこりとする。
『だったら、イイでしょう』
『はい…あの最上級の翼竜に……
僕は乗ってみたい……』
『私は、飛竜に乗りたいわ……それを否定しないわ……
それとね……あの飛竜に乗る為の鞍や装備を
あの飛竜はつけているわ……』
『ということは……主様は…飛竜に乗る為の衣装を
持っていると姉上は思っているのですか?』
『ええ…そう…思っているわ…それと…
もうひとつ意味があるの』
『もうひとつの意味?』
『主様の言い方だと、貴方が飛竜騎士になれれば
私達の冤罪は晴れると思うのよ………
奴隷でいる必要が無くなるのよ……だって…飛竜騎士であり…
彼の古代帝国ラ・アルカデァンの皇子の騎士なんですもの』
『僕は、飛竜に選ばれませんでした……
才能も無いと……』
『そんなもの…皇子の飛竜に何度も乗せてもらえば…
変わる可能性があるわ……』
『僕は、飛竜騎士になれるでしょうか?』
『なれるわ……飛竜騎士になれなくても……
皇子の騎士にはなれるもの』
『では、僕から、主様にお願いします』
『そうね……その方が自然でイイわ……』
2人は、お互いに納得してすっきりしたらしい。
ちなみに、手話の間、和也は黙って、この2人にも自分と同じ恥ずかしい目に…………なんて考えていたりします。